光る久保建英。バルサ復帰ではなくFC東京残留ならJ1制覇も現実味

4月1日(月)6時15分 Sportiva

 正真正銘のラストプレーだった。あと1秒、耐えることができていれば、勝利はFC東京のものだった。

 しかし、これが鬼門というものだろうか。右サイドからクロスを入れられると、エリア内に侵入してきた森脇良太に豪快に合わせられ、土壇場で同点に追いつかれてしまう。FC東京は浦和レッズの本拠地・埼玉スタジアムで、またしても勝利を手にすることができなかった。


17歳の久保建英が攻撃面のカギを握っているのは間違いない

 この地での直近の勝利は、2003年までさかのぼる。もはや相性のひと言では済まされない結末だった。もっとも、試合後のFC東京の選手たちは、悲嘆に暮れていたわけではない。むしろ、やるべきことはやったという充実感に満ちていた。

 前節に名古屋グランパスとの上位決戦を制し、首位に躍り出たFC東京は、代表ウイークを挟んで行なわれた2週間ぶりの一戦で、その勢いを保つことができるのか。この鬼門を突破すれば、今季J1の主役となるかもしれない。そんな予感を胸に、この試合の取材に赴いた。

 しかし、立ち上がりからFC東京は浦和にボールを支配され、守勢を強いられてしまう。3バックから4−4−2へシステムを変えてきた浦和に対し、面食らった部分もあっただろう。プレスがうまくハマらず、中盤にボールを運ばれると、サイドを起点とする浦和の攻撃に対して後手を踏んだ。

 とはいえ、FC東京側に動揺はなかった。強固な守備ブロックを保ち、中央への侵入は許さない。「相手にはボールを持たれていたけど、持たせるくらいの感覚で、そこは割り切ってやっていた」と永井謙佑が言うように、ボール支配は譲っても、最後の場面はやらせない。

 この日だけではなく、今季のFC東京は開幕から堅守速攻を徹底し、スタートダッシュに成功している。つまりこれが、今季のFC東京のやり方である。

「守備ではしっかりいくところと、ブロックを作るところをはっきりして、全体のラインもコンパクトさを保ったまま、コントロールできている」

 中盤の要である髙萩洋次郎は、守備組織に自信を見せる。一方で攻撃に関しては、次のように説明する。

「早い攻撃を第一優先に考えています。FWにそういう特徴がある選手がいるので、彼らのよさを生かすやり方ですね」

 実際に前節の名古屋戦でも、背後を狙った縦パス1本で永井を走らせ、決勝点を奪っている。この浦和戦でも、永井とディエゴ・オリヴェイラの2トップのスピードを生かそうとする意図は見て取れた。

 もっともこの日は、攻撃のバリエーション不足を露呈していたのも事実だ。相手の厳しい対応を受け、ディエゴ・オリヴェイラが起点となれず、永井が走り込むスペースもなかなか見出せなかった。せっかく奪ったボールを、うまく前に運ぶことができなかったのだ。

 ここで浮き彫りとなったのは、1対1の局面での打開力不足である。スペースがないなかでボールを運ぶには、局面の勝負に勝つほかない。しかし、仕掛けようにも目の前の敵をかわせず、再び相手にボールを渡してしまう。ひとりかわせばギャップを生み出すことができるが、そうした場面がほとんどないため、相手の守備組織のバランスを崩すことができなかったのだ。

 これはFC東京だけでなく、浦和側にも当てはまることで、リスクを負った仕掛けや縦パスといったプレーがなかったため、お互いに決定機が生まれないもどかしい展開に陥っていた。

 そんな状況を打破したのが、17歳の久保建英だった。

 今季開幕からハイパフォーマンスを続けていた久保は、この日はU−22代表帰りで、疲労を考慮されてベンチスタートとなっていた。しかし、永井に代わって62分からピッチに立つと、卓越したボールコントロールとキープ力を生かし、カウンター1本だったFC東京の攻撃に時間と余裕を生み出した。

 ボールを持てば常に前を向き、追いすがる相手の前に巧みに身体を入れ、ボール奪取の機会を与えない。重心の低いドリブルでするすると持ち上がり、前線に縦パスを供給するなど、個の力で局面を打開する久保のプレーがFC東京に勢いをもたらした。

 そして75分、左サイドを駆け上がった東慶悟に絶妙なスルーパスを通すと、東のクロスをディエゴ・オリヴェイラが合わせて先制に成功。前線でリズムと違いを生み出した久保のプレーがきっかけで生まれた、見事な一撃だった。

 しかしその後、逃げ切り体制に入ったFC東京を待ち受けていたのは、アディショナルタイムの悲劇だった。長谷川健太監督は「クローザーの不在」を原因のひとつに挙げたように、逃げ切るための方法論を備えていなかったことが、鬼門突破につながらなかった原因だろう。

 それでも、土壇場で”勝ち点2”を失ったとはいえ、無敗をキープ。第5節を終えて名古屋に次ぐ2位と、上位を維持している。

 昨季もFC東京はスタートダッシュに成功し、夏場までは上位を争った。ところが、後半戦は負けが込み、最終的に6位でシーズンを終えている。

 その反省を踏まえ、今季はどのように戦っていくべきか。髙萩はひとつの青写真を描いている。

「連戦になったり、夏場になってくると90分を通してハードワークができなくなってくる。その時に、まずはブロックを作るとか、一回自分たちの形にするところが重要。あとは、ボールを奪ったあと、去年は自分たちでボールを動かす時間が少なかったけど、今年はボールを持って動かす時間を増やすことをやっていきたいと思います」

 攻撃面でカギを握るのは、やはり久保になるだろう。ボールを持てる選手の存在は、やはり貴重である。この日も、ボールを失ったのはわずかに1回のみ。そのドリブルの能力の高さは、J1でも屈指であることは間違いない。すでに久保は、そのレベルにまで達しているのだ。

 預けどころがあれば、後方から攻め上がる時間が生まれ、攻撃の厚みが増す。バルサ復帰も噂されるなか、この17歳がチームにとどまり、シーズンを通してフル稼働できれば、FC東京の悲願のJ1制覇も決して夢物語ではないだろう。

Sportiva

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