磐田、静岡ダービーで見せた躍動感。松浦拓弥と川又堅碁が作り出す鮮やかな連係

4月3日(月)12時16分 フットボールチャンネル

今季最高のパフォーマンスでダービーを制す

 1日、明治安田生命J1リーグ第5節が行われ、2013年以来となる静岡ダービーに臨んだジュビロ磐田は清水エスパルスに3-1で勝利。2得点が中村俊輔のセットプレーから生まれたとはいえ、流れのなかでも連係に大きな進歩が見られた。中断期間中に選手たちが「すり合わせ」を続けてきたことで、スムーズなコンビネーションが生まれたと言えそうだ。(取材・文:青木務)

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 サッカー王国に溜まっていた熱が一気に放出された。降りしきる雨など、まるで関係なかった。

 ジュビロ磐田と清水エスパルスが互いのプライドをかけて激突する静岡ダービーが、4年ぶりに復活。共にJ2降格を経験し、2013年以来となる“再会”をようやく果たした。試合は磐田が3得点を奪うなど、全員が活き活きと躍動した。今シーズン最高とも言えるパフォーマンスで、ライバル対決を制した。

 後半アディショナルタイムに1点を返されたものの、サックスブルーは前後半の立ち上がりにゴールを挙げ、相手のテンションをしぼませた。勝つべくして勝ったゲームと言えるだろう。

 だが、戦前は拮抗した展開が予想された。清水は前節、王者・鹿島アントラーズから2点を奪うなど力を示している。「鹿島から2点取れていること自体が凄いこと。前線からしっかり守備をしてチーム全体で戦っている」と大井健太郎は警戒を強めていたが、その攻撃力と一体感は侮れないものだった。

 清水はキャプテンで得点源のチョン・テセ、小兵アタッカーの金子翔太が守備のスイッチを押す。味方の連動を促すだけでなく、彼ら自身で相手に相応のプレッシャーをかけることもできる。

 高い位置でボールを奪い、素早くゴールに迫る——

 思考するサッカーの骨格は磐田も同じだが、清水はこの日のスタメンのうち新加入のフィールドプレーヤーは野津田岳人のみと、成熟度では一日の長があった。

 次々とボールを狙ってくる相手に対し、磐田はテンポ良くボールを動かさなければならない。しかし、その点に不安を残していた。ダービーに向けた紅白戦ではボランチがプレスをモロに受け、ボールを失う場面が散見された。

練習時に川辺との位置関係を確認していた松浦

 その日の練習後、松浦拓弥と川辺駿が話し合う姿があった。「駿が珍しく何回か食われていたから、もう少しダイレクトで出せる位置にいてほしかったのかなと思って声をかけた」と松浦は言う。そして、こう続ける。

「アイツが一人で時間を作ろうとしてくれていた。ボールを動かして時間を作るという意味ではアイツは(味方に)当ててまた動かして、というのが上手い選手だから近くにいた方がいいのかなと」

 球離れのタイミングを見失えば、絶え間なく圧力をかけてくる清水の守備に捕まってしまうだろう。ワンタッチのパスを織り交ぜる必要がある。

「フリーならフリーで早めに付けてあげれば、受け手が楽になる。止めて丁寧に繋いでだと、受け手は次の選択肢が消されているからボールを戻すしかなくなる」

 名波監督はこう語る。また指揮官は、チームのワンタッチパスの精度や回数について「今のうちに足りないのはそこ。うちは多分、ワンタッチの数が18クラブ中18位か17位だと思う」とも述べている。

 相手にコースを消される前に素早くボールを離すことが出し手には求められる。また受け手の選手もサポートの角度や距離感を意識し、フォローしなければならない。前から潰しに来る相手に対してシンプルに裏へ送り込む選択も頭に入れつつ、パスのテンポには常に気を配るべきだろう。

「紅白戦と試合は違うので、また変わってくると思う」と川辺は話している。実際、エコパスタジアムで展開されたサッカーは、気鋭のボランチの言葉を裏付けるものとなった。

背番号11最大の魅力。中盤とFWの架け橋に

「限定だったり前からのチェイスだったり、プレスバックとか色々やることはあるけど、やっぱり前の方で出る限りはゴールというのが一番わかりやすい結果だと思うので、そこだけは意識したい」

 様々な役割がある中で、松浦は攻守に渡って高いレベルで仕事を遂行した。そして、中盤とFWの架け橋となりストレスなくプレーさせられる能力は、背番号11の最大の魅力だ。各所に顔を出すことでボランチにパスコースを提供し、1トップの川又を孤立させないよう尽力した。

 川辺、松浦、川又の縦関係は試合を通して機能。磐田が攻撃に移る時、必ずと言っていいほどこの3人がボールに絡んでいた。そして、松浦は自らスイッチを入れるだけでなく、そこからゴール前へ侵入するなどプレーに連続性を与えている。

 今シーズンも開幕からスーパーサブの役割を演じてきたが、自身がピッチに立った時に何ができるか常に考えていた。

「堅碁が身体を張ったところでボールを拾えればチャンスになるかな、といつも思っていた。ただ相手チームや戦い方によって、こっちが押し込まれすぎてしまうと堅碁が孤立してしまうので、そこだけは気をつけた。それでも下がってしまった部分はあったので、そこは次に向けて改善しないといけない」

 さらに「駿のいいところはわかっているし、すごくいいタイミングで俺に当ててくれた」と、紅白戦後に考えをすり合わせた川辺との連係もこの短期間で修正してきた。

 指揮官が課題に挙げていたワンタッチパスの回数も改善された。松浦の働きが、チームにリズムをもたらしたのだった。

川又の身体を張ったプレーと中盤と絡むプレー

 3得点全てに絡んだ中村俊輔、得点を挙げた森下俊、ムサエフ、川辺など、ダービーの主役は何人もいたが、最前線で身体を張り続けた川又堅碁の仕事も称賛されるべきだろう。

 シュートは1本だったが、先制点に繋がるFKを獲得したのはこのスキンヘッドのFWだ。さらに試合を決定づける3点目は彼のお膳立てから生まれている。中村俊輔にボールが入った瞬間、中央から右へ膨らんでパスを呼び込み、落ち着き払ったワンタッチパスで川辺をゴールへと導いた。

 相手CBに監視され、自由な時間は限られた。そうした中でも果敢に相手と競り合っては味方へボールを託す。「人に強いし、フィフティーな場面でもマイボールにできる」という松浦の言葉通り、川又が起点になることで攻撃の時間を増やし、相手を帰陣させた。

 さらに、少し低めの位置取りで中盤と絡むプレーも実践しているが、そこにはある成功体験があった。

 ロシアW杯アジア最終予選のためリーグ戦が中断していた3月26日、磐田はJ3のアスルクラロ沼津と練習試合を行っている。これに出場した川又は2列目と息の合った連係を見せ、状況に応じて臨機応変なプレーを披露した。

「ボールに絡みながらやろうと思っていた。ロングボールを自分が競ってとかもアリやけど、ボールの近くに自分も絡んでいこうと。自分が受けるというより、何というか、叩きながら出て行くイメージ」

 この練習試合には松浦も出場したが、互いの意図を感じ取りながらチャンスを作った。相手のカテゴリーは関係なく、重要なのは彼らが魅力的なコンビネーションを発揮したことだ。

 その好感触は静岡ダービーでも維持された。

 川又が孤立した時間がなかったとは言えない。だが、川辺→川又→俊輔と前線のユニットが少ないタッチでパスを繋ぎ、松浦のシュートに結びつけた41分のようなシーンも作り出している。それは、前節までには見られなかった形だ。

相手の勢いを削ぐ中村俊輔のセットプレー

 第4節を終えた時点で、磐田は無得点試合が3度もあった。ダービー直前の紅白戦では控え組に圧倒され、翻弄された。だが蓋を開けてみれば3−1で勝利だ。

 改めて痛感させられたのは、先制点の重みだろう。試合開始早々にリードを奪ったことで、チームに落ち着きが生まれた。その後は攻め込まれる時間もあったが、守備面での自信を深めるサックスブルーは慌てることなく対応し、2点目、3点目に繋げていった。

 相手の勢いを削ぎ、意気消沈させたのは中村俊輔の左足だった。本人は中で合わせてくれた味方への信頼感を口にしたが、『走り込めば絶対にいいボールが来る』と周囲に信じさせるだけのキックであることを日々、証明している。

 磐田が勝利した2試合は、前半序盤に先制点が生まれている。いずれもレフティーのセットプレーである。

 静岡ダービーが非常に重要な対戦だったことは間違いなく、大一番での歓喜は選手たちを安堵させ、次への活力を与えたことだろう。4万人以上のサポーターを前に選手たちはいつも以上に気合いが入っており、勝利のみが求められるプレッシャーにも打ち克った。今後はカップ戦も入るため多くの試合をこなさなければならない。連戦へ向かっていく上で、この山場を勝利で終えた価値は大きい。

 一方で、ダービーという“ストーリー”を抜きにして考えた時、浮かび上がるのはJ1復帰初年度のチームにしっかり勝てたという事実だ。磐田が昨シーズンを越える成績を狙うなら、上位グループ以外のチームからのポイント奪取は必須である。その意味でも今節の勝利は収穫となった。

 痺れる試合をモノにしたチームがやるべきは、好パフォーマンスの維持だ。次節、サックスブルーは日産スタジアムで横浜F・マリノスと対戦する。

(取材・文:青木務)

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