18歳で仏A代表デビュー、ムバッペの快進撃。“ポスト・アンリ”ら台頭でベンゼマ復帰遠のくか

3月31日(金)16時19分 フットボールチャンネル

期待の超新星FWキリアン・ムバッペのA代表デビュー

 自国開催のEURO2016で準優勝という結果を残し、充実の戦力がそろっているフランス代表。グリーズマンがチームの中心となり、新たに何人もの若手選手が台頭している。そのなかで最も注目を集めているのが、モナコのFWキリアン・ムバッペ。レアル・マドリーが熱い視線を注いでいるといわれる18歳が、この3月、フランスA代表にデビューした。(取材・文:小川由紀子)

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 3月の国際マッチデーでフランスは、W杯欧州予選のルクセンブルク戦(現地時間25日)とスペインとの親善試合(同28日)を行った。取りこぼしの許されないルクセンブルク戦は敵陣での戦い。

 ジルーをポストに据えた4-2-3-1の布陣を採用したフランスは、グリーズマンをユーティリティ役に、モナコの両SB、シディベとメンディによる積極的なサイド攻撃を織り交ぜたプレーを展開した。

 今季チェルシーでもキープレイヤーの一人として活躍するカンテが落ち着いたボールさばきで巧みに攻守切り替えを担い、28分にはグリーズマンのパスを右サイドで受けたシディベからのクロスをジルーが決めてフランスが先制。

 その後PKを与えてルクセンブルクが同点に追いついたが、わずか4分後にフランスはPKを取り返し、グリーズマンがこれを決めて再びリードを奪うと、後半の77分にも、今度は左SBメンディの長いクロスにジルーが頭で合わせて追加点をあげ、3-1で勝利を手にした。

 これでグループA首位の座をキープしたフランス。デシャン監督も「ひとまずミッションは遂行できた」と安堵の表情を見せた。

 しかし今回のフランス代表で最大の注目ポイントだったのは、メディアから『ポスト・アンリ』の異名を頂戴する話題の新星、キリアン・ムバッペのA代表デビューだ。

 今季モナコでこれまで公式戦19得点を挙げている彼を、デシャン監督は今回初招集。ルクセンブルク戦の78分、パイエに代わってピッチに立った18歳3ヶ月のムバッペは、18歳2ヶ月でデビューした(1955年)マリアン・ウィスニウスキに次いでフランスサッカー史上2番目に若いA代表選手となった。

 ちなみに、このウィスニウスキ選手は主にランスで活躍したウィンガーだ。この選手のことは恥ずかしながらこれまで存じ上げていなかったのだが、なんだかこの苗字に見覚えがあると思ったら、今季、フランスのラグビーリーグTOP14のRCトゥーロンに所属している五郎丸選手がつい先日出場した試合の、相手チームのイケメンFHが、このマリアン氏の親戚だった。

スペイン相手でも物怖じしないメンタリティ

 話は逸れたがムバッペである。デシャン監督はルクセンブルク戦の終盤で彼を投入し、次のスペイン戦では当然ながら彼を先発で使ってきた。

 この試合ではカンテ、ラビオ、そしてやはりA代表戦初出場のMFトリッソ(リヨン所属)が中盤で起用、トップ下はグリーズマン、トップにムバッペとガメイロという布陣だが、攻撃陣は流動的に入れ替わるスタイル。

 ムバッペは、開始早々に左サイドバックのクルザワからパスを受けてシュート(5分)。これは相手GKデ・ヘアに阻まれた。その後はグリーズマンと動きが重なる場面もあったが、相手DFをスピードで置き去りにしてゴールライン際からシュートチャンスを作るマイナスのパスを出したり(30分)、くさびのパスを受けてから前を向いて展開する好プレーを何度か披露した。

 モナコでのようなセンセーショナルなプレーを見ることはなかったが、スペイン代表のDF陣が密集する地帯にも物怖じなく切り込んでいく度胸はさすが。ボールを呼び込む動きも上手いので、試合数を重ねていくことで、攻撃チャンスに絡むプレーがぐっと増えそうな予感を抱かせた。

「フランス代表でプレーすることは夢でもあったから、(初先発は)とても誇りに思ったしうれしかった。いいものは出せたと思う。もともとビビるタイプじゃないから緊張もしなかった」と試合後に語る様子からは貫禄すらうかがえた。

 なんとも肝のすわった18歳。やはり18歳でデビューしたイングランド代表のFWマーカス・ラッシュフォードといい、最近のティーンエイジャーは成熟度が高い。

CLで躍進、フランス代表でも存在感見せるモナコ勢

 この試合では、マンチェスター・ユナイテッドのEL戦(対ロストフ、ラウンド16)で負傷して代表招集を辞退したポール・ポグバに代わって追加招集となったティエムエ・バカヨコも、後半からラビオに代わって出場した。

 身長1m84の彼は、ピッチ上ではひときわ大きく、バスケットボール選手が一人混ざっているかのようだ。ときどき髪を真っ赤に染めたりしてまさにフランスサッカー界のデニス・ロッドマン。

 所属するモナコでは今季、左サイドバックのメンディからバカヨコ、ルマールを経由してムバッペとつなぐ超高速オフェンスラインが脅威となっている。

 スペイン戦ではそんなバカヨコ(22)の暴れっぷりは見られなかったが、ムバッペを筆頭にルマール(21)、そしてこの試合は欠場したメンディ(22)とシディベ(24)らモナコ勢は、来年のワールドカップに向けて成長が期待される若手軍団だ。

 なんといってもデシャン監督はモナコ在住ゆえに、彼らには、指揮官の目に触れる機会が多いというアドバンテージもある。

 そして試合は、フランスがスペインのボールキープやインターセプトに苦しみ、終始リズムをつかめないまま0-2で敗れた。

 ただこのスペイン戦は、結果よりも新人選手を試すことが目的だった。ついこの前までは若手の部類にいたグリーズマンやカンテがいまや中核選手だ。

 グリーズマンも試合後、「クラブレベルでどんどん若い選手が活躍している。それはフランス代表にとってとてもありがたいことだ」と兄貴風に話していたが、その状況に伴って、この試合の前に話題にのぼったのは、ベンゼマの招集についてだった。

 ベンゼマは、「説明もないのに呼ばれないのは納得がいかない。自分自身では、自分より優秀な選手がいるからだ、と思うようにしているが、純粋にスポーツ面だけが考慮されるなら、レアルでの自分の活躍は、代表招集に価すると思う」とコメント。

 デシャン監督は「必要なら呼ぶつもりはある」という意思は示したもののベンゼマについて多くは語っていない。チーム内でも、この話題はある種のタブーになっているらしい。

約8割の国民がベンゼマの再招集を望まず

 デシャン監督はなによりチームの輪を保てることを選考基準とする。調査会社Odoxaのリサーチでは、78%のフランス国民が「イメージが悪い」とベンゼマの招集を望んでいないという結果が出た。

 ルマールやムバッペ、ドルトムント所属の19歳デンベレや今回は呼ばれていないがバイエルン所属のコマン、マンチェスター・Uのマルシャルら若い攻撃手たちが順調に成長してくれるなら、ベンゼマがレ・ブルーのシャツに袖を通す機会は、もう訪れないかもしれない。

 ところで、このスペイン戦では、もうひとつ面白いトピックがあった。この試合では、フランスで初めてビデオによる判定が試験的に導入された。

 後半開始早々に決まったグリーズマンによるフランスの先制点は、一度はゴール認定されたものの、ビデオ判定により無効に。それとは真逆に、線審が旗を上げてオフサイドをコールした77分のスペインのデウロフェウのゴールは、ビデオ判定の結果、有効となる珍事となった。

 そのたびにスタッド・ド・フランスの観衆も、喜んだり嘆いたり。興味深いのは、どちらも、ビデオ判定は審判団とは逆の結果になったということ。この試合は68分にシルバがPKを決めていたスペインが2-0で勝利したが、ビデオ判定のない通常の試合であれば、1-1でドローとなっていたはずだった。

「賛成」「反対」…両論が飛び交った映像判定

 試合後、特にフランス側の報道陣は、選手たちに片っ端からこの件について質問を浴びせた。

「喜んでいたと思ったら無効になって、なんか拍子抜けしてしまった。正しいジャッジの助けになるのは確かだと思う。世界的に要求が高まるのなら導入されるんだろうし、そうでなければこれまでどおりのサッカーをするだけだ……(と言葉を濁す)」(グリーズマン)

「ゴールが決まったと思ったら後で取り消されて、もちろんフラストレーションは感じたけれど、結局は(ビデオが)正しい判定の助けになる」(バカヨコ)

「もちろんがっかりした。せっかくゴールを決めたと思ったらキャンセルされてしまったんだからね。試合が台無しにされたような気もする。誰にでもエラーはあってそれは審判も同じこと。それも含めてフットボールなんだし、これまで通りでいいと思う」(クルザワ)

「ピッチの上にいる者にとっては気持ちを消化するのは難しい。ゴールを祝った直後に取り消されるというのはね……でもワールドカップのような大きな試合では、正しい判定の導入は重要とも思う。ただ今日はそのビデオ判定の結果がなかったとしても、ゲーム内容でスペインが勝っていた」(ジャレ)

「今日はフランスに不利な結果になったけれど、正しい審判をする助けになるという点では、フットボールに寄与するものだと思う」(主将ロリス)

「不公平を解消するという意味で導入には賛成だけれど、問題はタイミング。すぐ直後に取り消されるならすぐ気持ちも切り替えられるけれど、2、3分待たされるのは体も冷えるし精神的にも良くない」(ムバッペ)

 デシャン監督は「ビデオによって、目視では判断しきれなかった真実がわかることは好ましい。今回はたまたま我々に不利な結果になった」と鷹揚さを見せたが「とはいえ、ビデオ、ビデオ、と、そればかりに固執するのもどうかと思うが……」と微妙な心持ちものぞかせた。以降、メディアでも「賛成」「反対」両論が飛び交っている。

 ムバッペのデビューにビデオ判定と、話題もりだくさんだった今回のフランス代表戦だが、不在だった主力メンバーも多く、現在地を知るには今ひとつ、という感じもする。6月に控えた次の予選は、グループ2位のスウェーデンとの重要な直接対決だ。この試合に勝てば、フランスはロシア行きに大きく近づく。

(取材・文:小川由紀子)

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