柴崎岳、“希少性”を武器にテネリフェで輝けるか。監督の頭を悩ますインテンシティ問題

4月1日(土)12時9分 フットボールチャンネル

柴崎がカディス戦に出場できなかったワケ

 新天地テネリフェで待望のデビューを果たした柴崎岳だったが、次の試合では出番を与えられなかった。ゴールが必要な展開でホセ・ルイス・マルティ監督に二の足を踏ませたのはなぜだろうか。今後、出場時間を伸ばせる見込みはあるのだろうか。異国の地で飛躍のきっかけを掴もうともがく日本人司令塔の現在地を分析する。(文:舩木渉)

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 柴崎岳になぜチャンスが与えられないのか。今後は出場機会が増えるのか。

 2017年3月26日に行われたラ・リーガ123(スペイン2部)第31節、テネリフェの柴崎岳はカディスとのアウェイゲームに帯同したものの、出番が回ってくることはなかった。

 試合後にクラブ公式サイトなどに掲載された記者会見でのコメントを読むと、テネリフェのホセ・ルイス・マルティ監督は「柴崎には最後に出場機会を与えることを考えていたが、ゴールが決まったため別の交代をすることに決めた」と語っていた。ところが、アマス・ヌディアイエの決勝点が生まれたのは86分だった。

 つまり元々終盤の数分間しか起用するつもりがなかったということだろう。第30節のレウス・デポルティウ戦では73分からチャンスを与えられ、カディス戦でさらに出場時間が伸びることも期待されただけに、疑問に思ったファンは多かったかもしれない。

 だが、カディス戦に限っては柴崎を起用しづらい理由が揃っていた。まず1つは、前節レウス戦を0-1で落としていたことが挙げられる。第29節終了時点で、4位のテネリフェは3位のカディスと1ポイント差、5位のレアル・オビエドとは勝ち点で並んでいた。

 オビエドが第30節でラージョ・バジェカーノに敗れたことによって救われたが、いつ昇格争いからこぼれ落ちてもおかしくない状況で11位のレウスに敗れたのはあまりに痛かった。もし勝利していれば、3位カディスとの直接対決で順位をひっくり返すことも可能だった。勝ち点差は4ポイントに広がってしまい、大きなチャンスをフイにしてしまった。

 そしてカディス戦の次がオビエド戦と、昇格を目指す上で是が非でも勝たなければならない試合が続いている。新加入でまだチームやリーグに馴染めていない柴崎を起用するにはリスクが大きすぎる状況。レウス戦は同点ゴールが欲しい場面で最後の攻撃的な交代カードとして投入されてミッションを達成できていなかっただけに、カディス戦で出場時間を伸ばすのは難しかった。

喫緊の課題は2部特有の「インテンシティ」

 2つ目の理由はカディス戦の雰囲気にあった。序盤から両チームともヒートアップし、球際の局面では“やられたらやり返す”ファウルの応酬。前半の35分にはテネリフェのベンチに座っていたカルロス・ルイスが警告を受け、試合終了までに両チーム合わせて8枚のイエローカードが提示される激しい試合だった。

 柴崎が初めてベンチ入りした第28節のヘタフェ戦後、テネリフェのマルティ監督は「今日はデビューさせない方がいいと思った。特に試合のインテンシティを見て、適切ではないと考えていた」と起用に至らなかった理由を説明していた。

 この試合も計9枚のイエローカードが飛び交い、後半アディショナルタイムにはヘタフェの控えGKビセンテ・グアイタにレッドカードが提示された。2-2という点の取り合いだったことも含めて、スペイン2部未経験の柴崎が途中出場でリズムをつかむのは難しかったに違いない。

 静かな展開だったレウス戦は同点ゴールが欲しい場面で起用された柴崎。73分の時点でテネリフェはすでに交代枠を2つ使い、疲弊した両サイドに新たな選手を配置していた。ベンチメンバーで残された最後の攻撃的なカードだった日本人司令塔は決定的な仕事を期待されて中盤に投入されたが、その役目を果たせたとは言い難い。

 やはり足元の技術の安定感はチーム内でも群を抜いているが、柴崎は比較的プレッシャーの弱くなった低めの位置でのプレーが多かった。中盤の底から的確にパスを配球したものの、自ら危険な位置に入り込んでいく動きは少なく、相手が怖がるエリアで決定的なパスを通す場面はほとんどなかった。

 1部に比べてフィジカルコンタクトが多く、かつ激しくなるテンポの速い試合でのパフォーマンスに、指揮官は疑問を持っているのかもしれない。ヘタフェ戦での起用見送りや、レウス戦でのプレーを総合すれば、インテンシティの不足は今後に向けた大きな課題と言える。

ドローはリーグ最多。柴崎が勝ちきれないテネリフェの起爆剤に

 カディス戦も前に述べた通り非常にプレー強度が高く、めまぐるしく展開が変わる激しいゲームだった。全体的な運動量が落ちてくる終盤に攻撃のラストピースとして出場させるつもりだったのだろうが、残り5分を切ったところで1点奪えたことにより状況は一変。テネリフェはチームとしての勝利を確実にするため守備的な選手を投入し、必要以上に動かないことで虎の子の1点を守り切る決断をした。極めて自然な選択だ。

 もし柴崎が1月末のテネリフェ加入後にすぐデビューできていたら、ヘタフェ戦やカディス戦にも絡めていたかもしれない。だが、サッカーに“たられば”は禁物。現実を受け入れ、前に進まなければならない。

 柴崎が今後出番を増やすのに必要なことは何か。ひとつはチームが早い時間帯に点を取り、主導権を握って試合を進めていくことだ。そうすれば柴崎をはじめとした新戦力たちにもチャンスを与えられる。他力本願ではあるが、ゴールを決めること自体がテネリフェ最大の課題でもある。

 昇格争いに絡んではいるものの、テネリフェがリーグ戦31試合で奪ったゴールの数はわずか「35」にとどまっている。13引き分けはリーグで最も多く、負けないが勝ちきれない中途半端なチーム。いつそのバランスが崩れてもおかしくない。明確なエースストライカーが不在で、冬に獲得した攻撃的な選手も負傷で起用できないなど順調そうに見える順位とは裏腹に、逆境に直面している。

 そこで柴崎に求められるのは、やはり前線に近いポジションでゴールに絡むプレーだろう。実はテネリフェには柴崎のように攻撃的なタイプの司令塔はいない。これがプレー時間を増やすために必要な2つ目の要素になる。

 カディス戦ではトップ下に本職が一列うしろのアイトール・サンスが起用された。本来ならばそこに柴崎を据え、前線のアマスやサイドのアーロン・ニゲス、オマル・ペルドモといった選手たちの力を引き出す決定的なパスを期待したいところだ。

希少性がチームの選択肢を広げるか。攻撃面の貢献度が終盤戦の鍵

 しかし現実はそう甘くない。体調不良などによる出遅れの影響は想像以上に大きく、コンディションが整ってチーム練習の内容を理解できるようになっても、公式戦のピッチは別物だった。2部特有のテンポや激しさへの適応はまだ道半ば。必然的にプレッシャーが激しくなるゴールに近いポジションで先発起用するにはリスクが高い。

 ただし、中盤と前線をつなぐ存在、柴崎のような攻撃的な司令塔はチーム内において希少であるのは先に述べた通りで、その力が必要とされる時は間違いなくやってくる。中盤を構成するA・サンスやビトーロはバランサータイプで、カディス戦に中盤で先発したアルベルト・ヒメネスはセンターバックとボランチを兼任する守備的な選手だ。

 このようにパスの技術が高くチャンスメイク能力に長けた司令塔タイプはいない。試合がこう着した状態、あるいはビハインドの状態で流れを変えられる攻撃的なカードは少ないため、柴崎はテネリフェが終盤戦の重要な場面で勝ちきるためのキーマンになりうる。

 ヘタフェ戦前のように負傷者が続出するようなアクシデントがない限り、しばらくは途中出場で徐々に体や頭を慣らしていくことになるのではないだろうか。まずは4月2日の次節オビエド戦、昇格に向けて負けられない一戦で訪れるはずのチャンスを確実にものにできれば、また状況は大きく変わってくるはず。

 復帰まではクラブからの全面的なサポートを享受してきたが、公式戦のピッチに立った以上は他の選手たちと同じラインに立って競争しなければならない。幸いスペイン2部のレギュラーシーズンは6月まで続き、柴崎には11試合が残されている。とはいえサッカーの世界が変化するスピードは想像以上に速く、急流の中で生き残るには目の前のチャンスを必死につかみにいかなければならない。それがたとえ一瞬だとしても。

(文:舩木渉)

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