米球界席巻の“魚雷バット”はなぜ生まれた? 開発者が誕生秘話を告白「選手は投手の質向上に不満を覚えていた」
2025年4月3日(木)18時0分 ココカラネクスト

米球界で話題沸騰となっている魚雷バット。(C)Getty Images
革命的なアイデアだった。目下、米球界でトレンドとも言える話題を生んでいる「魚雷バット」だ。
名門打線の“爆発”によって一気に反響が広まった。現地時間3月29日のブリュワーズ戦で20-9と大勝したヤンキースは、3者連続初球打ち本塁打を含む9発と覚醒。文字通りの一発攻勢を展開したこの試合においてジャズ・チゾムJr.やポール・ゴールドシュミットら複数の打者が使用していたのが、魚雷バットだった。
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メーカーラベルが入っているグリップ部分が最も太くなっている同バットは、ボールをとらえる部分が従来製品よりも広い特殊な形状となっている。無論、「違反ではない」と強調したMLB規格の範囲内ではある。
だが、使用者の多いヤンキースが、開幕5試合でいずれも両リーグトップとなる19本塁打、長打率.633と効果が顕著に発揮。これによって、「不公平」「禁止すべき」という意見が一部のファンの間で噴出する事態となっていた。
そうした中で、“渦中の人間”が興味深い発言を口にした。球界を席巻する魚雷バットの生みの親であり、昨季までヤンキースの主任アナリストだったアーロン・リーンハート氏だ。
物理学の博士号を取得した後にミシガン大学で教授を務めた異色の経歴を持ち、現在、マーリンズのフィールドコーディネーターを務める同氏は、米メディア『The Athletic』などの取材で「選手たちはどこでボールを打とうとしているんだろう」という素朴な疑問がバット開発のキッカケだったと明かした。
「とにかくバットでボールに衝撃を伝えたい部分を、できるだけ重く、太くすることが大事だと考えた。選手たちの通常のスイートスポットは、バットの先端からおそらく6インチか7インチ下の位置だと分かったんだ。そうした話し合いや分析を通して、普通なら先端に集める木材の量とスイートスポットに入れる木材の量を入れ替えたらどうかと提案したんだ」
さらに「選手(打者)たちは球界の投手たちの質が高まったことに不満を覚えていた」と明かしたリーンハート氏は、「私の話を聞いてくれた選手たちに感謝したい。クレイジーな話だからね。何よりも大事なのはバットじゃなくて、バッターたちだ」とも告白。そして、こう続けている。
「最終的には選手たちが良いスイングをして、良い球を打てるか、そして日々努力するかどうかにかかっている。だから彼らが打てているというのは努力の賜物ではある。ただ、このバットの開発にはいろいろな人の協力があった。バットを作るためにさまざまな種類のモデルを試してきた。そういう過程を経て今があることを忘れたくはない」
そして、「バットのデザインをどう変えるかで、スイングスピードも、もう少し上がるかもしれない」と語ったリーンハート氏。物理的な視点から野球界にメスを入れた彼の発明品の影響力がどう高まっていくかは大いに注目したいところだ。
[文/構成:ココカラネクスト編集部]