浦和、アジア王者・広州恒大からの勝利を呼んだ2つのキーワード。“失敗”を結果に繋げた赤き血のイレブン

4月7日(木)11時2分 フットボールチャンネル

浦和、アジア王者に勝利。敵将と外国人選手も称賛

 浦和レッズは5日、ACLで広州恒大とホームで対戦して1-0の勝利を収めた。相手は莫大な資金力を誇る昨年のアジア王者だが、浦和の勝利には選手たちが語った2つのキーワードが大きく関係していた。昨年はグループステージ敗退と無念の結果に終わった赤き血のイレブンは、多くの“失敗”を結果に繋げている。
(取材・文:今関飛駒、取材協力:チェーザレ・ポレンギ、ダン・オロウィッツ)

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「今日は難しい試合だった。我々にもいくつかチャンスがあったが、彼らは勇敢だった。心からおめでとうと言いたい」

 W杯優勝監督でもある敵将ルイス・フェリペ・スコラーリは、浦和レッズをそう称賛した。

 広州恒大とホームで対戦した浦和は、90分間を通じて終始苦しめられたものの、武藤雄樹が挙げた唯一のゴールを守り切り、1-0で勝利した。

 昨年はホームで1勝も挙げることができなかった浦和だが、前年度のアジア王者相手に見事な勝利を収め、グループステージ突破に王手をかけた。彼らは、失敗という経験を未来につなげようとしている。

 いまやレアル・マドリーやバルセロナなどヨーロッパのビッグクラブに匹敵するほどの資金力を持つ広州恒大は、近年高額な移籍金で大物選手を獲得している。“爆買い”と称された補強方針の象徴でもあるコロンビア代表のジャクソン・マルティネスは、「日本サッカーは確かに成長しており、世界的なレベルの選手も多い」と語っている。

 そして、かつてFC東京や大宮アルディージャでプレーしたキム・ヨングォンも浦和の強さを認めている。昨年は決勝トーナメントで柏レイソルとガンバ大阪を破った広州恒大だが、韓国代表DFは浦和と対戦して感じた印象を日本語で話してくれた。

「ビルドアップがすごい上手いので、そこからボールを取れなくなって、そこからずっと(DFラインを)下げてプレーしたから、それが問題かなって。私が思うのは、去年のG大阪と柏より今年の浦和の方が強いということです」

 そして、ブラジル代表のパウリーニョも「彼らはよくやった。良いチームで、良い選手もいる。僕たちのホームの試合でも良いプレーをしたし、彼らの実力が認められた」と、浦和についての印象を述べた。

相手の個を上回った浦和のチーム力

 では、昨年はグループステージで敗退した浦和がアジア王者に勝つことができた要因は何なのだろうか。試合後に選手たちが語った言葉に、2つのキーワードが隠されていた。

 1つは『チーム力』だ。宇賀神友弥は「外国人選手に対して個だけだと上回られてしまうので、ボールが入ったときにコンパクトにするだとか、チームとして戦う部分はかなり意識高くできた」と振り返った。

 また、遠藤航も「外国人選手の個の能力はずば抜けてると思いますけど、中国人の選手もパスだったり1対1の強さだったり良い選手が多いという印象はある。ただ、うちらもその個に負けないくらいのチーム力や個の強さというのも意識していますし、まずは1対1で負けないことを今日はやった」と自信を覗かせた。

 この日の広州恒大には4人の外国人選手がプレーしていたが、浦和にも優れた外国人選手がいることを忘れてはならない。元スロベニア代表のズラタンは、「彼らに対して僕は多大なリスペクトをしている」としながらも、チーム力で勝っていたことが勝因だと語っている。

「ACLを2回も優勝しているという結果を得たチームだが、今日に関して言えば我々の方が上回っていたのは間違いないし、それに値する戦いができた。そして、我々はサッカーが個人技ではなくチームの組織が一番重要であることを証明することができた。今回の結果を含めて、ACLで十分な結果を出すことができた」

 彼らの口から出た言葉はみな、『個で上回る相手に対してチーム力で戦う』ということだった。実際、試合中にもドリブルを仕掛けてきたパウリーニョに対して3人掛かりでボールを奪うシーンも見られた。1人の選手に対する守備に多くの人数をかければ他の選手がフリーになるが、周りの選手が上手くカバーリングし、何度も攻撃の芽を摘んでいた。

 J・マルティネスとマッチアップした遠藤が、「パスの出し手のボールの出し方が読みやすかった。味方も上手くコースを切ってくれてたので、インターセプトを狙うシーンもあったから個人で守ったというわけではないです」と話したことにも繋がる。

向上の片鱗を見せた守備。リーグ戦の失敗が勝利の要因に

「前線からの守備が本当に迫力があるなと思って見ています。前から全部いけるわけではないので、そういったところでブロックをしっかり作って守る時間帯や、繋げるところと繋げないところの割り切りをみんなでコントロールできている。そこが後半に失速しない要因かなと思います」

 浦和の守護神、西川周作はグループステージ敗退に終わった昨年からの変化について聞かれると、そう答えた。2つ目のポイントは、『守備』である。

 もちろん、浦和が広州恒大の攻撃の全てを封じたわけではない。時には決定的なチャンスを何度も作られたが、西川の好セーブや相手のシュート精度の低さに助けられた場面もあった。しかし、少なくとも昨年から向上の片鱗を見せていることは確かだ。

 槙野智章は、「今日はちょっとした隙やミスについても、もっとこうした方がいい、こうしなきゃいけないっていうのをお互いに話し合えているのが非常に良かったと思います」と話した。

 浦和は直前のリーグ戦での1つの“失敗”を犯している。広州恒大の4日前に行われたヴァンフォーレ甲府戦で1つのゴールを与えてしまったのだ。相手選手の退場、徹底的な守備戦術を前に2点を先行した浦和だが、試合終盤に一瞬の隙を突かれて失点してしまった。

 結果として勝利こそしたものの、この失点は浦和のイレブンに反省を強いらせることとなった。だが、槙野はこの甲府戦の失点が広州恒大の完封に繋がったと語っている。

「甲府戦後も、みんなミックスゾーンを通ったときには普通の顔してましたけど、ロッカールームやバスの中では反省の声が飛んでましたし、そういう意味ではもしかしたら甲府戦の1失点が今日の試合でまた集中を研ぎ澄ませてゼロに抑える要因にも繋がった。やっぱり失敗から学ぶというはたくさんあると思います」

 そして、ホーム開幕戦でジュビロ磐田に敗れた試合も同様だと言う。日本代表DFは「もちろん磐田戦も負けなれば連勝だったりとかっいうのもありますけど、あの負けがあったからこそ前線の選手の動きとか後ろの選手のボールの動かしとかいろんな場面でプラスに繋がってますし、失敗からたくさん学んで前に進んでいると思います」と語った。

ホームでの結果に繋げた敵地での引き分け

 守備に関していえば、遠藤が1つ興味深い話しをしていた。浦和はこの試合の前にアウェイで広州恒大と引き分けを演じている。14分間で2失点を喫したものの、その後は敵地で試合を支配し、89分に興梠慎三のゴールで同点に追い付いている。遠藤は、アウェイの試合で感じた手応えが埼玉スタジアムでの結果に繋がったと話す。

「1回アウェイで戦ってるというのは自分の中で間違いなくプラスだったと思うし、1回やってみればDFは結構特徴とかも分かるので、どんどん守りやすくなるという感じはある。アプローチの距離感だったり、相手のパスの出し方だったり、その辺は意識しながらやっていた。逆に1回やったことで、ディフェンスの方がだんだん有利になるんじゃないかなと思う」

 1度戦っている、という条件は広州恒大も同じだ。しかし、浦和は槙野も言っていたように、それまでの試合で得た経験や失敗をこの試合に活かし、ピッチ内での選手同士で細かなコミュニケーションを取ることで2戦目の結果に結びつけている。

 一方の広州恒大はそれが出来なかった、あるいは十分ではなかった。1-0という最少差スコアだが、勝敗を分けたディテールだったのではないだろうか。

西川が語るサポーターの存在

 浦和は今季、これまでの失敗を活かしながら2007年以来となるアジア制覇に向けての挑戦を続けている。「サポーターの声援が、特に後半いつもよりすごく大きいなというのは感じました」と話したのは西川。選手だけではなく、ACL優勝はサポーターにとっても大きな夢なのだ。

 思えば、今のメンバーで2007年のACL優勝をピッチで経験した選手は阿部勇樹と平川忠亮のみ、最後の決勝トーナメント進出となった2008年も含めれば梅崎司の3人しかいない。多くの選手にとって、グループステージを突破すれば浦和では初めての経験となる。

「このチームはアジアを獲ってるクラブで、サポーターもそれを経験している。逆に選手が経験していないことをサポーターは経験しているので、自分たちがアジアチャンピオンになれるように後押しをしてくれてると思うし、アウェイの中国でもたくさんの方が来てくれていたので、そういうところからのサポーターの方の気持ちというのはすごく伝わった。それに応えるのは結果しかないというのは選手も思っているので、結果が出ないときに悔しい思いをさせたこともありますけど、こうやって勝ってみんなで喜べたことは本当に良かったです」と西川は続けた。

 浦和は、次節のシドニーFC戦に敵地で勝利すれば決勝トーナメント進出の可能性がある。つまりそれは、サポーターとの冒険がまだ続くことを意味する。

 この日の埼玉スタジアムには、満開の桜が咲いていた。西川は、「充実した4月、5月にしたいですね」と笑みを浮かべた。次にホームで対戦する浦項戦が行われる頃にはその桜も散ってしまっているかもしれない。だが、赤き血のイレブンが再びアジアの舞台で大輪の花を咲かせようとする想いが散ることはない。

(取材・文:今関飛駒、取材協力:チェーザレ・ポレンギ、ダン・オロウィッツ)

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