【識者の眼】浮き彫りになった“ボランチ問題”…酒井高徳起用のリスク。新たな候補は誰に?

3月29日(水)11時50分 フットボールチャンネル

長谷部、今野が欠場…ボランチの重要性が浮き彫りになったタイ戦

 日本代表は28日、ロシアワールドカップのアジア最終予選でタイ代表に4-0の快勝を収めた。3月の2連戦で勝ち点6を得たことは評価されるべきだが、タイ戦はボランチの重要性が浮き彫りになる一戦だった。長谷部誠と今野泰幸が負傷離脱したことで酒井高徳がボランチで起用されたが、本人もクラブでの起用との違いに戸惑いを感じていたと語っている。この先も難しい試合が続く日本代表だが、新たなボランチ候補は誰になるのだろうか?(取材・文:河治良幸)

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 日本はホームでタイに4-0で勝利し、勝ち点を16に伸ばした。その後、サウジアラビアがイラクに1-0で勝って、勝ち点で日本と並んだが、得失点差で日本がついにB組の首位に立った。大一番と位置づけられるUAE戦に勝利した後のタイ戦で苦しみながらも4得点、無失点で勝利を飾ったことは素直に評価するべきだろう。

 しかしながら2-0とリードしてから前半終了までの時間帯にパスミスなどから大きなピンチを迎えたこと、久保勇也と吉田麻也がゴールしながらも終盤にカウンターから押し込まれ、最後は川島永嗣のPKストップに救われるなど、アウェイのUAE戦と打って変わりリスクマネージメントの部分で課題が出た。

 そこにはキャプテンの長谷部誠、さらにはUAE戦で大きな仕事をやってのけた今野泰幸を欠いたボランチが大きく関わっている。

「少しプレッシャーを感じている中で、未熟さが出てしまった選手もいたかもしれない。中盤ではボールコントロールとエリアのコントロールができなかった。攻撃の組み立てをするときは、選手同士の距離が開いていて連動することなく止まっていたため、ボールをつなぐことが困難だった」

 ハリルホジッチ監督がそう振り返るのは特に山口蛍と酒井高徳が組んだボランチに関係するところだろう。指揮官が「あまりにも簡単なパスミス」と表現するプレーも、その時の集中力や技術的な問題だけでなくイメージ共有のギャップが招く場合もある。

所属クラブとは異なる酒井高のボランチの役割…固定的な起用はリスクに

 例えばCBからボランチへのパスミスは彼のイメージとのズレが生じていたことが大きい。今回のタイ戦に向け急きょボランチを任されることになった酒井高は「ハンブルクではボールが上に飛んでいることが多い」と所属クラブでの役割と代表で求められる仕事の違いに戸惑いを見せていたことを認める。

「監督がどういうサッカーしたいかとか、ボランチにどういうこと要求してるかは常に聞いてるから、だいたいは理解しているつもりですという風には言ってたし。今日もできるだけ顔を出そうと思ったんですけど、ミスもあったり少し勇気が足りなかった。ボランチにつけるところだったり、ボランチ同士のパス交換だったりっていうのが少なかった」

 そうした共有の部分や全体としてのバランスワークは経験がものを言う部分も大きいが、“チームの心臓”と言われるボランチの重要性をあらためて認識させる試合でもあった。

 酒井高のボランチ自体はここから先に彼の“デュエル”の強さやボールを持たれる時間の方が長い相手に対して有効なオプションになり得る。今回のように直前にけが人が出た場合など有事に対処するための選択肢としても有効だが、固定的に考えるのはリスクが大きすぎることはタイ戦で証明された。

 やはり基本的には本職のボランチでの組み合わせを想定していきたいが、右膝を手術した長谷部はもちろん、UAE戦の最中に左足の小指を骨折していたことが判明した今野も「生半可な気持ちで来てはいけない。相当な覚悟を持ってこないといけない場所」と語るように、イランで行われる6月のイラク戦には万全の状態で間に合わない可能性も想定しておくべきだ。

経験重視なら細貝も有力候補に

 言い換えればボランチの選手にとっては大きなチャンスでもある。直前のけがで出番の無かった高萩洋次郎はもちろん、これまで招集されながら定着していない大島僚太や永木亮太、今回は右足首の負傷の影響で選考の対象外だったと見られる井手口陽介、ヘーレンフェーンで主にボランチとしてプレーする小林祐希などもあらためて候補になりそうだ。

 ハリルホジッチ監督が求めるボランチ像として、ボールを奪う能力や“デュエル”の部分は1つ基準になるが、基本的にボールをさばくところや攻守のバランス感覚は状況に応じて求められてくる。

 さらに経験という部分を重視するならば、ドイツ2部シュトゥットガルトから柏レイソルに移籍した細貝萌もあらためて有力候補になるかもしれない。もともとハリルホジッチ監督も追跡している選手であり、昨年の段階では「私が呼んだ中盤と比べてパフォーマンスが上とは思わない」と説明していたが、W杯予選の予備登録メンバーにも含まれている。

 スタッフが常にチェックしやすいJリーグで良いパフォーマンスを見せられれば、一気に新ボランチ候補へ浮上してくる可能性は高い。ボールを高い位置で奪い、そこから攻撃を加速させる能力が高い上に、状況に応じたバランスワークのセンスもある。

 常に厳しい環境で揉まれてきた選手でもあり、代表経験も豊富であることから、このタイミングで招集されてもしっかり仕事をやってのける素地はある。もちろん柏に素早く順応し、主力として確かな存在感を示すことが条件になる。

青山、大谷、橋本、喜田…新戦力の台頭に期待

 また6月のシリーズは事前に欧州組の特別キャンプが見込まれ、そこからシリアとの親善試合を経てイランでのイラク戦に入っていくことから、多少は新戦力のテストの余地もある。その意味ではやはり予備登録のメンバーに入っているブルガリアのベロエ・スタラ・ザゴラに所属する加藤恒平や代表経験もあるドイツ2部カールスルーエの山田大記なども候補には入る。

 Jリーグに目を移せば、ブラジルW杯のメンバーで就任当初はしばしば名前もあがった青山敏弘、代表経験こそないものの細貝も加入した柏の中盤を長く支える大谷秀和、FC東京で高萩とボランチのコンビを組む23歳の橋本拳人、横浜F・マリノスの中盤を攻守に支える喜田拓也、新天地のヴィッセル神戸で好調を支える高橋秀人、さらに倉田秋とともに15年の東アジアカップのメンバーだった藤田直之といった選手が選ばれてもおかしくはない。昨年MVPの中村憲剛も現在はクラブで攻撃的なポジションを担うが、豊富な経験値はこのタイミングでこそ生かしやすいかもしれない。

 大一番のUAE戦、さらに確実に勝ち点3が求められたタイ戦を2連勝で乗り越えたことにより、ようやく指揮官が予選の“最終ストレート“と表現するところまで来た。だが、ライバルのサウジアラビアとオーストラリアが直接対決を迎える中、イラク戦で躓けばそこから一気に転落する危険もある。

 長谷部や今野の順調な回復を願いながら、ここで新たな力になり得る選手のアピールにも期待したい。それこそが残りの予選はもちろん、その先の競争を活性化することにもつながるはずだ。

(取材・文:河治良幸)

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