阪神・金本知憲監督 「若い選手を怒ったことは一度もない」

3月29日(水)7時0分 NEWSポストセブン

「若い選手の失敗はしょうがない」という金本監督

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 沖縄・宜野座村営球場の阪神春季キャンプ。打ち上げ直前の2月27日、今季、就任2年目を迎えた金本知憲監督(48)は、特打に励む選手たちを静かに見守っていた。金本監督の選手を見つめる厳しい目は朝のウォーミングアップから始まる。投内連係、フリー打撃、走塁練習、シートノックと、常に選手の塊の中に背番号6がおり、熱い視線を送り続ける。選手も気を緩めることができない。


 いつも片手にバットを握って練習を見つめ、球場を後にするまで片時も離さない。本人は「深い意味はない」と語るが、フリー打撃やティー打撃を後方で見守りながら、気が付いたことがあればバットを構えてアドバイスを送り、選手が円陣を組めばその中心でバットのグリップ部分を使って地面に絵を描いて説明していた。バットは選手とコミュニケーションを取る際の、重要なアイテムとなっているようだ。


 歯に衣着せぬ物言いとは裏腹に、その指導は優しい。グラウンドでは選手らの笑い声が聞こえ、選手を怒鳴るような場面はまったく見られなかった。金本監督も「若い選手を怒ったことは一度もない」と語る。


「若い選手の失敗はしょうがないと思っている。もちろん、できる選手が怠慢プレーをしたり、集中力を欠いて何度も同じミスをしたりした場合は怒りますが、僕は萎縮させるより、できるだけ勢いをつけさせたいタイプ。選手には伸び伸びやらせたいので、ミスに対して怒鳴るようなことはしません」


 キャンプ中にはドラフト1位の大山悠輔にも、バットを構えながらアドバイスを送るシーンが見られた。大山のことを聞くと、指揮官の頬が緩んだ。


「アマチュアには左バッターが多く、右バッターで大きいのが打てる選手がいない。それを大山に期待しています。他球団に2位で指名されるぐらいなら1位でいこうというので指名した。まだまだ力はついていませんが、実戦向きの選手だと思う。いいポイントで打っているから、慣れてくればいいものが出てくるはずです。将来的にはクリーンアップを形成できる、ホームランが打てる選手に育てたい」


 そうやって1か月間、選手を見てきた金本監督は、今年の沖縄キャンプを「80点」と採点した。


「若い選手の底上げが少しずつできつつあるかなと思う。野手でいえば高山(俊)、北條(史也)、中谷(将大)が目立ったし、投手でいえば青柳(晃洋)や新人の小野(泰己)が大きい。戦力になってくれそうな感じがします。


 その一方で、いざ実戦をやってみると内野の守備エラーやスローイングミスといったものも少なくない。外野の中継ミスもあるかな。守りというのは100%に近い状態に持っていかないと勝負になりません。あとは開幕までに(実戦を通じて)修正していくしかない」


 中でも5年目の北條は、ベテランの鳥谷敬とショートの定位置を争っている。北條は金本監督の指導の下、精力的に筋力トレーニングに取り組み、昨年より体重を5キロ増やしてパワーアップ。2月25日には1983年のバース以来となる、オープン戦初戦で2本塁打を記録している。一方の鳥谷はサードかセカンドへのコンバートが濃厚とされたが、キャンプ前に、「ショートで勝負したい」と金本監督に直訴。意地を見せた。


「鳥谷の年齢的なもの、北條の成長を見て開幕までに判断しようと思っています。どちらも力のある選手なので、競争といえば競争だが、チーム構成のこともある。将来を考えて北條も育てないといけないですからね」


 こうしたベテランと若手のバランスも課題の一つだ。野手では39歳の福留孝介に、オリックスからFAで獲得した35歳の糸井嘉男。投手陣ではエースの能見篤史が37歳、藤川球児は36歳になった。


「若手も育てないといけないが、戦力的に考えるとどうしてもベテランの力が必要となってくる。ただ言葉は悪いが、こちらはベテランに構っている暇はない。言わなくてもやる選手ばかりだから開幕に間に合ってくれればいい。糸井には打つ方も、走る方も、守る方も全部やってもらいたい。正直な話、彼の打順は迷っています」


 チーム作りはまだまだこれから──金本監督は繰り返す。指導者として目指す監督像があるのかを聞くと、「これまで仕えた監督のいいとこ取りをしたい」と、具体的な名前は出なかった。


「名監督とは勝つ監督のこと。そのためには勝てる戦力が必要。今の阪神は過渡期にあり、入れ替わりの時期です。補強、補強で強くするのが手っ取り早いが、そればかりすると本来の目的を見失うことになり、育成をやめたのかといわれますからね。プロの世界だから育成しながら要所は補強する。そのバランスが重要だと思っています」


 阪神の今年のスローガンは「挑む」。常に相手に立ち向かってチャレンジするという意味が込められている。


「もちろん(昨年のスローガンの)超変革を卒業というつもりはまったくない。ウチはBクラスで、弱いですから」


 鉄人監督の2年目が始まる。


●かねもと・ともあき/1968年生まれ。広島県出身。1992年広島入団。走攻守三拍子揃った選手として、2000年には史上7人目のトリプルスリーを達成。2003年にFAで阪神に移籍。18年ぶりのリーグ優勝に貢献し、2008年には2000本安打を達成した。左膝半月板損傷や右肩棘上筋部分断裂などの大怪我を負いながらも試合出場を続け、連続イニング(1万3686イニング)・連続試合フルイニング出場数(1492試合)の世界記録を達成。その後も連続試合出場記録は1766試合まで続いた。2012年に現役を引退。野球評論家を経て、2016年、阪神タイガースの監督に就任した。


◆撮影/藤岡雅樹  ◆取材・文/鵜飼克郎


※週刊ポスト2017年4月7日号

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