OP戦わずか3勝でも阪神を推せる理由 逆に“猛虎の進撃”を阻む球団はどこか【プロ野球24年展望/セ・リーグ編】
2024年3月29日(金)6時0分 ココカラネクスト
昨シーズンは盤石の戦いを披露してリーグを制した岡田・阪神。その強さは今年も揺るぎない。(C)KentaHARADA/CoCoKARAnext
いよいよ開幕するプロ野球。群雄割拠のセ・リーグにあって、今年も中心となるのは、やはり昨シーズン日本一を達成した阪神になりそうだ。
ドラフト以外での目立った補強は、新外国人投手で、守護神候補のゲラのみ。オープン戦では3勝14敗1分けで最下位に沈むなど、球団史上初の連覇を不安視する声があることも確かだが、それでも戦力的には他球団をリードしている印象が強い。
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とりわけ強力なのが、投手陣だ。先発は昨年ブレイクした村上頌樹を筆頭に右は才木浩人、西勇輝、青柳晃洋、左は伊藤将司、大竹耕太郎と実績のある名前がスラスラと出てくるほど盤石の陣容。リリーフ陣も湯浅京己の状態が悪いのは気がかりだが、岩崎優、岩貞祐太、石井大智、加治屋蓮と左右2枚ずつ勝ちパターンの投手を揃えており、他にも桐敷拓馬、及川雅貴、島本浩也、ビーズリーなどが控えている。
新外国人のゲラに加え、若手の西純矢、岡留英貴、門別啓人、富田蓮、現役ドラフトで加入した漆原大晟など未知数なタレントを計算に入れなくても十分に駒が揃うのは何よりも大きな強みである。
不安要素があるとすれば、野手陣だろうか。リードオフマンの近本光司、中野拓夢、中軸の大山悠輔、佐藤輝明といった中心選手は力があるが、投手陣ほど層の厚さは感じられない。昨年大きな戦力となった木浪聖也や森下翔太が今年も機能するかはかなり未知数であり、若手でブレイクしそうな雰囲気があるのは前川右京だけというのが現状である。中心選手が故障で離脱する、もしくは極度な不振に陥って得点力が大きく下がるようなことになると、苦しいシーズンとなる可能性もありそうだ。
阪神の対抗馬としては巨人を推したい。ここ数年は投手陣に苦しんでいたが、若手の成長や補強もあって戦力は確実に厚くなった印象を受ける。まず先発は戸郷翔征、山崎伊織が安定期に入ったことが大きい。ここに昨シーズン終盤成長を見せた赤星優志も加わり、トレードで加入した高橋礼も順調な調整を続けている。
実績のある菅野智之に大きな期待をかけなくても、ある程度計算できるめどが立ったのではないだろうか。サウスポーがグリフィン、メンデスの外国人頼みというのは、やや不安だが、昨年4勝をマークした横川凱も成長を見せている。リリーフ陣も抑えの大勢が何とか開幕に間に合い、阪神から加入したケラーやルーキーの西舘勇陽なども大きな戦力となりそうだ。
野手陣も主砲の岡本和真が健在で、坂本勇人や丸佳浩など実績のあるベテランが順調に調整を続けている。ドラフトで獲得した佐々木俊輔、泉口友汰の2人も開幕一軍入りを果たし、競争はさらに激しくなった。また打てる捕手の大城卓三がいるというのも、大きな強みである。阿部慎之助新監督の手腕次第では、阪神とマッチレースを展開することも十分期待できるだろう。
浮上を目指すヤクルトと中日で上がり目なのは?
昨シーズンAクラス入りを果たした広島は西川龍馬、DeNAは今永昇太とバウアーが抜けた穴が大きい。ただ、広島に関しては侍ジャパンの強化試合にも召集された田村俊介が大きな成長を見せていることがプラス材料だ。
投手陣も森下暢仁が右肘の故障で出遅れたものの、九里亜蓮、床田寛樹、大瀬良大地と実績のある先発が揃い、リリーフも昨年出遅れた栗林良吏が順調だけに、2年連続のAクラスは十分射程圏内と言えるだろう。
下位からの巻き返しを狙うヤクルトと中日では、やはり中日に上がり目を感じる。中田翔の加入ももちろんあるが、それ以上に大きいのが投手陣の充実ぶりだ。
昨年もリーグ2位の防御率をマークしており、そこに大野雄大、梅津晃大が怪我から復帰し、昨シーズン途中に加入したメヒアも控えている。リリーフも現役ドラフトで加入した梅野雄吾が復調ぶりをアピールしており、抑えもマルティネスも健在だ。得点力不足と二遊間をどう固定するかなどの課題はあり、いきなり優勝争いというのは難しそうだが、Aクラス争いに絡むダークホース的な立ち位置となることは十分に期待できそうだ。
[文:西尾典文]
【著者プロフィール】
1979年生まれ。愛知県出身。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究し、在学中から専門誌に寄稿を開始。修了後も主に高校野球、大学野球、社会人野球を中心に年間400試合以上を現場で取材。2017年からはスカイAのドラフト中継でも解説を務めている。