久保裕也、鋼のメンタルが力の源に。“自然体”のストライカーが胸に秘める巨大な野心

3月29日(水)15時19分 フットボールチャンネル

2試合で2ゴール3アシスト。久保が日本に勝ち点6をもたらす

 ロシアW杯アジア最終予選のUAE戦(23日)とタイ戦(28日)。2試合で2ゴール3アシストを記録し日本代表に勝利をもたらしたのは、23歳の久保裕也だった。今年1月にスイスからベルギーへ活躍の場を移した次世代のエースは、欧州で培った強靭な精神力を武器に進化を続けている。(取材・文:舩木渉)

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 久保裕也が日本代表の救世主となるのか。

 28日に行われたロシアW杯アジア最終予選のタイ戦。日本代表の右サイドで躍動したのは、またしても23歳の若武者だった。直前のUAE戦で1ゴール1アシストを記録したのに続き、1ゴール2アシストでサムライブルーを勝利に導いた。

 誰が見ても疑いようのない、勝利の立役者としての輝き。本人が求め続けている「結果」はしっかりとピッチ上に現れた。所属するベルギー1部のヘントでも加入から7試合で5ゴールと絶好調で、その勢いはとどまることを知らない。

 どんな環境でも「結果」を残し続けられる要因は、選手としてのクオリティの高さはもちろんのこと、安定したメンタルにある。常に表情を変えないインタビューでの様子などからもその一端を窺い知ることができ、まるで静寂に包まれた夜の海のような落ち着きを感じさせる。

 ベルギーの地元記者は「ユウヤはシャイなのかもしれないが、メディアの前であまり多くを語らない」と語ったが、ただ内気なのではなく、目の前のことに一喜一憂せず、常に現実を冷静に見つめているのだ。胸の内には巨大な闘志と野心を秘めている。

 タイ戦の1点目、香川真司のゴールをアシストしたクロスの場面。森重真人からのロングボールに抜け出した久保は、ニアサイドに走ってくる岡崎慎司の動きを見逃さず、香川にマイナス気味のパスを通した。

 先制アシストについて試合後に「その時パッと思いついたことをやったかな」と述べたが、しっかりと背番号10の位置を狙っていた。

「自分のプレーがうまくいけば、最後にゴールが必ずついてくる」

 前半19分の2点目の場面では、1点目の時と同じようにニアサイドに飛び込んできた岡崎を信じて、代表通算50得点を達成したストライカーが得意とする形を引き出す速くて低いクロスを選択。どんな局面でも相手の狙いを外しながら、最適なプレーを選択する冷静さは傑出していた。

 57分の自身のゴールの場面では、珍しく大きなガッツポーズで喜びを体いっぱいに表現した。前日に「自分のプレーがうまくいけば、最後にゴールが必ずついてくると思うので、その前段階のところのプレーをしっかりやっていくのが大事かなと思います」と語っていたのが、現実になった瞬間だった。

 昨年11月のサウジアラビア戦で不完全燃焼に終わり、悔しさを胸にベルギーへ移籍。そこから短期間で周囲の信頼を確固たるものにし、コンディションを徐々に上げながら同時に結果も残してきた。本人が「まだコンディションは上がる」というのだから底が知れない。

 ひとつ課題があるとすれば、フィジカル面の強さが足りないことだろうか。タイ戦ではそれほど目立たなかったが、ベルギーリーグの試合では相手とのコンタクトで簡単に凌駕されてしまう場面が散見される。これは本人も自覚しているところで、久保を「チームにとって完璧な選手」と称賛するヘントのハイン・ファンハーゼブルック監督が唯一指摘する課題でもある。

指揮官も納得の出来。本田を押しのけチームの中心に

 ついに日本代表の右サイドを本田圭佑から完全に奪い取る人材が現れたかもしれない。「普段からあまりゴール、ゴールと意識していない」と語るストライカーは、日本をより勝利に近づけるプレーを見せ続けたことで、新たな武器としてヴァイッド・ハリルホジッチ監督のファーストチョイスの地位を固めつつある。

 指揮官の「この2試合で久保は質の高さ、決定力の高さを見せた。彼を起用しようと思って使ったが、彼自身が裏付けた。若くてこのような選手を見つけられたのはひとつの発見であり、さらに進化してほしい」という言葉からも期待の大きさがわかる。

 常に自然体で、冷静にゴールへの最適な道筋を描く力を証明した久保には、同世代の旗頭としての自負もある。所属クラブの事情でリオデジャネイロ五輪出場は叶わなかったものの、将来の日本を引っ張っていかなければならないエース候補の1人だ。

「僕らの世代がもっともっと出てこないといけないと思うし、もっと活躍していかないといけない立場。僕はとにかく上の世代に刺激を与えられるように頑張っていきたいです」

 これだけ結果を残しながら自分が「突き上げる立場」でしかないとも語った久保。常にフットボールと真剣に向き合ってきたからこそ、誰よりも現実を直視し、自分を客観的に見つめることができる。

「もっとピッチで存在感を出せるようになりたいし、中心的な選手になりたい」

 時折胸に秘めた野心を表に出す冷静さと熱さを兼ね備えた日本代表の次世代を担うエースは、貪欲に勝利と結果を追い求めている。

(取材・文:舩木渉)

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