八重樫幸雄は秋山翔吾の獲得を進言。スカウト目線で重要なポイントは?

3月27日(金)6時20分 Sportiva

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「オープン球話」連載第16回(第15回はこちら>>)

【スカウト時代に心がけていたこと】

——さて、今回からは八重樫さんのスカウト時代について伺います。八重樫さんがヤクルトで北海道・東北担当のスカウトを務めていたのは、いつからいつまでのことですか?

八重樫 高田繁監督の2年目からだから、2009年にスカウトになって、4年前の2016年シーズンまでスカウト担当だったね。球団からは「編成をやるか、スカウトになるか、どうする?」って聞かれたんだけど、「スカウトがいい」って答えたんだよ。現役時代から早めに神宮球場に行って、東京六大学とか、東都リーグを見るのが好きだったから。


西武からMLBのレッズに移籍した秋山翔吾 photo by Kyodo News

——具体的な選手については、次回以降にあらためて伺います。8年間のスカウト生活において、八重樫さんが選手を見極める際のポイントを教えてください。

八重樫 ポイントはいくつかありますよ。体格面、技術面、性格面、家庭環境……。個別に挙げていくと、やっぱり、体は大きいほうがいい。1年間を通じて戦っていくペナントレースだと、どうしても「体が大きい」「体力がある」「体幹がしっかりしている」「体のバランスがいい」「バネがある」というのは重要なポイントになります。食事や筋トレで多少は大きくすることができるけど、もともと大きいに越したことはないですからね。

——体が小さい選手はその時点で候補から外れてしまうのですか?

八重樫 体が小さい選手の場合はスピードが求められます。「足が速い」とか、「俊敏だ」ということになればドラフト候補にはなりますね。

——体格は一目瞭然ですが、「体幹が強い」「バランスがいい」というのは、どういう点から判断するのですか?

八重樫 本来ならば、キャッチボールを見るだけでも十分判断できるものなんですよ。でも、普段から常に真面目に、真剣にキャッチボールに取り組んでいる選手は少ないから、それだけで判断することは難しい。だから練習で判断するとすれば、シートノックかな? 打球への足の運び、捕ってからのスローイングを見ていると、その選手の体幹の強さや体のバランスがある程度は判断できるんです。

【打者、投手、それぞれのチェックポイントは?】

——技術面でのチェックポイントは?

八重樫 バッターなら、「バットの振り」と「飛ばす力」かな。スイングスピードはやっぱり気になりますね。あとは「手首の強さ、柔らかさ」。これは天性のもので、あとから矯正できるものではありません。手首が柔らかくて強いバッターは、理想的なスイングを身につけやすくなるからね。


当時を振り返る八重樫氏 photo by Hasegawa Shoichi

——技術的な欠点などは、この時点ではある程度は目をつぶって、潜在能力を評価するのですか?

八重樫 それはケースバイケースかな。スイングを見た時に「あっ、これは直せるな」「これは直せないな」「これはいじってはいけないな」というのは、本当に千差万別。最初はスカウトの判断だけど、獲得後には監督、コーチたちともミーティングを重ねて、「このままでいこう」とか「ここは矯正しよう」と決めていくから。

——投手の場合はどのような点がポイントになるのですか?

八重樫 ピッチャーの場合はピッチングフォームだね。バランスがいいに越したことはないけど、意外と大切なのは「最後まで力を緩めずに投げられるかどうか」ということ。たとえば僕が東北担当時代に、花巻東高校に菊池雄星(現マリナーズ)がいた。彼はさすがの逸材だったけど、僕には少々投げ方のバランスが悪く見えました。でも、彼はいつも緩ませることなく、バッターに全力で向かっていく姿勢が見えた。これは意外とできるものではないんですよ。

——以前、この連載において、かつてヤクルトにドラフト1位で入団した高野光投手について、「潜在能力は抜群だったけど、要所要所で力を抜く悪癖があった」と言っていましたね。アマチュア時代は全力で投げなくても抑えられることの弊害なんですよね。

八重樫 そうです。プロのスカウトの目に留まるような選手は、普通のバッターなら全力で投げなくても抑えられる。でも、そんなピッチングをずっと続けていると、いざという時に全力で投げることができなくなる。だけど、雄星にはそんな悪癖はなかったよね。

——じゃあ、菊池雄星投手はプロでの成功、メジャーリーガーになる素養は高校当時からあったんですね。

八重樫 でも、プロで活躍するまでにちょっと時間はかかったよね。今、アメリカで投げている姿を見ても、「もっともっとやれるだろう」という思いはありますよ。高校時代の彼の能力はそれぐらい鮮烈だったから。

【秋山翔吾はどうしても獲得したかった】

——アマチュア選手を見る上で性格面でのポイントはありますか?

八重樫 普段の練習態度に性格は現れるものだと思うけど、そんなに頻繁に練習を見ることもできないから、どうしても試合中の態度が判断材料になります。一番わかりやすいのは、打者ならチャンスの場面、投手ならピンチの場面。こういう時には性格が出やすいと思いますよ。

——具体的にはどんなところを見るのですか?

八重樫 たとえば投手なら、ピンチの場面で気後れしてしまう選手よりは、「よしやるぞ」と相手に向かっていく闘争心や反骨心が見えるタイプはいいよね。闘争心がある投手はピンチになっても、きちんと腕を振って投げることができる。でも、弱気になってしまう投手は腕が縮こまって甘い球を投げてしまうから。

——そういえば、前監督の小川淳司さんがSD(シニアディレクター)時代に、九産大付属九産高校時代の梅野雄吾投手を見たそうです。この時、「ピンチの場面で降板させられて悔しがる姿を見て獲得を決めた」ということを話していました。

八重樫 そうだね。そういう場面にその選手の性格が見えるよね。僕だったら、その場面では高校の監督に「あいつは、ふてくされるタイプなの? それとも、発奮するタイプ?」と聞く。もちろん、ふてくされるタイプはチームのムードを悪くするから論外。発奮するタイプなら、プロ向きの性格だと判断します。

——個人情報保護が徹底している現在、家庭環境についてはどこまでドラフト指名に影響するものですか?

八重樫 確かにプライバシーの問題があるから、家庭環境が指名の判断材料になることは少ないけど、経験上、父親だけ、母親だけの家庭の子はハングリー精神が強いなと思います。ハングリー精神はやっぱり強いほうがいいと思いますよ。これも他球団の選手の話になるけど、僕が見た中では八戸大学時代の秋山翔吾(現レッズ)にはすごく魅力を感じましたね。彼もシングルマザーのご家庭だったよね。

——そうですね。秋山選手はひとり親家庭のご家族を球場に招待していますね。

八重樫 いろいろ聞いたら、彼は長男で、「弟と妹の面倒を見なければいけない」というようなことを言っていたよね。それを聞いて、「今の世代にはないハングリー精神を持っているな」と感心したことを覚えています。秋山は守備範囲も広く打球へのスタートも速かった。盗塁できる技術も持っていた。当時のヤクルトは外野陣が手薄になりつつある頃だったので、「ぜひ獲得を」と推薦したけど、結局は指名に至らなかった。秋山はぜひ指名したかったな。

(第18回につづく)

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