【ライターコラムfrom甲府】向上心と楽しさ持つ“甲府の至宝”堀米勇輝 復帰背景に指揮官へのキタジの助言

4月5日(水)18時48分 サッカーキング

札幌戦で得点した兵働(右)と喜びを分かち合う堀米勇輝 [写真]=JL/Getty Images for DAZN

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 堀米勇輝を取材するたびに、彼の口から「楽しいです」という言葉を聞いている気がする。京都サンガからヴァンフォーレ甲府に復帰した彼は、確かに練習からすごく楽しそうだ。

 堀米は地元・甲府生まれで、アカデミー出身の24歳。宇佐美貴史柴崎岳を擁していた“プラチナ世代”の主力としてU−17ワールドカップに出場した『甲府の至宝』だ。ただし昇格後はなかなかトップの戦力になり切れず、ロアッソ熊本や愛媛FC、京都といったJ2のクラブで経験を積んできた。また、15年の京都入りは完全移籍だった。

 しかし彼は吉田達磨新監督のリクエストもあり、甲府に戻ってきた。開幕のガンバ大阪戦はインフルエンザで出場を逃したものの、その後は2トップの一角として先発を続けている。

 自分が4年ぶりに彼を取材して感じたのは「大人になった」こと。もっとも見た目は童顔のままで、ふわっとしたキャラクターも変わらない。168センチ・62キロの体格が特に逞しくなったわけでもない。一方で彼はサッカー選手としてずいぶんと知的になった。

 知る限り堀米はドリブル、左足のキックを売りにして、オン・ザ・ボールで輝く技巧派だった。しかし今はボールを持っていないときの駆け引きに楽しみを見出すタイプへと脱皮した。例えば『間に動き相手を食いつかせて、外を空ける』動きで効いている。

 甲府が2−0で連勝を飾った第5節・北海道コンサドーレ札幌戦後も、堀米はこう振り返っていた。「誰かのためにスペースを空けることは意識していた。(エデル)リマが持っているときは、自分がウイングバックを出させない立ち位置にいる。(阿部)翔平さんに(相手守備のスライドが)ズレにくい形を作ろうというのをやった」

 もちろん空いた味方にボールが出なければ何も生まれないが、札幌戦の先制点は堀米のヒールキックが起点。そこから右ウイングバックの松橋優が抜け出し、クロスを上げたセカンドボールから兵働昭弘のボレーは生まれた。

 吉田監督も堀米の“オフ・ザ・ボール”をこう評価する。「すごく向上しているのは間違いない。去年(京都で)エスクデロ(競飛王)と組むようになって、コンビネーションで動くようになった。ドリブルしてスルーパスを出すとか、そういう喜びはあったんだろうけど、(最近の堀米は)今ないスペースを作るとか、どうやって相手との距離を離すかとか、そういうところに楽しみを見出しているのかなと思います」

 吉田監督は長く柏レイソルの育成組織に関わっていたキャリアを持ち、堀米を中学生時代から知っている。指揮官はこんな思い出を振り返る。「僕が柏のユースをやっているときに、島川(俊郎・現甲府)たちと(山梨県の)櫛形というところに試合で来たんです。ホリがボランチか何かで出ていた。牛奥(徹・元甲府)というすごく速いストライカーがいて、『とんでもない二人だな』と言っていた」

 調べると2007年11月のJユースカップで甲府は柏と対戦している。甲府は工藤壮人の2ゴールなどで5−1と勝利したが、当時まだ中学3年生だった堀米は吉田監督に強い印象を与えていた。

 また吉田監督は昨年、アルビレックス新潟の監督を務めていたが、コンビを組んでいた北嶋秀朗コーチ(当時)が熊本で堀米のチームメイトだった。そんな縁のある人物から、堀米の評価が耳に入っていたという。吉田監督は「キタジ(北嶋)からホリは凄くサッカーが好きで、真っ直ぐな奴だからと聞いていた」と説明する。

 13年に熊本でプレーしていた当時の堀米は、守備に課題を抱えていた。吉田監督はこうも言う。「守備のセンスはないって、キタジは言っていた。でもすごくサッカーが好きだから、きっかけを掴めば楽しいなと思えればやるかもしれないですね、という話もしていた。ホリと一緒にやるようになったら『本当にその通りだね』って思う」

 堀米は例えば小椋祥平のように、相手ボールを激しく奪い切るタイプではない。しかし駆け引きの楽しさを覚えた彼は、守備面も徐々に脱皮しつつある。吉田監督も「コース消すこともできるし、行く行かないとか、いつ中盤を助けるかというところもだんだん整理できている」と戦術的な成長を評価する。

 甲府の前線にはドゥドゥという強力な駒もいる中で、堀米の先発が続いている。吉田監督は起用の狙いを「『5』と『3』とウイルソンの間を、攻守において上手くリンクさせる役割」と説明する。そんな役割をこなしているからこそ、堀米は出番を得ているのだろう。

 ただしオフ・ザ・ボールが向上したといっても、それは『今までの彼』との比較。当然ながらまだ伸びしろは残っている。吉田監督も「『自分のスペースを空ける』動きに関しては全然ダメ。『今だよ』という時に動けなかったりする」と堀米の課題について釘を刺していた。周りを活かす動きは身に付き始めているものの、自分を活かす動きに難点があるのだという。

 加えて堀米はまだ“結果”を出していない。チームは2連勝と調子づいているが、彼は4試合に出場して無得点。愛媛で8得点、京都で7得点を挙げた堀米だが、甲府の選手として実は通算1得点しか挙げていない。それも5年前のJ2時代のことで、サポーターが何より願っているのは“J1初ゴール”だ。

 とはいえ“甲府2点目”も遠い先のことではないだろう。札幌戦の46分にあったウイルソンの決定機を振り返ると、いい位置でフォローをしていた。吉田監督も「ホリにパスをしていれば多分点が入ったと思う」と振り返るJ1初ゴール未遂があった。

 吉田監督は堀米への期待をこう述べる。「(スペースに動いて)顔を出しているのは間違いない。そういうところは継続しつつ、飛び出す動きと運ぶところと、あとは自分で狭いスペースを広くするところが課題。彼は狭い中でもプレーできるけれど、(相手の)ボランチの後ろとかで一発で前を向ける広さを作る動きができるようになったらいい」

 24歳の堀米は成長途上だが、それはまだ伸びる余地があるという意味でもある。何より向上心を持って、楽しさを感じてプレーできていることは素晴らしい。オフ・ザ・ボールの動きと更なる成長に、ぜひ注目してほしい。

文=大島和人

サッカーキング

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