【識者の眼】香川&清武の同時起用か、あるいは倉田か。ハリルJのジレンマを解消する中盤のチョイス

3月28日(火)11時47分 フットボールチャンネル

ハリルジャパンはタイ戦で“ジレンマ”を解消できるか?

 日本代表は28日、ロシアワールドカップ・アジア最終予選でタイ代表とホームで対戦する。タイ代表は自陣に引いて守ることが予想されるが、そのような相手をいかに崩してゴールを奪うかは日本代表の課題となっている。それを解消する鍵は、中盤の組み合わせになりそうだ。インサイドハーフに香川真司と清武弘嗣を同時に起用するのか、あるいはG大阪で印象的なプレーを見せる倉田秋を起用するのか。ハリルホジッチ監督はどんな判断を下すのだろうか。(取材・文:河治良幸)

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 アウェイのUAE戦で2-0と勝利し、予選突破に向けて一歩前進した日本代表。しかし、ハリルホジッチ監督が試合後のロッカールームでいきなり「タイに勝たないと、UAEに勝利した価値が無くなる」と伝えた様に、ホームのタイ戦は最終予選の中でも絶対的に勝ち点3が求められる。

 そこで重要なテーマとなるのは引いた相手をいかに崩してゴールを奪うか。以前の代表でも同じ課題は抱えていたが、世界での戦いを見据えたハリルジャパンのベクトルとはある意味で相反するテーマであるだけに、“ジレンマ”にもなりうる。

 しかし、もともとパスを回しながら崩すスタイルを得意とする選手は多いだけに、監督のコンセプトというより選手の本来の資質が問われる試合になるかもしれない。特にキーマンとなるのは、中盤の攻撃的なポジションで起用される選手たちだ。

 本職のボランチが次々と離脱した事情もあり、クラブでしばしばボランチを担っている酒井高徳を中盤の一角に起用するオプションも浮上するが、UAE戦と同じ中盤を逆三角形にした[4-3-3]が引き続き採用される可能性もある。

 ただし、より攻撃的なチョイスもある。インサイドハーフに香川真司と清武弘嗣が並び立つ、あるいはUAE戦で途中出場した倉田秋を一角に配置する布陣だ。もちろん第一の目的はチームの勝利だが、この試合で輝きを放ち、起点のパスやアシスト、自らのシュートなどで得点に絡めば中盤のアタッカーとして存在価値をアピールできる。

 振り返れば二次予選の初戦はホームでシンガポールに攻めあぐねスコアレスドロー。最終予選ホームのUAE戦も先日のアウェイ戦よりボールを持つ時間が長く、チャンスの数自体は多い中で前半11分の先制点を奪って以降は得点を決め切れず、逆にFKとPKを決められて敗れている。

「ボールを保持したなかで、課題としている戦いがある」(香川)

 昨年9月のアウェイでのタイ戦では相手が攻撃時に中盤からドリブルで突っかけにきてくれたことで、やや間延びしたディフェンスの合間を有効に使えたが、ホームでは同じようにはならないだろう。

「おそらく僕たちがボールを保持したなかで課題としている戦いがある」と語る香川はUAE戦では言わば“中盤のバランサー”としてボールを拾い、前線につなぐ役割をこなしていたが、タイ戦では「自分たちが主導権を握る」時間帯での能動的なアクションが求められる。そのポイントの1つに“距離感”を挙げる。

「(攻撃の人数を)増やすこともそうですし、入れ替わることもそうですし、ポジションチェンジもそうですし、割りと今は固定されたポジションが多いなかで、時間帯や試合内容でリスクを負うという判断も含めてやる時間もあってもいい。あとは距離感もすごく大事なのかなと思います」

 基本的な崩しのパターンとしてはセンターFWの岡崎慎司あるいは小林悠との縦の距離を近くして、ワンツーから追い越してDFの裏に抜ける。または彼らがマークを引き付けて空けたスペースでサイドからのパスを受け、シュートやリターンのラストパスを狙うといったクイックな連携がうまく合えば、タイのディフェンスが人数を揃えていても合間を突くことは可能だ。

 また高い位置から引いた相手を崩すにはサイドを使った攻撃もより有効になる。前回のUAE戦は相手のサイドハーフを警戒し、両サイドバックがDFライン寄りに引き気味だった。ホームのタイ戦はラインの位置が高く、サイドバックも一段高い位置から攻撃に参加する機会は多くなるはず。

 二次予選の中立地イランで行われたアフガニスタン戦では香川とサイドハーフの原口元気、サイドバックの長友佑都のトライアングルが機能し、香川のミドルシュートによる先制ゴールを突破口として最終的に6ゴールを奪った。

「真司くんとは考えていることが似ている」。香川との関係を語った清武

 その香川と似たインスピレーションを持ちながら、柔軟で幅広いプレー選択を得意とする清武がスタメンで起用されれば、タイの出方に応じた臨機応変の戦い方をしやすい。「監督が言う速い攻撃もカウンターは相手が攻めてきた時にはまる」ことを認めつつ、清武は崩しのイメージをこう語る。

「(タイが)がっつり引いて来たらボールの出し入れをどんどんして、速く動かしながら攻める時もあるし、ボールの出し入れでゆっくり攻める時間帯もあるのかなと思います」

「本当に明日は三角形が大事になってくる試合だと思います」と語る清武。香川も「今の競争はすごく激しいと思っている」と認めるように、競争意識と共に勝利を目指す意識を同時に持ちながら切磋琢磨しているが、もしインサイドハーフのポジションで2人が並び立つことになれば、“距離感”を生かした崩しのインスピレーションはかなり高まる。

 清武も日頃から「真司くんとは考えていることが似ている」と語っているが、これまで代表で同時に起用される時はトップ下とサイドハーフという関係が多かった。

「別にそんなにイメージは変わらないですけど、真司君と距離が近くなるだけで。(やりやすい?)そうですね、もちろん」

 UAE戦の前でも「ボールを握れる時はボールを動かしながらやっていければいい」と語っていた清武と香川がインサイドで組めば、細かいコンビネーションも使いやすい。もちろんそこにこだわると攻撃が狭いエリアに限定され、相手も守りやすくなれば中途半端なボールの奪われ方をするリスクも増える。ただ、清武はオフでボールを持っている選手のサポートに回ることもできる選手だ。

香川・清武とは異なるタイプの倉田

 清武の場合はミドルレンジのスルーパスや遠目からのシュートという“飛び道具”もある。当然セットプレーのキッカーとしても有効だ。ただ、ネックとしては2人とも攻撃的なキャラクターとしては献身的な守備を身上とするものの、単騎のボール奪取やカウンターを阻止する“ファイタータイプ”ではないこと。

 基本的にボールを支配する試合展開とはいえ、守備的MFの負担が大きくなる。そうしたリスクを限定しながら攻撃にプラスアルファをもたらせる存在としては倉田秋がより有力だ。

 UAE戦にも途中出場した倉田は指揮官が「ボールリカバリーをしながら、後ろからプレーを加速させる」と評価するように、テクニシャンでありながら高い機動力を兼ね備えることで速攻と遅攻を織り交ぜる“チェンジオブペース“はクラブの大先輩である遠藤保仁ゆずりだ。

「どこでもやれる自信はある」と語る倉田。現在のG大阪ではダイヤモンド型の中盤のトップ下を担うが、守備時はほとんどボランチに近い役割をこなしており、攻守に渡る激しいアップダウンも苦にしない。もちろん従来の[4-2-3-1]を採用した場合はボランチも可能だ。

「戦術的な変更の中で興味深い選手。ボールを持っている時、持っていない時にスプリントできる」という特性は攻撃面においても香川や清武とまた違うもので、インサイドハーフで彼らと併用した場合も役割が被りすぎず、守備のバランスを意識しながら、攻撃で明確なアクセントを出せる。

 途中出場だったUAE戦ではやや周囲とズレが生じるシーンもあったが、短い時間でも独特の緊張感を経験したことで、より持ち味を発揮しやすい準備は整うだろう。

 香川、清武、そして倉田。タイの守備を崩して得点を奪うために、どの形で、誰をどうチョイスしていくかはハリルホジッチ監督の判断次第だが、UAE戦に増してこのポジションの選手がキーマンになるはずで、彼らの出来がゴールの鍵を握る。それは彼らの存在価値を問うことも意味する。

(取材・文:河治良幸)

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