「酷い」イングランド戦にこそあるドイツの収穫。ついに解答を得た“クローゼ後の問題”

3月31日(木)11時24分 フットボールチャンネル

イタリア戦では攻守に機能

 ブラジルW杯を制したのち、転換期を迎えているドイツ代表。フィリップ・ラームやミロスラフ・クローゼといった長くチームを支えてきたベテランが代表引退を表明。特にクローゼの後釜となるセンターFWが大きな課題となっていた。しかし、終盤の連続失点で衝撃的な逆転負けを喫したイングランド戦にはその問題を解決する答えがあった。(文:本田千尋)

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 快勝の後で、トニ・クロースは「酷いイングランド代表との試合の後で、僕らは何が何でも勝つつもりだった」と口にした。

 2016年3月29日にミュンヘンでドイツ代表はイタリア代表とのテストマッチを4-1で勝利する。26日にはベルリンでイングランド代表に2-3で逆転負けを喫していた。気を引き締め直して、6月と間近に迫るEURO本大会に向けた重要な2連戦を、勝利で締めくくった。

 イタリア代表との試合でドイツ代表は、リュディガー、ムスタフィ、フンメルスの3バックに、クロースとエジルの2ボランチで臨む。ウイングバックのルディとヘクトルは積極的に高い位置を取り、前線のミュラー、ゲッツェ、ドラクスラーは連動して効果的な攻撃を見せた。

 83分にバイタルエリアのギャップでエル・シャーラウィに前を向かれて、ゴールを決められたが、試合を通して概ねディフェンスは安定した。2014年のブラジルでのW杯を終えて、代表監督ヨアヒム・レーブが機を見ては取り組んできた3バックは、イタリア代表戦で一定の成果を示したと言えそうだ。

 試合後にレーブは「我々は今日クレバーにプレーした。守備面でも攻撃面でも良かったね」と手応えを感じた。

 所属先のバイエルンでは不遇の日々を過ごしているゲッツェも、45分にミュラーからのボールを頭で合わせてゴールを決める。普段は試合から遠ざかっていることが嘘のように、ゲッツェは前線を広く動いて攻撃を活性化した。またレーブは「エジルとクロースは輝かしい仕事をした」と、機能した2ボランチを手放しで称賛している。

イングランド戦で起用されたマリオ・ゴメス

 しかし、この2連戦での最も大きな収穫は、「酷い」イングランド代表戦にあったのではないだろうか。レーブは、イングランド代表とイタリア代表との2連戦を「EUROに向けた重要な見識を与えてくれる高い競争性のあるゲーム」と見なしていた。

 要するにEUROに向けた試行錯誤をするテストマッチということだが、また「選手達にとっては彼ら自身をもう一度証明する素晴らしいステージだ」とも述べている。そこでイングランド代表戦では、ワントップにマリオ・ゴメスが起用された。レーブはゴメスの起用を明言していた。

 優勝したブラジルW杯の後で、ドイツ代表は、引退したミロスラフ・クローゼの穴をどう埋めるか、という問題に直面してきた。ブラジルW杯以降、2015年11月13日のフランス代表戦まで、ドイツ代表が国際試合14試合で挙げた28ゴールの内、ヘディングによる得点は2に留まっていた。ゴール前の制空権を握られると、行き詰ってしまうこともあった。

 昨年の10月8日に行われた欧州選手権予選のアイルランド代表戦では、35分にゲッツェが負傷で退くと、解決策を見いだせないまま、0-1で敗れてしまう。ミュンヘンのイタリア代表戦でその価値を「もう一度証明」したように、決して長身ではないが、ゲッツェはワントップとして機能する。

失意の後、トルコで輝きを取り戻す

 しかし先のアイルランド代表戦のように、アクシデントでゲッツェが不在となった場合に、ワントップを誰が務めるのか。いわゆる“クローゼ後の問題”とは、そういったことでもあった。

 そこにイングランド代表戦のマリオ・ゴメスは、一筋の光を差し込んだ。直前のシーズンにフィオレンティーナで負った怪我の影響で、ブラジルW杯のメンバーから落選したゴメスは、失意を乗り越えると、今季はレンタル加入したトルコのベシクタシュで輝きを取り戻す。189cmのFWは、今季のリーグ戦26試合で19ゴールを挙げてきた。

 レーブもトルコでゴールを量産するゴメスに目を見張り、昨年11月のフランス戦でも感触が良かったため、今回のイングランド代表戦での先発起用となった。

 そしてゲッツェのように、ゴメスもまた、自身の価値を「もう一度証明」して見せた。57分にケディラからのボールを、ヘディングで得点しただけではなく、ワントップとして精力的に動いた。縦パスを収め、ロングボールのターゲットとなる。カウンターの起点にもなった。

 27分には、オフサイドの判定が下ったが、ケディラのボールに合わせて、DFラインの裏に抜けてゴールを奪う動きも見せた。もちろんゴメスが関わったプレーの全てが、決定機に結びついた訳ではない。

 それでもゴールという目に見える結果を残したこと、リーグ戦を通して現在コンディションを良好な状態に保っていることを考えれば、6月のEURO本大会に向けて、ゴメスはドイツ代表の“クローゼ後の問題”に一定の解答を示したと言えるだろう。

「EUROに向けた重要な見識」となった2連戦

 レーブもイングランド代表戦のゴメスについて「彼の自信とゴールへの嗅覚は戻っている」と述べている。試合の翌日、27日付の『ビルト』日曜版は、次のように記した。

「ゴメスは、まだやれる、ということを示した」

 試合後にケディラが「不必要で愚かな敗戦」と振り返ったように、61分にハリー・ケイン、74分にジェイミー・バーディ、そして90+1分にはエリック・ダイアーと終盤に向けて立て続けにゴールを決められて、ドイツ代表は、イングランド代表に逆転で敗れる。

 負傷離脱中のボアテングが不在のディフェンスは脆さを露呈したが、それもまた「EUROに向けた重要な見識」と言えるのかもしれない。気を引き締め直したドイツ代表は、続くイタリア代表には4-1で勝利した。

 そして今回の2連戦が与えてくれた「EUROに向けた重要な見識」は、何よりイングランド代表戦のマリオ・ゴメスのパフォーマンスと言えるだろう。ヘディングでの得点、ワントップとしての価値の証明…ゴメスは、ブラジルW杯が終わってからの“クローゼ後の問題”に、一定の解答を示した。

 6月のEUROを目前に、欠けた穴を埋める貴重なピースをドイツ代表が手に入れた、イングランド代表、イタリア代表との2連戦だった。

(文:本田千尋)

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