レアル“完敗劇”の理由は? 長所を抑え短所を突いたヴォルフスブルクの完璧なる戦略

4月7日(木)11時54分 フットボールチャンネル

スタッツではマドリーが圧倒も…

 チャンピオンズリーグ(CL)ベスト8、1stレグ。ヴォルフスブルクはホームにレアル・マドリーを迎えて2-0と完勝。戦前の予想では圧倒的に不利とされながらも、なぜ2点差をつけて勝利を手に入れることができたのか。そこには相手の長所を抑え、短所を的確に突いた戦略があった。(文:海老沢純一)

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 サッカーでは、必ずしもボールを持っているチームが勝つとは限らない。重要なのは戦略。支配率が低くても、決定機の数が少なくても、戦略で上回ることができれば戦力差をも覆して勝利を手にすることができる。それを証明したのがヴォルフスブルクだった。

 ヴォルフスブルクは、ホームのフォルクスワーゲン・アレーナにレアル・マドリーを迎えた。一方はCL決勝トーナメント初進出のクラブ、もう一方はCL歴代最多10回の優勝を誇るクラブ。2クラブ間の差は埋めきれないものかと思われた。

 試合が始まれば、主導権を握ったのはやはりレアル・マドリー。開始早々にクリスティアーノ・ロナウドがDFラインを抜けてシュートを決めるもオフサイド判定。ゴールとはならなかったが、この先のゴールラッシュを予感させる流れに思われた。

 しかし、結果は全く異なるものだった。ヴォルフスブルクの2-0。過去のデータを参照すれば、1stレグをホームで戦ったチームが2-0で先勝した場合の2試合合計勝敗は18勝2敗。確率で言えば、実に90%に達する。

 なぜヴォルフスブルクが勝利をつかむことができたのか。それは、マドリーの弱点を的確に突いたディーター・ヘッキング監督による戦略にほかならない。

 まず、この試合のスタッツを見ると支配率41.8%(ヴォルフスブルク):58.2%(マドリー)、パス本数428本:643本、成功本数342本:569本、チャンスメイク数8回:14回、シュート本数10本:21本。多くの点においてアウェイのマドリーが上回っていた。

 そもそもヴォルフスブルクの今季の平均支配率は57%。決してポゼッションの低いチームではない。しかし、この日は後方にブロックを作ってカウンターを狙う戦略を立てた。

「打たせる守備」を敷いていたヴォルフスブルク

 もちろん、マドリーを相手ということもある。世界最高クラスのアタッカーを揃えた前線に対抗するにはヴォルフスブルクに限らず多くのチームが守備を第一に考えなければならない。ただ、マドリーの攻撃の真髄はカウンターにこそある。

 そしてそのマドリーのカウンターはアンカーのカゼミーロを中心とした中盤の守備によってスタートする。ヴォルフスブルクの守備組織は、そのマドリーのカウンターを阻止することを前提としたものだった。

 ヴォルフスブルクが繰り出したタックル数は14回。そのうちマドリーの中盤の選手に対するタックルはギラボギがクロースに仕掛けた1回のみ。中盤のギラボギは主にベイルやロナウドを潰しにかかっており、チーム全体がサイドの守備を固めていた。

 前述したように、この試合のシュート数は10本:21本。しかし枠内シュートに限るとヴォルフスブルクが6本でマドリーが3本。つまり、ヴォルフスブルクはベナーリオという優秀なGKを中心に「打たせる守備」を敷いていた。

 また、マドリーは中盤の3人が攻守のバランスを取りつつ全体をコントロールするスタイルだが、中盤での競り合いが少なくスペースを得たため、カゼミーロを含めて攻撃に比重を置く展開となった。こうなると一転してヴォルフスブルクがカウンターに転じた際にマドリーの中盤の守備は後手を取られることとなる。

スペースを上手く使ったドラクスラー

 この試合でマドリーの右SBを務めたのがダニーロだったこともヴォルフスブルクを後押しした。

 ダニーロは超がつくほど攻撃意識の高いSB。この試合でも90分を通して敵陣でのプレー割合が68.57%。後半に限っていえば82.35%とほとんどウイングの選手といえるほどの数字となっていた。

 そして、一度自陣までマドリーを引き付けたヴォルフスブルクは、ボールを奪うとがら空きとなったサイドのスペースをドラクスラーが突破。さらにマドリーの中盤は攻撃に出ていたことで中央の、いわゆるバイタルエリアもがら空き。ここへドラクスラーが切り込んで度々マドリーの守備陣を脅かしていた。

 それが凝縮されたのが25分にマキシミリアン・アーノルドが決めた2点目のゴールだった。

 誰もが絶対的不利と予想していた一戦で、ヴォルフスブルクは勝利を手にした。それも2-0。それを可能としたのが徹底的な分析と完璧な戦略だった。相手の短所と自らの長所をいかに噛み合わせるか。それこそが世界で戦うための重要なポイントである。

 全霊で考えれば、ヴォルフスブルクのベスト4進出の可能性はかなり高い。一方で、マドリーがホームで3点以上を奪うのも難しいミッションではない。現状では、まだ五分五分といったところ。この試合を見る限り、ヘッキング監督が2ndレグでどのような戦略を立てるかが大きな見どころとなる。

(文:海老沢純一)

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