ルーニー、「妥当」な代表落選。ロシア行きも困難に。母国でも“元至宝”再招集の声は聞こえず

3月27日(月)11時28分 フットボールチャンネル

“初体験”となった代表落選。ルーニー不要となったイングランド

 今月16日に発表されたイングランド代表メンバーの中に、主将を務めるウェイン・ルーニーの名前はなかった。コンディション不良を除く代表落選は、代表デビューしてから初めてのことである。だが、イングランド国内ではルーニーの落選は「妥当」とみられている。ルーニーがプレーするポジションにはクラブや代表で結果を残している選手がいるだけに、イングランド国内では“元至宝”の再招集を望む声は聞こえてこない。(取材・文:山中忍【ロンドン】)

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 3月23日付け『ガーディアン』紙にあった「ウェイン・フー?」の見出し。それも、ドイツとの親善試合レポートを補足する囲み記事の小さな見出しだ。「そんな選手いたか?」と言うかのようなこの見出しが、ウェイン・ルーニーに関するイングランド代表での立ち位置と母国民の見方を物語る。

 31歳の代表キャプテンは、前夜の試合で招集メンバー自体から漏れていた。イングランドは数度のチャンスを逃して惜敗(0-1)。かといって、これまでに出場した119試合で53得点を代表にもたらしている、過去10年来の主要得点源の不在を嘆く声はなし。それどころか、国内メディアでは「ルーニー後」の夜明けが前向きに報じられた。

 代表落ちそのものは大々的に伝えられた。3月後半の国際マッチ週間を前に、ガレス・サウスゲート新監督がメンバーを発表した時点では、「『ルーニー不要』と、サウスゲート」との見出しを打った『ミラー』紙をはじめ、指揮官の判断が「容赦なし」と表現された。出場可能なコンディションにもかかわらずの落選は、2003年に始まった代表キャリアで初体験である点も指摘された。

 但し、それらの報道に同情的なトーンは感じられなかった。キャプテン指名を受けた2年半前からはメディア対応にも責任感を増したイングランドの「元至宝」には、母国人記者の中に「味方」も多い。だが、その彼らも援護射撃のしようがないといった状態だろう。

マンUでも「必要不可欠」とされず…“10番”のポジションには3人の若手

 今季のルーニーは、もはやマンチェスター・ユナイテッドでも「必要不可欠」ではない。ベンチスタートが増えたプレミアリーグ戦では、2ゴール5アシストという寂しい数字で3月を迎えていた。今月4日のボーンマス戦(1-1)が2ヶ月半ぶりのリーグ戦先発だった。

 逆に2013年以来の代表復帰が叶ったサンダーランドのジャーメイン・デフォーは、年齢は34歳とルーニーより上だが、15得点の昨季に続いて今季もリーグ戦28試合出場で14得点を挙げていた。昨季から代表に定着しているジェイミー・ヴァーディーも30歳だが、遅咲きのレスターFWは2月後半の監督交代を機に復調の兆しを見せるチームで、タイミング良く自身の調子も上げていた。

 加えて、昨年11月末に暫定から正監督へと昇格したサウスゲートは、ベテランと化したルーニーの基本的な使い道を「ナンバー10」に限定する発言をしている。これ自体は当人も望むところだろうが、トップ下のチーム内競争はCFのそれよりも激しく、かつルーニーには不利だ。

 現在、国民が最も期待を寄せる「代表10番」の第1候補は、20歳の若さにしてトッテナムでレギュラーを張るデレ・アリ。クラブで合わせて今季41ゴール9アシストという23歳の代表CFハリー・ケインとの縦のコンビは、復興への指揮を執るサウスゲートにとっても魅力的だ。

 新監督は、11月の代表戦でアダム・ララーナのプレーメイカー起用も試している。28歳と今が旬のララーナは、リバプールの「新キーマン」と呼ばれるまでに存在感を増してきた。

 更には、23歳のロス・バークリーが今季のエバートンで伸び悩み脱出の兆しを見せてもいる。メディアを含む国民の関心は、代表の2列目にルーニーが入り込む余地ではなく、20代の3名が代表のピッチで共存する可能性に向けられている。

W杯予選では2人のFWがゴール。国内紙はルーニーに厳しい見出し

 先のドイツ戦では、3-4-2-1システムでアリとララーナが1トップのヴァーディーをサポート。就任以来、戦術的な「柔軟性」と「適応力」という言葉を繰り返すサウスゲートが基本化も検討中の同システムは、チャンス創造とボール奪取を精力的に両立する両MFに「理想的」だと当の新監督が語っている。

 実際、各紙平均で10点満点中7点と機能したイングランドでは、ララーナもポストを叩いて自らもゴールに迫るなどして及第点以上の出来を示した。10番を背負ったアリは、1対1の絶好機を決め損ねてもチーム内マン・オブ・ザ・マッチ級の扱い。

 ドイツは10番を付けたルーカス・ポドルスキの「代表送別戦」ムードだったこともあり、『タイムズ』紙のレポートには「次はルーニーが代表に別れを告げる番」との見出しがあった。

 続く26日の18年W杯予選リトアニア戦(2-0)でも、システムこそ従来の4-2-3-1に戻されたが2列目中央はアリ。アシストをこなしたララーナも、スタート位置は左サイドながら攻撃時にはポジション的な自由を与えられていた。結果は、7割以上ボールを支配したイングランドの順当勝ち。足首の怪我でケインが戦線離脱中の最前線では、先発起用されたデフォーと後半に代わったヴァーディーが揃ってネットを揺らした。

本人はロシア行き望むも…国内では再招集を求める声は聞かれず

 折り返し地点を迎えた欧州予選でイングランドは5試合を4勝1引分け。強敵不在のグループFで順調に首位に立っている。それだけに、前線の顔ぶれに故障者続出でもない限り、ルーニーは来年のロシア行きどころか、次なる通算120キャップ目への到達も難しい状況だ。

 無論、本人はロシア大会を代表引退の花道とすることを望んでいる。指揮官も「復帰の可能性は十分に残されている」と言ってはいる。キャプテンでもあったベテランが、メディアで「容赦なく」と形容された代表落ちから復活した前例には、20年前のデイビッド・ベッカムがいる。

 当時のスティーブ・マクラーレン監督は、前年に3バックへのシステム変更が裏目に出たEURO2008予選での敗戦から、翻意を余儀なくされる道を辿り始めたと言える。

 だが、同じキャプテン切りと3バック試用でも、メディアで「強引」と言われた当時の新監督とは違い、現在の新監督による判断は「妥当」と理解されている。そして、サウスゲート体制の正式スタートを目撃したイングランドで、ルーニー再招集を求める声は聞かれない。

(取材・文:山中忍【ロンドン】)

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