屈指のライバル関係は続く—大阪桐蔭、履正社の”大阪決戦”から見えたもの

4月7日(金)10時8分 フルカウント

大阪桐蔭14勝で履正社6勝、対戦成績より大きく意味しているものとは…

 史上初の大阪決戦となった大阪桐蔭と履正社の第89回選抜高校野球決勝戦は、終盤に履正社が同点に追いつき、予想通りの熱戦となったが、9回に大阪桐蔭が代打・西島の2ランなどで8-3とし、大阪桐蔭の2度目の全国優勝で幕を閉じた。能力の高い2年生の力が存分に発揮されただけでなく、大阪桐蔭の底力で掴んだ栄冠だった。

 2校が府内での屈指のライバル関係であることは、今や全国的にも知られている。この選抜決勝を迎えるまで、両校の対戦成績は14勝6敗。内訳は大阪桐蔭が14勝、履正社が6勝。だが、この数字以上に大きく意味しているものがある。

 近年だけで言うと、大阪桐蔭は12年の春夏連覇に加え、14年夏にも全国制覇を遂げている。そして今春の選抜の全国優勝。ただ、この流れには共通点があった。

 14年選抜では履正社が準優勝を果たしていた。だが、この当時の履正社は前年秋、大阪大会の4回戦で大阪桐蔭と対戦し、13-1でコールド勝ちを収めている。そのため、大阪桐蔭の選手たちは一層危機感を持ち、冬場の練習の内容は実に濃いものとなっていた。春の府大会では決勝で履正社を8-5で下し、そのまま春の近畿大会に出場して優勝。その勢いで夏の甲子園を制したのだ。

 昨秋は履正社が府大会準決勝で大阪桐蔭に7-4で勝ち、近畿大会で優勝。神宮大会でも優勝し、この選抜では優勝候補の筆頭として注目されていた。そんな中、最後の最後でその履正社を倒したのが大阪桐蔭だった。

 つまり、履正社が全国大会で結果を残すと、大阪桐蔭は次の大会でそれ以上の結果を残しているのだ。

結果が出ても、立ち止まらない大阪桐蔭

 大阪桐蔭は全国から有望な選手が集まっている。だが、能力だけでは高校野球は勝負できない。常に探求心を持たせ、選手たちの心をうまく乗せる西谷浩一監督の指導もさることながら、大阪桐蔭の選手たちを見ていると、いつも思うのが意識の高さとストイックさ。この2つが重なった時の大阪桐蔭ほど怖いものはない。

 その典型だったのが12年に春夏連覇したチームだ。藤浪晋太郎(阪神)と森友哉(西武)というドラフト1位バッテリーを擁し、選抜では初戦で大谷翔平(日本ハム)率いる花巻東を下すと、浦和学院、光星学院(現八戸学院光星)などを倒して初の選抜の頂点に輝いた。今春の選抜で正捕手の岩本久重をケガで欠いたように、当時も4番の田端良基が大会中に骨折し、主砲不在という窮地に追い込まれたが、そんなハンデはまったく感じない戦いぶりだった。だが、優勝の余韻に浸る間もなく、選抜の決勝戦の夜にはすでに夏に向けてミーティングをしていた。

 当時のある選手はその理由をこう明かしてくれていた。

「選抜は優勝したとは言っても、ミスが多くて接戦続きで危ない試合ばかりだったので。満足に勝てた試合がなかったので、夏は最後まで勝ち切れる試合をしようと言い合ったんです」

 結果が出ても、決してそこで立ち止まらない。もっと相手を怯ませるほどの試合をしようと、さらに高い意識を持ったナインは、5月末から始まる強化練習でも、これまでにないメニューに取り組む。学校からバスでグラウンドに移動する間、Vジャンやグラコンを重ね着して暑さに耐えるのだ。まるでサウナスーツを着た状態のままグラウンドに到着し、すぐに通常メニューを開始。ポール間の走り込みでも、ナインの掛け声が一層大きかったのを記憶している。“これだけ練習すれば負けない”と、自身を追い込むことで動じないメンタルも鍛えられた。全部員が寮生活のため、外部の雑音はシャットアウトされ野球としか向き合えない。このストイックさが誰にも負けない、いや負けたくないという気持ちを一層強くさせるのだ。

履正社にとってこの敗戦がどちらに傾くのか

 履正社は岡田龍生監督が86年に監督に就任して1からチームを作り上げ、97年夏に甲子園初出場。06年にはセンバツに初出場を果たし、11年から4年連続でセンバツに出場するなど、大阪を代表する強豪校になった。履正社は下宿している遠方の選手を除けば、ほぼ全員が自宅通学。だが、今回の選手たちの体の大きさを見ても分かるように、徹底的な栄養管理のもと強じんな肉体を作り上げている。栄養士を招き、保護者が栄養学を学んで各家庭で栄養バランスを考えた食事を摂っている。フィジカル面を徹底的にチェックし、体重の変動なども管理。チームの伝統でもある堅守と小技のもと、堅実な野球が身上だが、近年はそのパワーで打撃力もアップ。通学時間や決められた下校時間があり、平日授業時は毎朝小テストに臨むなど練習時間にはどうしても制約がある。それでも、実戦形式の練習メニューを多くするなど今置かれた状況の中で工夫を重ねてここまで来た。

 昨夏は寺島成輝(ヤクルト)、山口裕次郎(JR東日本)と2本柱を擁して、甲子園の2回戦で優勝候補の横浜に勝ち、ベスト16に進出。今春のセンバツでは初戦で日大三を破るなど、全国区の地位を築き上げている。昨秋は岩手国体だけでなく神宮大会優勝と全国大会のタイトルも得て、着実に実績を積み上げていた。だからこそ、このセンバツでは頂点に立つことにこだわりを持っていた。

 センバツ決勝戦後、ベンチ前で涙に暮れる選手もいたが、その中で最終回まで粘り切れずに呆然としていたエースの竹田祐の姿が印象的だった。決して本調子ではなかったエースが我慢、我慢のもとマウンドに立ち続けたが、最後は力尽きた。秋からチームとして課題だった守備力は間違いなく向上していたが、履正社にとってこの敗戦がどちらに傾くのか——。今後の取り組みに“変革”はあるのだろうか。

 大阪桐蔭は厳しい戦いになるほど、“粘り”を存分に発揮する。履正社の若林将平主将も「自分たちも最後まで粘ったけれど、相手の方が上でした」と振り返った。

 夏の甲子園にはどちらか、もしくはどちらも出場できないかもしれない。「桐蔭さんだけではなく、上宮太子さんや浪商さんなど、公立高校でも力のある学校は大阪にはたくさんあります」。履正社の岡田龍生監督が大会後に口にした言葉に、今夏の大阪大会のさらなる激戦を感じる。今週末に開幕する春季大阪大会。そして夏の府大会で各校が火花を散らす中、両校の意地と粘りがどう交錯していくのか。今年の大阪の高校野球の注目ポイントは尽きない。

沢井史●文 text by Fumi Sawai

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