ハリルJ、内容以上のスコアを叩き出した決定力。ボランチ経由の組み立てに乏しく【西部の目】

3月29日(水)12時3分 フットボールチャンネル

慎重になりすぎたプレーの選択。ボランチにパスが入らず

 28日、ロシアワールドカップアジア最終予選のタイ戦に臨んだ日本代表。UAE戦に続き高い決定力でチャンスを確実にものにし、GK川島永嗣のPKストップもあり無失点で乗り切ったことで、4-0とスコア的には完勝ともいえる試合となった。だが数字とは対照的に、内容の部分で課題が露呈した一戦ともなった。(取材・文:西部謙司)

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「今日の戸田にミスはない」

 清水エスパルスのDFだった戸田和幸をボランチへコンバートした日、ズドラヴコ・ゼムノビッチ監督は皆にそう伝えた。慣れないポジションに抜擢するのだから、戸田がミスをしてもそれはすべて監督のミスであるという意味だった。

 酒井高徳はハンブルガーSVでの経験はあるものの、代表でのボランチは初。長谷部誠、今野泰幸、高萩洋次郎が次々に負傷離脱しての白羽の矢。大事なワールドカップ予選、ミスが許されるわけもなく、周囲の保護が受けられる状況でもない。同情の余地は十分ある。

 とはいえ、酒井高と山口蛍のコンビは攻撃をオーガナイズできなかった。4-0の点差ほど内容に差がなかった要因の1つである。

「ポジティブな評価とネガティブな評価が1対10にならないようにお願いしたい。4-0で勝ったのですからね」(ヴァイッド・ハリルホジッチ監督)

 そんなつもりはないけれども、先にネガティブなほうから。ボランチ経由で組み立てができなかったのは、相手が背後にいる状況でのプレーに慣れていないからだろう。プレーの選択が慎重になりすぎていた。恐がっていれば周囲も察知する。自然とボランチへパスが入らなくなった。

 前を向いて視野を確保していれば、2人とも問題なくやれる。後半に本田圭佑が入ってからは、本田のキープをサポートする形で前向きにボールを持てるようになり、プレーに余裕ができていた。相手のプレッシャーも弱くなった時間帯でもあった。

速攻向きの編成ゆえのパスワーク不全

 日本はタイに引かれたときに上手く組み立てができなかった。もともと速攻向きの編成なのだ。久保裕也と原口元気の両ウイングはサイドへ張っていることが多く、中へ入ってインサイドハーフとしてプレーするタイプではない。カウンターで直線的に出て行くときは力があるが、狭いスペースでパスワークの軸にはなりきれていなかった。

 最近はウイングのインサイドハーフ兼任が多くなっている。例えば、ブラジルのネイマールとコウチーニョは、カウンターではウイング、押し込んだときはインサイドハーフとしてプレーする。両サイドでウイング化するのはサイドバックだ。この形ならば、ボランチの組み立てる力が弱くてもさして問題はない。

 日本の場合は4-2-3-1なので、香川真司が組み立てから崩しを担当しているが、1人ですべてはカバーできない。ボランチ経由のビルドアップ不全、遅攻になったときの連係不足、さらにウイングがスペースを埋めていてサイドバックにスペースがない、それらが重なってパスワークが上手くいかなかった。

内容以上の結果を出した決定力

 ここからはポジティブな話。今回の予選は力の差が縮まっている。前回予選のように日本が相手を圧倒して、あとはシュートが入るかどうかという力関係ではない。相手を分析し、その長所を削り取り、わずかでも上回って勝ち点を積み上げていく丁寧な戦い方が求められる。その点では、UAE戦に続いてタイ戦も予定どおりといっていい。

 GK川島永嗣は圧巻。PKストップのほかにも美技を連発した。所属のメツでほとんど試合に出ていないのが信じられない出来である。試合勘を欠くということでは本田を招集したこと自体が驚きだったが、時間限定にせよチームに落ち着きをもたらすプレーを見せ、同様に長友佑都も安定していた。招集した監督の判断には疑問もあるが、呼んだ選手の見極めは確かだった。

 リズムに乗れない時間があったとはいえ、久保の高精度のクロスから香川と岡崎慎司がゴールして2-0。後半に久保が強烈なシュートで3-0として安全圏に。ゲームをコントロールできるようになり、清武弘嗣のピンポイントCKから吉田麻也のヘディングが炸裂して4-0。ここ2戦の吉田の安定感も抜群だった。

 ホームのサウジアラビア戦でベースができた日本だが、その後の2試合でさほどベースアップはできていない。改善点もずいぶんある。対応策には付け焼き刃感もある。それでも日本が劣勢だったわけではなく、勝つべくして勝ったとはいわないまでも、僅差勝負を制するためのプレーをし、内容以上のスコアを叩き出した決定力は追い風である。

(取材・文:西部謙司)

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