オーストラリア代表、堂々の最終予選進出。若手の躍動で日本最大の強敵に

4月4日(月)10時1分 フットボールチャンネル

「アジア王者」として申し分ない結果で最終予選へ

 ロシア・ワールドカップアジア2次予選を7勝1敗で通過したオーストラリア代表。その戦いぶりは「アジア王者」にふさわしいものだった。これまでチームを支えてきた主力に加え、若い選手たちも躍動している。最終予選で日本と同組になる可能性もあるサッカルーズの今をリポートする。(取材・文:植松久隆)

——————————

 豪州がW杯アジア最終予選へと駒を進めた。残り2戦となっていた2次予選のホーム2連戦を危なげなく連勝、7勝1敗で勝ち点21を積み上げた。これは、堂々の無敗で22点を積み上げた日本に続き、韓国やウズベキスタンといった他のアジアの雄と肩を並べる成績で、「アジア王者」として申し分のない結果だろう。

 アデレードでの11年ぶりの代表戦となった3月24日の対タジキスタン戦で、アンジ・ポスタコグルー監督がピッチに送り込んだのは、以下の顔ぶれ。

 GKはマット・ライアン(バレンシア)。マシュー・スピラノヴィッチ(杭州緑城)を欠くDF陣は、もう一人のレギュラーCBのトレント・セインスベリー(江蘇蘇寧)とイングランドでキャリアを積んできたベイリー・ライト(プレストン・ノースエンド)の若いCBコンビ。

 左右のいずれも絶対的なレギュラーがいないSBには、DFラインならどこでもこなすライアン・マクゴーワン(河南建業)が右SB、名門リヴァプールで順調な成長を見せる期待のブラッド・スミス(リヴァプール)が左SBに入った。

 中盤の底には、キャプテンのミレ・ジェディナク(クリスタル・パレス)。攻撃的MFには、今やAリーグ最高の選手となったアーロン・ムーイ(メルボルン・シティ)と昨年のアジア大会でブレークしたマッシモ・ルオンゴ(QPR)を並べて配置。

 前線には、左右のウィングにネイサン・バーンズ(FC東京)とマシュー・レッキー(インゴルシュタット)、CFは代表デビューのアポストロス・ジアノウ(広州富力)を起用。絶対的エースのティム・ケーヒル(杭州緑城)と最高のチャンスメーカーのロビー・クルーズ(レバークーゼン)をヨルダン戦に向けて温存した。

ギリシャ代表との争奪戦となったジアノウとは?

 この試合の最大の収穫は、若いMF達の躍動。ムーイとルオンゴという2人の創造的な若手MFが共存することで、攻撃に厚みが加わったこと。さらには、セルティックで活躍を見せるトム・ロギッチもベンチに控えた。

 スタメンでの出番は無かったロギッチだが、1得点を挙げお役御免となったルオンゴに変わって67分にピッチに入るやいなや、途中出場から5分で2得点とその攻撃センスを見せつけた。ムーイ25歳、ルオンゴ、ロギッチは共に23歳。彼らが切磋琢磨しながら順調に国際舞台でキャリアを積んでいることは、中盤の戦力がかなり潤沢に整ってきた豪州サッカー界の現況をポジティブに映し出している。

 さて、この試合でCFとしてスタメン出場を果たしたジアノウは日本の読者にはなじみのない選手であろう。

 ギリシャ生まれでメルボルン育ちの彼は、育成年代はメルボルンでキャリアを積み、18歳になってギリシャに戻りプロ選手としてのキャリアをスタートさせた。

 ギリシャのU-19代表、U-21代表でもプレー、クラブレベルでも確実に力を蓄え、2015年に移籍したアステラス・トリポリでブレーク。その活躍が認められて、ギリシャA代表招集を引き寄せるとともに、今年に入ってからは中国クラブの「爆買い」のターゲットとなって広州富力への高額年棒での移籍を果たした。

 そのジアノウを巡っては、水面下で豪州とギリシャの激しい争奪戦が繰り広げられてきた。2015年3月にユーロ予選のギリシャ代表に招集されたが、ここではプレー機会無し。11月には親善試合の代表メンバーに選出され、11月17日のトルコ戦で交代出場でギリシャ代表デビューを果たした。

ジアノウにとって大きな意味を持つ6月の2試合

 しかし、そのデビュー戦は親善試合であり、豪州代表としてプレーできる可能性を残していたことで、豪州サイドは猛烈なアプローチ。同じギリシャ系のポスタコグルー監督の熱心なラブコールに応えた彼は、豪州代表入りを決意。さっそく、今回の2連戦のメンバーに招集され、初戦のタジキスタン戦で先発デビュー、晴れて「豪州代表」となったのだ。

 そんな経緯もあって、彼のデビュー戦には注目が集まった。格下相手のデビュー戦で90分フルにプレーし、アシストなど4得点に絡み、その才能は充分に証明するも、惜しいシュートを外すなど無得点に終わった。ケーヒルの「後継者」争いに華々しく参戦するには、初招集即先発で初ゴールという衝撃的デビューこそ相応しかったのだが、初ゴールは今後に持ち越された。

 いずれにしても、ギリシャとの長い綱引きを制して、一部に「ビドゥカの再来」との評判を持つストライカーをデビューさせることができたのは、今後のサッカルーズにとっては非常に大きなアドバンテージとなる。

 実は、そんなジアノウには、これ以上無い絶好のアピールの舞台が用意されている。6月4日、7日、それぞれシドニーとメルボルンで、サッカルーズとギリシャ代表との親善試合が組まれているのだ。

 多文化共生国家・豪州でも、ギリシャ系の存在感は非常に大きい。特にメルボルンは、アテネ以外で最もギリシャ人が多く暮らす街と言われるように、大きなギリシャ系コミュニティが存在する。

 メルボルン育ちでギリシャ代表のユニフォームに袖を通したストライカーが、出生国の代表チーム相手に大活躍を見せるという筋書が実現すれば、満員のスタジアムは大いに沸く。すべてがその筋書通りに行ったとき、26歳とやや遅咲きのジアノウは一気にスターダムを駆け上がるのかもしれない。

レドナップ率いるヨルダン代表を迎えた一戦

 3月29日、豪州はシドニーにグループ最大の難敵ヨルダンを迎えた。ヨルダンを指揮するのは、3月に入ってから急遽、監督に就任したプレミアリーグの名物監督、ハリー・レドナップ。

 アウェイで苦杯を舐めさせられた相手とのホームの対戦で、勝てば最終予選進出が決まるという大事な試合と多少なりとも話題性のあるカードにもかかわらず、この日の観衆は24,975人。45,000人を収容できるアライアンツ・スタジアムには空席が目立った。

 FFAは「グループの勝敗の帰趨がほとんど決していたから」「イースター休暇直後の平日の夜だから」など、幾つかの言い訳は用意しているのだろうが、この観客動員はあまりに寂しすぎる。

 タジキスタン戦で温存されたケーヒル、クルーズ両選手が入り、多少顔ぶれが変わったこの日のイレブン。キャプテンのジェディナクが前の試合で痛めたふくらはぎのケガが回復せず欠場するも、その穴は、ベテランのマーク・ミリガン(バニーヤス)がしっかり埋めた。

 中盤の攻撃的な位置では、ルオンゴに変わってロギッチが先発。右サイドバックには、Aリーグでの好調が買われてメンバーに残ったジョッシュ・リズドン(パース・グローリー)が先発した。

 やはり、ケーヒル、クルーズ、レッキ—が並ぶ前線には破壊力がある。前線の3人と攻撃的MFのムーイ、ロギッチのコンビネーションも非常に洗練されていて、そこかしこから得点の匂いがする。もう少し歯ごたえのある相手と思われていたヨルダンに対しても、前半だけでクルーズ3アシスト、ケーヒル2得点と格の違いを見せつけた。

 後半に入ってからは、ロギッチが「俺を忘れるな」と言わんばかりの得点を見せ、ムーイに変わって入ったルオンゴもすぐに得点するなど、切磋琢磨しながらのMFのレギュラー争いは過熱の一途。DF陣はほぼ破たん無くヨルダン攻撃陣をさばいていたが、終了間際に無用な失点でクリーンシートを逃すなど、まだまだ詰めの甘さが見られたのは今後の課題として残る。

日本、最終予選最大の強敵サッカルーズ

 豪州と並んで最終予選に進出してきた12ヶ国の顔ぶれを見ると、簡単に勝ち点を計算できそうな相手などいない。相手が強くなることで、当然ながら一戦一戦が身を削るような戦いになる。そういう厳しい戦いの中でこそ、サッカルーズの底力が試される。

 7-0、5-1と12得点での2連勝、首位通過で2次予選を終えたサッカルーズ。そのチーム力の基盤は確実に高いレベルで整いつつある。ポスタコグルーの目指す方向性も、きちんとチーム全体で共有されている。

 現時点では、サッカルーズに目に見えた大きな不安は無い。強いて挙げるならば、ケーヒルの控えを含めたFW陣の厚み、安定しないDFラインの顔ぶれを揃えることくらいだろうか。それらも、ポスタコグルーの腹案にある程度の見通しは立っているはずだ。

 4月12日、最終予選の組み合わせが決まる。FIFAランキングの推移と抽選次第では日豪両国が同組に入る可能性がある。日本の読者にこれだけは伝えておきたい—現アジア王者たる豪州を決して侮ることなかれ。同組に入ってきたならば、必ずや日本の最大の難敵になるはずだ。

(取材・文:植松久隆)

フットボールチャンネル

日本をもっと詳しく

BIGLOBE
トップへ