イタリア代表で進む世代交代。セリエAの“外国人過多”脱出が促進した自国選手育成

3月31日(金)7時20分 フットボールチャンネル

多くの若手選手が名を連ねるイタリア代表。これまでの事情とは異なるムード

 現在、イタリアでは“若手起用ブーム”が起きている。オランダとの親善試合でイタリア代表のゴールマウスを守ったのは18歳のジャンルイジ・ドンナルンマ。その他にも20代前半の選手が着々と代表キャリアを積み重ねている。セリエAでも各クラブが育成に注力し、若いイタリア人選手を多く輩出している。なぜイタリアでは代表とクラブで若手選手が多く起用されるようになったのか。そこには2つの理由があった。(文:神尾光臣【ミラノ】)

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 3月28日、ロシアW杯欧州予選で試合のなかったイタリア代表は、オランダ代表とアムステルダムで親善試合を行なった。

 この試合では、ジャンルイジ・ドンナルンマが先発フル出場を果たした。ミランで好セーブを続けもはや貫禄すら放っている18歳は、実はこの日が代表初先発。ウェズレイ・スナイデルの鋭いシュートを2度止め、2-1の勝利に貢献した。A代表の正GKにはあのジャンルイジ・ブッフォンがいる。しかし世代交代に向けての準備は、もはや十分整っていることを代表の舞台でも証明した。

 一方、この試合に出場した若手はドンナルンマだけではなかった。センターバックとして出場したユベントスの22歳ダニエレ・ルガーニは先発2試合目、トリノの24歳DFダビデ・ザッパコスタも4試合目だ。パリ・サンジェルマンで主軸となっているMFマルコ・ヴェッラッティもまだ24歳である。

 そして現在セリエAで得点ランキング首位を行き、イタリア代表でも得点源となっているFWアンドレア・ベロッティは23歳だ。その他、インテルで活躍中の22歳ロベルト・ガリアルディーニをはじめ、若手が多く入っていた。

 W杯やEUROになるとベテランの活躍が目立つイタリア代表だが、親善試合で若手が試されることは今に始まったことではなかった。むしろ各クラブで出場機会の少ない若手イタリア人にプレーする機会を与えるため、戦力の底上げに代表戦を活用せざるを得なくなるという事情もあったのである。

 しかし、今回は少しムードが違う。各選手とも、現在は各チームで主力として活躍している選手ばかりだったのである。今シーズンのセリエAで起こっている、若手イタリア人起用ブームの反映とも言えるものだ。

各クラブでも下部組織出身からが続々ブレイク。育成に注力し自国選手を輩出

「今後のミランは若く、イタリア人で」と方針を掲げたシルビオ・ベルルスコーニ名誉会長の号令のもと、ミランは下部組織からドンナルンマやMFマヌエル・ロカテッリを引き上げ、トップチームの主力に定着させた。

 また今回、ベロッティとザッパコスタを代表へと送り出したトリノも、2年ほど前から補強をイタリア人の若手中心にしている。今回はフル代表ではなくU-21代表へ招集されたが、下部組織からはDFアントニオ・バッレーカという才能も見出した。

 そして何より、今シーズンで旋風を巻き起こしているアタランタの主力となっているのは若手イタリア人だ。前半戦でセリエAデビューを果たすや素晴らしいパフォーマンスを繰り広げ、冬にインテルに移籍したガリアルディーニ、またユベントスが冬に権利を獲得し、18年に完全移籍をさせる予定のDFマッティア・カルダーラ(今回はU-21代表に招集)などはもともと優秀なことで知られるアタランタの下部組織出身だ。

 さらに左利きのウイングバックとしてレギュラーを確保したDFレオナルド・スピナッツォーラや、若き頃のクリスティアン・ビエリを彷彿させると評判の屈強なFWアンドレア・ペターニャも、今回は代表に招集されオランダ戦でデビューを果たした。

 もともと若手イタリア人志向が強かったサッスオーロはそれをさらに強め、今シーズンは天才FWドメニコ・ベラルディの他にMFロレンツォ・ペレグリーニ、FWマッテオ・ポリターノらをブレイクさせている。

 またカリアリも地元出身のDFニコラ・ムッルとMFニコロ・バレッタを主力に定着させており、両者ともにU-21、あるいはU-20代表に選出されている。彼らもまたイタリア人を主力にするチーム編成を進めており、下部組織はサルデーニャ島出身選手のさらなる育成と発掘を目標に活動している。

外国人過多から一変。若手重視となった2つの理由

 それにしても、近年のセリエAではビッグクラブはおろか地方の中小クラブですら外国人比率が高いと問題視されていたのに、それがなぜ急に変わったのだろうか。考えられる理由は2つある。

 一つは、2014年から選手登録の制度が変わったこと。同年にイタリア代表はブラジルW杯でグループリーグ敗退という屈辱を味わったが、「外国人選手が多すぎる。もう少しイタリア人に出場機会を与えなければならない」と伊サッカー連盟(FIGC)のカルロ・タベッキオ会長は警告。そして、UEFAが2011年に掲げた選手登録のルールをセリエAにも適用させた。

 つまり、8人以上が「自国育成選手」でなければならず、4人以上が「クラブ内育成選手」としなければならないというルールの強制化だ。かくして、セリエAの各クラブは重い腰を上げ、外国人選手過多と言われていた傾向に手をつけた。

 もう一つは、国際的な移籍市場の高騰についてセリエA勢がついて行けなくなったという懐事情だ。各クラブはUEFAファイナンシャル・フェアプレーの遵守を突きつけられ、経営体力を超えた額の選手獲得を禁じられる中、たとえ若手であっても外国人選手を獲ろうとすると裕福な海外リーグ勢との競合で負けるようになった。

 そうなれば、競争力のある選手は自前で生み出さなければならなくなる。現在、セリエAに臨むクラブの多くは育成部門への投資比率を高めている。中国の家電販売大手『蘇寧グループ』の資本が入ったインテルも、施設の拡張計画を進めている。トリノもまた、かつてのホームスタジアムだったスタディオ・フィラデルフィアを改築して、下部組織の練習場として使えるかどうかを地方公共団体に申請中だ。

 いずれにせよ、イタリア代表の世代交代もその反映の出来事であることには間違いない。予選に通過した暁には、どんなチームをロシアで披露するのだろうか。

(文:神尾光臣【ミラノ】)

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