鳥栖加入の日伊ハーフGKファンティーニ燦。イタリア育ちの18歳守護神が描く将来像【インタビュー】

4月5日(水)10時30分 フットボールチャンネル

ブッフォンに憧れてGKに。イタリア生活を支えたのは家族

 2017年4月3日、サガン鳥栖はイタリア・セリエB(2部)のチェゼーナから18歳のGKファンティーニ燦(あきら)の加入を発表した。イタリア人の父親と日本人の母親を持つ東京五輪世代の守護神は、どんなプレースタイルで、どんな人物なのか。チェゼーナ時代の今年2月に収録した独占インタビューをお届けする。(取材・文:舩木渉【チェゼーナ】)

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——今年はチェゼーナU-19でプレーしながらトップチームに招集されて第3GKを務めることもあります。現在(2017年2月15日現在)チーム内ではどんな立ち位置にいるのでしょうか。

 もう1人GKがいるので第4GKというときもあるのですが、時々トップチームに行かせてもらっています。今年はトップチームの大人たちとサッカーができるようなメンタルの作り方を重視しています。テクニックとかも重要なんですけど、GKとして一番重要なのはメンタルだと考えています。ベテランGKたちのチームのディフェンスとのコミュニケーションを見たりしていると、自分とは違うなと感じることはありますし、そこで色々なことを教えてもらったりするので、すごくいい経験になっています。

——チェゼーナには元ミランのミカエル・アガッツィをはじめ、経験豊富なベテランのGKがいます。彼らと練習して、特に印象に残っていることはありますか?

 あるときアガッツィが紅白戦をしていて、彼は特に若い選手に気合いを入れるように大声で指導していました。他のベテランの選手と違って若手だけに特別な声をかけているような感じがして、それはすごく驚きました。コミュニケーション能力が違いましたね。

——中学生の頃からチェゼーナでプレーしていますが、いつからGKを始めたのでしょうか。

 GKを始めたのは小学3年生の時です。最初はFWをやっていたのですが、ブッフォンの試合を見てGKに興味を持ちました。7歳、8歳くらいの頃にW杯で見たブッフォンです。すごくいい思い出です。直接会ったことはないですけど、友達経由でサインはもらいました。

——ブッフォンに憧れてGKを始めて、彼の母国でもあるイタリアにやってきたということですね。

 親が中国で出会って、結婚して、中国に住むようになって、幼稚園も小学校も中国で通っていました。その後、小学校から中学校に上がるタイミングで直接イタリアに来たので、日本の学校には通ったことがないんです。いまは通信制の日本の高校とイタリアの高校の両方に通っています。

——イタリアでプレーしているとシーズンオフの短い期間しか一緒にいられませんが、ファンティーニ選手にとって家族はどんな存在ですか?

 イタリアに来てから最初の1年、2年はすごく支えてくれました。3年目くらいまでは一緒に住んでいたおじいちゃんとおばあちゃんが第2の親みたいになってくれていました。いまはお父さんの弟の家族と一緒にアパートを借りて住んでいます。

 こっちが夜のときは日本が朝なので、お母さんとは毎日テレビ電話をしていいます。イタリア人のお父さんは早起きが苦手なので、ときどきLINEしています。お父さんとはイタリア語で話していて、お母さんと兄妹とは日本語です。弟が3人、妹が1人います。

イタリアで痛感したコミュニケーションの重要性。今では大きな武器に

——昨年夏には日本でFC東京の練習に参加しました。初めて日本のプロ選手たちとプレーして、どんな印象を持ちましたか?

 FC東京では1週間練習しましたが、日本のGKはパス回しがすごく上手いと思います。パスでゲームを作るような。GKも足もとがうまくないといけない。そういうところは勉強になりましたし、日本語のコーチングもしたことがなかったので、日本のコーチング方法を学びました。イタリアのサッカーはどちらかといえばフィジカル的な強さが求められるので、そこの違いもありましたね。

——日本語のコーチングは難しかったですか?

 最初の2、3日間はわからなかったのでイタリア語でコーチングしていて、その後は少しずつわかってきたので、日本語でも試していきました。

——イタリアに渡って6年が経ち、そのままヨーロッパでのキャリアを続けることもできると思いますが、日本でプレーをする選択肢を考えるきっかけになったのではないでしょうか。

 FC東京が初めてでしたが、日本のサッカーを夏に経験して「いいな」と思ったので、日本でプレーすることに興味はあります。いいチーム、いい状況があればもちろん不可能ではないと思います。

——チェゼーナU-19の先、プロを意識したときに自分のアピールポイントはどこにあると感じていますか?

 自分の長所はジャンプ力ですね。僕はそんなに身長が高くないので、ここまでこれたのは絶対他のところでカバーできているからだと思います。イタリアのGKにとって身長は重要ではありますが、みんながみんな190cmを超えるわけではないですし、僕もそうです。身長がそんなに高くないGKは、アジリティや反応、何か別のところを伸ばしてカバーします。

 僕はコミュニケーションもいいと時々言われますが、そういうところで身長の低さをカバーしてきました。自分の強いところがわかっているので、それを伸ばすための練習も重ねてきました。イタリア人はジョークしか言わず、真剣な話はしないので、イタリア人が好きな女の子の話とか、最初はそういうところから入りながらコミュニケーションをとっていきましたね。

——ベテランの選手にも臆することなく指示を出せますか?

 若手選手にやる気がないときは怒りますし、トップチームにいけばベテランの選手ともしっかりコミュニケーションをとります。でも怒鳴るのではなく、「もっとこうしてくれ」と話し合う感じです。チームとして一番大事なのはコミュニケーションなので、相手がベテラン選手だからといって話し合わないなんてことはありません。コーチングだけで何点がゴールを防げることもありますし、非常に重要だと思っています。どんどん声を出していきたいタイプです。

日本とイタリア、どちらの国籍を選ぶか…東京五輪への思い

——FC東京で練習をして日本とイタリアの違いを実感したと思いますが、コーチングの他にイタリアのGKに要求される重要なプレーはありますか?

 他の国のGKと比べたとき、特にイタリアのGKは自分からボールを探しにいきます。ボールを待つのではなくて、自分からアタックしにいく。よく体を大きく開いて前に出ることがありますよね。そういうのはイタリアのコーチは教えません。

 コーチのアイディアとしては「体を開いているとボールが当たるだけ」なので、ボールを待っているだけで自分からアクションを起こしているわけではないということになります。どちらかというと、そういう場面では頭から、腕から突っ込んでいきます。自分からボールを探しにいくイメージです。そこで他の国のGKの違いが出てくると思います。

——ハーフのファンティーニ選手にとって、将来的に国籍の選択は自分のアイデンティティにつながることで難しい選択になると思います。現時点で日本とイタリア、代表に入るならどちらがいいと考えていますか?

 日本代表になりたい、イタリア代表になりたいという思いはどちらも50%ずつくらいですね。もし将来的にイタリアやヨーロッパでサッカーをしたければ、日本国籍よりも有利なのでイタリア国籍をとります。あと数年でオリンピックがあるので、東京五輪に出たいという思いが強くなってきたら日本代表を選びます。

——アピールしだいでは日本代表に入れる可能性も十分にあると思いますが、やはり3年後の東京五輪を意識することはありますか?

 最近は少しずつオリンピックに出たいと思うようになってきました。みんなができる経験ではないし、東京というのもあって、もし出られるならばその可能性を生かしたい。けど、イタリアにいると日本から見にくる人がほとんどいないので、代表に入ることを意識するなら日本に帰ることも考えていないわけではないですね。

「最終的に重要なのはメンタル」。同世代のGKたちへのライバル心

——もちろん日本へ帰る以外に、チェゼーナのトップチーム昇格という選択肢もあるのではないでしょうか。現時点でその可能性はどれくらいありますか?

 50%くらいですね。ただトップチームに昇格しても第3GKなので、試合に出る機会は少ないですし、僕の成長のことを考えたら継続的にプレーできるチームでサッカーをしたいです。若いうちは絶対に試合に出て経験を積んだ方がいいと思います。イタリアで第3GKが試合に出るのは、U-19チームと練習試合をするときだけです。

 トップチームのいい選手と練習はできるんですけど、試合には出られない。フィールドプレーヤーはU-19からトップに上がっても、練習ができて、少しだけでも試合に絡めるチャンスがあります。でも、GKになると試合中に交代することはまずないですし、第3GKになると2人が怪我でもしなければ試合に出られない。GKはフィールドプレーヤーと違って20代後半になってから選手として最高の状態になりますし、若いうちは試合を経験することが大事になります。練習をして試合に出ないと感覚が途切れてしまうので、最終的には自分が一番成長できる環境に進みたいです。

——今年は5月にU-20W杯があります。U-19日本代表のアジア選手権は見ましたか?

 見ました。日本のユースのサッカーのレベルがすごく高くて驚きました。

——東京五輪出場を目指す同年代のチームになりますが、特にGKのポジションは激戦区でもあります。彼らのプレーを見てどんなことを感じましたか?

 早稲田大学の小島(亨介)選手は試合の映像を見ていると反応が速くて、ディフェンスとのコミュニケーションもしっかり取れていたと思いました。ジェスチャーだけでも重要なので。廣末(陸)選手は試合の中で一番指示を出していて、キックも上手かったです。FC東京の練習に参加したとき仲良くなった波多野(豪)選手は、は身長の高さを生かしたセーブが多かったですね。自分の体を使ったり、ノイアーみたいなセーブもしていましたし、ハイボールにも強かったです。

 フランスでハーフのGK(編注:ロリアン所属の山口瑠伊)がやっていることも聞きました。99年生まれですけど、サンフレッチェ広島ユースの大迫(敬介)選手もすごくいいGKだと思いました。レベルとしてはみんなと僕はそんなに変わらないと思っているので、最終的に重要になってくるのはテクニックや身長ではなくて、やっぱりメンタルの部分。そこで全てのプレッシャーに耐えられる選手になっていけば、将来代表でプレーできる選手になれると思います。

「東京五輪に出るのであれば…」。18歳GKが描く将来のビジョン

——ブッフォンに憧れてGKを始めましたが、日本人GKで自身のロールモデルになるような選手はいますか?

 僕は西川周作選手が好きなんです。足もともセービングもうまいですけど、特に好きなのはピッチの上で自分に自信のある姿を見せるところです。GKは気持ちが一番大事なので、常にポジティブなところを見せる、そういうのは映像を見ているだけでもわかります。セーブしたらいつも周りを励ましていますよね。そういうところもすごく大事だと思います。

——ファンティーニ選手はヨーロッパでプレーする日本人GKの先駆けの1人として、後に続く選手たちのロールモデルになれる可能性を持っていると思います。今の段階では将来に向けてどんなビジョンを描いていますか?

 日本のGKはみんな最終的に海外へ行きたくなりますよね。僕は逆に海外でしかやっていないので、日本でのプレーを経験してみたいというのはあります。好きか嫌いかはわからないですけど、絶対にイタリアとは違うサッカーをしているので、自分の力を試してみたい気持ちはあります。オリンピックの代表チームもあと1年か2年したら形が出来上がってしまうと思うので、東京五輪に出るのであれば日本でプレーするのが一番いいかもしれません。

 選手としてのキャリアを終えた後のことも時々考えます。自分はハーフなので日本語とイタリア語、それから中国に住んでいたので中国語も喋れますし、ちょっと英語も喋れるので、現役が終わったら自分の語学力を生かすことができればいいと思いますし、GKコーチもしたいと思っています。

 中国語ができたら中国でGKコーチをすることができますし、英語ができたらアメリカやオーストラリアにも行けます。言語を勉強することは好きなので、世界に出てコーチをすることもいいなと思いますね。言語のほかは苦手ですけど…数学とかは特に(笑)

(取材・文:舩木渉【チェゼーナ】)

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ファンティーニ燦(あきら)
1998年5月24日生まれ。182cm78kg。イタリア人の父親と日本人の母親を持ち、中国・北京で生まれる。12歳でイタリアへ渡り、父親の地元であるチェゼーナの下部組織に入団。今季は同クラブのU-19チームで正守護神を務め、昨年8月にはトップチームでベンチ入りも果たす。4月3日にサガン鳥栖入団が決定。背番号はチェゼーナ時代と同じ「30」。

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