角居勝彦調教師 馬を仕上げる際に大事な厩舎のチームワーク

4月2日(日)7時0分 NEWSポストセブン

角居調教師が厩舎のチームワークについて語る

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 競走馬を究極まで仕上げるときに大事なのは、厩舎のチームワークだ。数々の名馬を世に送り出した調教師・角居勝彦氏による週刊ポストでの連載「競馬はもっともっと面白い 感性の法則」から、厩舎のチームワークはどのようにして培われるのかについて解説する。


 * * *

 ずっと時代を担ってきた腕利き厩務員が定年を迎えて厩舎を徐々に去っていっても、ほとんどの厩舎はこれまでのやり方を変えませんでした。


 私が調教助手として師事した松田国英先生も、ある時期いた厩舎では腕利きの調教助手がいて、あまり乗せてもらえなかったそうです。調教師試験に合格してからは、1年間森秀行厩舎で勉強し、開業後チームとしての厩舎運営を始めました。私も3年間、チームの一員としてみっちりと鍛えられました。


 1人の腕利きよりも、5人の平均的な厩務員。調教師が思い切ったリーダーシップを発揮し、誰がどの馬を担当しても勝負に持ち込めるように仕上げる。これが厩舎のチーム力です。厩務員もできるだけ馬に乗って調教もこなす持ち乗り厩務員(関東では調教厩務員)になってもらう。一応、担当馬は決めるけれど、遠征などもあるので、他の馬にも目を配る。かつては、自分の担当外の馬に関しては口を挟まないというのが不文律でした。


 わたしが開業したころ、チームで馬を作っていた厩舎は数えるほど。しかしこの20年くらいで厩舎のチーム化が劇的に進みました。


 チーム力を高める具体的方策として、進上金の厩舎プールがあります。


 厩務員の進上金は賞金の5%。給料とは別の、いわばボーナスです。パーセンテージは騎手と同じ。いかに厩務員の仕事が重要なのかわかります。角居厩舎ではこれを担当の総取りではなく3:2に分け、2%を厩舎にプールしておく。厩務員の頭数で割って配分します。すると「勝った馬は、オレが作った」という傲岸な意識は薄まり、厩舎全体で勝ち鞍を稼ぐチーム気質が生まれてきます。進上金の5%全部をプールする厩舎もあるようです。思い切ったチーム力強化策ですね。


 なにぶんお金のことです。「オレがオレが」といった腕利きならば決して納得しなかった方策でしょう。調教師の強いリーダーシップにかかっています。進上金のプールは、腕利き厩務員が若手を育てる動機づけにもなる。若手の育てた馬が勝てば、自分の懐も潤うわけです。お金のことではあるものの、そうやってチーム力が向上していきます。


 チームで馬を見て作っていけば、皆が厩舎のやり方を理解して実践してくれるので、成績がガクンと落ちることはないと思います。たとえ成績が上がらないことがあっても、1人ではなく知恵を寄せ合って克服していくことができる。


 チームとは不思議なもので、メンバーはリーダーに従順であればいいとは限りません。厩務員、調教助手は前進気性があったほうがいい。意見を言い過ぎる、やり過ぎるくらいのほうが能力がわかるんですね。馬と一緒で、おとなしいよりも気性が強くて引っ掛かるほうが勝つ。強い気性をリーダーがどうやってコントロールするかだけの問題です。


●すみい・かつひこ/1964年石川県生まれ。中尾謙太郎厩舎、松田国英厩舎の調教助手を経て2000年に調教師免許取得。2001年に開業、以後15年で中央GI勝利数23は歴代3位、現役では2位。ヴィクトワールピサでドバイワールドカップ、シーザリオでアメリカンオークスを勝つなど海外でも活躍。引退馬のセカンドキャリア支援、障害者乗馬などにも尽力している。引退した管理馬はほかにカネヒキリ、ウオッカ、エピファネイア、サンビスタなど。


※週刊ポスト2017年4月7日号

NEWSポストセブン

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