大津祐樹、横浜FMでの再出発。トップ下で輝いた才能…変貌したプレースタイル

4月1日(日)10時47分 フットボールチャンネル

デビュー戦はトップ下。長期離脱から復活

 今季開幕前、柏レイソルからの完全移籍で横浜F・マリノスに加入した大津祐樹。キャンプで負傷してから約2ヶ月経ち、ついに公式戦デビューを飾った。31日のJ1第5節・清水エスパルス戦でスタメン出場した背番号9は大いなる可能性を感じさせるパフォーマンスを披露した。(取材・文:舩木渉)

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 負傷で出遅れていた背番号9がピッチに帰ってきた。31日に行われた明治安田生命J1リーグ第5節、アウェイに乗り込んだ横浜F・マリノスのスターティングメンバーにFW大津祐樹が名を連ねた。

 試合後、新天地でのデビュー戦を終えた大津は充実感を漂わせながら感謝を述べた。

「(ファン・サポーターから)すごく暖かい声援を感じられました。選手としてやりやすい環境を作ってくれた。アウェイにもかかわらずたくさんの人が来てくれていたし、そういう面ですごくいいクラブだなと改めて実感しました」

 今季、柏レイソルから完全移籍で加入し、背番号9を託された。新体制発表会見では「僕の中で今年、大きなチャレンジをしようという年に決めていた」と述べ、相当な決意のもとに決断された移籍だった。チームの始動日から精力的にトレーニングをこなし、フィジカルテストでも能力の高さを見せていた矢先のアクシデントだった。

 1月23日、石垣島で行われていた1次キャンプの3日の練習中に負傷。検査の結果、左ひざ内側側副じん帯損傷で全治4〜6週間と診断された。その後はチームから離れて孤独なリハビリ生活に。アンジェ・ポステコグルー監督が掲げるアタッキングフットボールの成熟度が高まっていく様をピッチの外から眺めるしかなかった。

 別メニューで調整していたある日の練習後、大津は「焦りはないですよ」と話していた。それでも全体練習を終えたMF遠藤渓太とピッチ脇で話し込み、ウィンガーとしての動き方や求められるプレーを確認する日もあった。

 これまでも度々負傷で離脱した経験があるため、慎重にリハビリを進めてきた大津。ボールを使った練習を再開したのが受傷から約1ヶ月経った2月下旬で、全体練習に復帰したのは3月中旬。すべての練習を他の選手たちと同じように消化できるようになって、今月18日の浦和レッズ戦後は紅白戦で主力組に入るようになった。

 ポステコグルー監督が「起用するなら代表ウィークの後になると思う」と予告していたように、マリノスでのデビュー戦は31日の清水エスパルス戦となった。負傷してから約9週間が経過していた。

 起用されたのはトップ下。全体練習合流直後からウィングではなく中央のポジションに入って戦術練習をこなす姿も見られていたので「もしかしたら…」と感じていたところ、その予想がこの2週間ほどで確信に変わった。

華麗なプレーで見せ場も。意識したのは「フリーラン」

 清水戦は72分までのプレーだった。指揮官も「いきなりこのテンポでやるのが難しいのはわかっていた」と試合後の記者会見で述べた通り、長期離脱からの復帰戦で即フル出場は困難だろう。だが、大津のプレーは負傷明けとは思えないものだった。

 72分間のプレーで走行距離は約9.5kmを記録した。これを90分間に換算すると約11.9kmとなる。他の選手と比較しても、中盤でフル出場した天野純や扇原貴宏、右サイドバックの松原健に匹敵する数字である。同じくフル出場したFWウーゴ・ヴィエイラの走行距離は、大津が72分間で叩き出した数値よりも短かかった。

 見せ場も作った。交代直前の71分、天野純が蹴った左からのコーナーキックを、扇原が頭で落とす。大津はそのボールを胸でコントロールし、見事なバイシクルシュートを放った。惜しくもゴール左に外れたが、並外れた身体能力とセンスの高さが凝縮されたプレーだった。

「(扇原からの)ボールはダイレクトでヘディングを打てないなと思ったので、胸で上にあげてバイシクルを狙いました。入れば良かったですけどね(笑)。あとちょっとだったので、タイミングと感触は良かったんですけど。あそこは迷わずいけたから、自分の中では良かったと思っています。ゴール取れていれば…という感じですね」

 ヘディングの折り返しが来た瞬間的にバイシクルシュートのイメージを描けるのはさすが大津といったところか。そしてマリノスの背番号9が最も意識していたプレーが「フリーラン」だった。

「相手を揺さぶる。自分にパスが出なくても、そこにスペースができて、そのスペースを他の選手が使える。トップ下の選手はそういうことをイメージしながらフリーランを増やしていったらもっとこのチームは回るんじゃないかなと思っていたので、それを意識して今日はプレーしていました」

 大津なりに捉えた問題意識をピッチで表現した。実際に清水戦では、常に1トップのウーゴ・ヴィエイラの背後をキープしつつ、機を見てサイドへ抜けるランニングでウィンガーやセントラルMF、サイドバックののポジションチェンジを促した。

 ドリブラーのイメージが強かった大津のスタイルが徐々に変わっていることは柏時代から感じていたが、自らリスク覚悟のドリブルを仕掛ける姿はほとんど見られず。軽快な動きと少ないボールタッチで味方と絡みながらゴール前に入っていくプレーは、まさにポステコグルー監督の率いるマリノスにマッチした動きだったのではないだろうか。

覚悟の移籍。洗練されたスタイルで中盤の新たな選択肢に

 今季のマリノスは様々な中盤3人の組み合わせを試してきた。J1開幕戦のセレッソ大阪戦と第2節の柏戦は、アンカーに喜田拓也、インサイドハーフに天野と中町公祐を据える逆三角形の形。喜田が負傷で離脱した第3節のサガン鳥栖戦は扇原をアンカーに配置してインサイドハーフに天野と中町を起用した。

 さらにリーグ戦初勝利を挙げた第4節の浦和レッズ戦は3人を正三角形に配置し、ダブルボランチに扇原とダビド・バブンスキー、トップ下に天野でスタート。前半途中で天野とバブンスキーの位置を入れ替えるなど試行錯誤の末に勝利を手にした。

 交代やYBCルヴァンカップなども含めれば、さらに多くの組み合わせが起用されてきた。そして、それぞれにメリットとデメリットがある。

 例えばアンカーを置く形であれば攻撃のスイッチがわかりやすくなる反面、そこを狙われる可能性が高くなり、脇のスペースを突かれるリスクも高い。ダブルボランチは最終ラインからボールを引き出しやすくなり、3人のポジションチェンジがスムーズでパス交換も多くなるが、ゴール前に侵入する選手の数が減ってしまうことがある。

 とはいえそれぞれのメリット・デメリットを対戦相手によって使い分けられるようになれば、チームにとって大きな武器となる。大津は中盤の選択肢を広げる貴重なオプションになりうる可能性を十二分に示した。

 オリヴィエ・ブマルの加入によって外国人選手のうち1人は必ずベンチ外になる状況、そして週2試合ペースの15連戦が始まることも考えれば大津の存在価値は大きい。浦和戦と清水戦のわかりやすい違いを挙げれば、積極的にボールに触り一撃必殺のスルーパスやドリブルで違いを生むバブンスキーと、フリーランや細かい連係で味方の力を引き出す大津という比べ方もできる。

「僕はフリーランを増やしていけたら。トップ下の選手は動き出しの部分でスペースを作ったり、自分が受けたり、その区別をしてプレーした方がいい。非常にパスを回すセンスのある選手たちが多いので、そういった意味ではもっともっと(フリーランを増やしたらいい)。今日やった中でもすごくいい部分や使える部分が、プレー中に感じられましたし、もっともっと良くなるんじゃないかなと思います」

 大津はピッチの中で確実に手応えをつかんでいた。「中途半端な覚悟で移籍はしてきていない。もちろんこのチームを背負っていけるプレーヤーになるつもりでいるので、その覚悟はできています」という新体制発表会見での言葉に偽りはない。

「いま一番体が動く歳でもあるので、もっともっと自分の可能性を広げていきたい。若い選手だろうが、ベテランの選手だろうが、誰もがスタートラインは一緒だと思う。その中でも自分はもっともっとチームを引っ張っていける位置にいかなきゃいけない」

 若い頃のがむしゃらなスタイルは経験を積んだことで洗練され、よりチームのために力を発揮できるようになった。新天地で自らが輝けるプレーを、試行錯誤しながら見つけ出しつつある。負傷から復帰して横浜FMでのスタートを切った大津祐樹は止まらない。

(取材・文:舩木渉)

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