香川が示した確かな戦術眼。ダービー引き分けに落胆も…シャルケ守備陣を破壊した必殺パス

4月2日(日)13時30分 フットボールチャンネル

「勝てた試合。すごく悔しい」

 現地時間1日、ボルシア・ドルトムントはシャルケと対戦して1-1で引き分けた。香川真司は先制ゴールをアシストしたものの、結果に悔しさをにじませる。だが、伝統の“レヴィア・ダービー”で見せた確かな戦術眼とパス能力は今後の戦いに向けて明るい材料となった。(取材・文:本田千尋【ゲルゼンキルヘン】)

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 悔しさが、滲んだ。

 2017年4月1日に行われたブンデスリーガ第26節、ゲルゼンキルヒェンでの対シャルケ戦を終えた後のことだ。87分間に渡って奮戦したボルシア・ドルトムントの香川真司。満足はなかった。

「勝てた試合なのかなと思っていますし、そういう気持ちがチームにもあるのかなと。すごく悔しいです」

 通算171度目のレヴィア・ダービー。香川は右のインサイドハーフで先発出場する。ドルトムントの基本布陣は[4-1-2-3]。攻撃時には左SBのマルセル・シュメルツァーが高い位置を取り、後方は3バックを形成する。

 ユリアン・ヴァイグルとゴンサロ・カストロがダブルボランチを組んで、その前にはウスマヌ・デンベレと香川の2シャドー。右ウイングのフェリックス・パスラックは高い位置を保ったまま。そしてピエール=エメリク・オーバメヤンの1トップだ。守備時にはシュメルツァーとパスラックが下がって5バック気味になる。

「今日は3トップなので。3バックと5バック気味ということで、ダブルボランチで、決して前から行くサッカーではなかった」

 そう香川が説明するように、ドルトムントがダービーでシャルケに挑んだサッカーは、どちらかと言えばポゼッション型。前からプレスを仕掛け、高い位置でボールを奪って速攻を狙う、カウンター型ではなかった。

 決して勢いに身を委ねない慎重な姿勢は、アウェイだったこともあるが、何より代表ウィーク明けの初戦だったことによる。各国代表にされなかった者とされた者。代表チームに参加した選手たちの間でも、移動距離とコンディションにバラツキが出てくる。

「チームとしてやっぱり、代表の後はちょっと連動性に欠けるというか、あまりアグレッシブに行きすぎずに様子を伺う感じはありましたけどね」

シャルケを破壊した香川のパス。効率重視のプレーで違いに

 前半はドルトムントがじっくりボールを回していく中で、香川もシンプルなプレーに徹した。シャルケの守備陣が4バック+2ボランチで構える中を、着実に動いていく。ボールが入ればカストロにダイレクトで落とし、また無理をせずサイドに叩くなどして、リズムを生み出そうとした。

「ボールをもらえない時間もありましたけど、しっかりボールが入った時に、効果的なプレーをしていこうと。動く量はあんまり…控えめといったら変ですけど。シンプルにポジションを取りながら」

 シャルケとがっぷり四つに組んだ前半戦。代表ウィーク明けの難しさがありながら、チーム全体としての守備を維持しつつ、敵の攻撃を最小限で食い止めるドルトムント。

 そして思いの外、バイタルエリアにスペースがあった。

「あそこのスペースは結構空いていたので、DFラインから引き出せたらチャンスになるなと思っていました。まあ、前半はなかなか少なかったですけど、効果的なプレーはできていたので。後半はより空いてくるんじゃないかなと思っていました」

 そう予想したとおりだった。後半開始早々、香川が自らチャンスを演出する。

 46分。ヴァイグルがレオン・ゴレツカからボールを奪うと、こぼれ球を拾った香川が中央をドリブルで運び、右足のアウトサイドでスルーパス。出足の鋭いボールに、オーバメヤンは届かなかったが、この香川のパスでシャルケの守備にヒビが入った。

 香川の語る代表ウィーク明けの難しさは、シャルケにとっても同じことが言える。ホームで迎えるシーズン中の“擬似開幕戦”。多くの選手を各国代表に送り出した“ケーニヒスブラオ”(「王者の青」という意味、シャルケの愛称)のコンディションも、万全とは言い難かった。そんな両チームの状況が相まって、50分過ぎには、早くもゲーム全体が間延びしてくる。

 そして53分、デンベレからのスルーパス。香川は右足で器用にトラップしながら、ペナルティエリアに入ると、アウトサイドで右を並走するオーバメヤンにパス。あとは押し込むだけでよかった。

ダービーで証明した実力。ドローにも手応えが

 ダービーでのアシスト、香川の語る手応え。

「ハーフタイムの後っていうのは特に、立ち上がりっていうのは、色々なものが起こり得るので、その中で先制点が取れたことはすごくよかったです」

 さらに58分。ヴァイグルからパスを受けた香川は、反転すると、左前方を走るオーバメヤンにスルーパス。46分の場面と似たような形だ。オーバメヤンの折り返しは、DFにクリアされてデンベレには届かなかったが、香川の振るう攻撃のタクトは、シャルケの守備に横たわる亀裂を、確実に大きなものにしていった。

 しかし決めるべき時に決めきらないと、しっぺ返しを食らう。トーマス・トゥヘル監督の言う「究極的にエモーショナルでインテンシティの高いゲーム」=レヴィア・ダービーのような試合では、なおのことだった。

 77分。エリア内でゴレツカが落としたボールを、ティロ・ケーラーが突き刺す。痛恨の失点だった。

 ゴンサロ・カストロは悔恨する。

「僕らは追加点を奪うチャンスを逃した。そしてゲームを殺してしまった」

 香川は落胆する。

「まぁ、まぁ…勝つべき内容だったので。相手の怖さ…セットプレーとその後の流れでやられましたけど、それしかなかったので。そういうところはすごく残念ですね。まあ、そりゃ悔しいですし。ダービーですから。勝ちたかったですね」

 痛み分けに終わった通算171度目のレヴィア・ダービー。シャルケにもドルトムントにも“英雄”は生まれなかった。しかしそんな中、万全とは言い難かったコンディションでも、香川は確かな戦術眼でチームの攻撃を牽引した。

 何よりファンのために戦った香川。

「ダービーは特にファンにとって大事。クラブにとってもそうですけど、それをピッチに入れば感じますし、雰囲気もいつもと違う中でやれるので、だからこそ勝ちたかったなと思います」

 その想いは、敵地フェルティンス・アレーナに駆け付けた黄色い一角に、伝わったはずだ。

(取材・文:本田千尋【ゲルゼンキルヘン】)

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