元人気Jリーガーが判定基準の変更説明。審判委員会の問題点とは

2025年4月8日(火)18時0分 FOOTBALL TRIBE

小林祐三氏 写真:Getty Images

Jリーグは4月4日、メディアブリーフィングを実施し、この中で、今2025シーズン混乱を生んでいるレフェリーの判定基準を巡って「誤解があった」と謝罪した。


この場でメディア対応をしたのは企画戦略ダイレクターの小林祐三氏と、Jリーグのフットボール担当執行役員を務める樋口順也氏で、ここでは他にもJリーグのU-21リーグを2026-27シーズンにメドに発足させるかどうかの進捗状況を説明するなど重要な話し合いがなされている。


しかし、なぜ判定基準に関する見解を説明する役割を任されたのが小林氏だったのか。3月18日のレフェリーブリーフィングに出席した扇谷健司審判委員長(兼JFA理事)と佐藤隆治審判マネジャーも同席し、説明責任を果たす必要があったのではないか。


ここでは、レフェリーの判定基準の問題に直面した審判委員会の対応の是非について、そのプロセスの瑕疵を考察したい。


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佐藤隆治氏(左)扇谷健司氏(右)写真:Getty Images

判定基準に関するこれまでの流れ


今季開幕直前の2月、Jリーグチェアマンの野々村芳和氏が、プレー強度の向上とAPT(アクチュアルプレーイングタイム)を増やすことを目指し、激しい接触があってもファウルでなければプレー続行を促す方針を示した。


しかしながら、突然ともいえる方針変更は現場の混乱を生み「APTを伸ばすために判定の基準が変わった」と受け止められ、サポーターや実況アナに加え、実際にプレーする選手や監督からも疑問の声が上がっていた。


3月18日に行われたレフェリーブリーフィングで、扇谷氏は「APTを伸ばすために、何か判定基準を変えたというのは一つもございません」と説明。判定基準の曖昧さによる混乱は続いた。


そして今回4日のメディアブリーフィングで、小林氏が「こちらからの説明不足により、今季のレフェリングやピッチ上の改革について、みなさんに誤解を与える表現があった。おわび申し上げます」と改めて指針を示し謝罪している。


小林氏は、世界水準と魅力的なエンターテインメントを目指していくとし、「そのためにボディーコンタクトを許容する。もう1つがAPTを伸ばす」と強調。レフェリング面の改革を達成するために「判定基準を上げる」「適切なアドバンテージを取る」「素早いリスタートを促し試合を過剰に止めない」と3つの改革点を挙げた。


特に問題とされていた「判定基準を上げる」点について小林氏は、レッドカード、イエローカードの基準はこれまでと変わらないと強調した上で、「昨年までのレフェリングの標準だと『確かに接触があるが、それは取らなくてもよくないですか』っていったものが私の現役時代の経験も含めて多々ありました。そういったものは流してプレーを続けさせましょう。それがいわゆる『判定の標準を上げる』という言葉の意味です」と説明した。


小林祐三氏(横浜F・マリノス所属時)写真:Getty Images

小林氏の役割と違和感


判定基準の説明については、現役時代、DFならばサイドバックとセンターバック、加えてボランチもこなすポリバレントさを武器に柏レイソル(2004-2010)、横浜F・マリノス(2011-2016)、サガン鳥栖(2017-2020)と渡り歩き、J通算523試合出場の記録を持つ小林氏ならではの視点ともいえる。


2021年、当時関東1部リーグのCriacao Shinjuku(クリアソン新宿)で引退し、鳥栖のスポーツダイレクターを務めた後、昨2024年10月からJリーグフットボール本部で「企画戦略ダイレクター」に就任した小林氏。鳥栖との契約満了後に「サッカー界から離れるつもりだった」と語っていたものの、“人間万事塞翁が馬”ともいうべきか、日本サッカー界の保守本流を行くような役職を与えられ、Jリーグの普及に奔走している。


しかし、このブリーフィングには拭い切れない違和感がある。


説明責任を果たす必要があったのは3月18日のレフェリーブリーフィングに出席した扇谷氏と佐藤氏だったのではないか。審判員資格もコーチライセンスもなく審判委員会とは何の関係もない小林氏に、判定基準についてメディア対応させることは職務放棄とも呼べるものではないか。


本当に謝罪し誤解を解くという目的があるのならば、扇谷氏あるいは佐藤氏が出てきて、“誤解を与える表現”とは何を指したのかをピンポイントで教えてほしいところだろう。判定基準がブレていることが問題なのに、言葉の表現のせいにしている印象である。


現役時代、人気選手だった小林氏に“汚れ役”を押し付けたのかと邪推してしまうほどだ。




扇谷健司氏 写真:Getty Images

問題の核心はぼやけたまま


ファンの不満の対象は「表現」よりも、判定基準が変わったことや審判のジャッジそのものである。にも関わらず「表現が誤解を生んだ」と弁解するのはまるで言い訳がましい小役人のようだ。「私が責任を取る」といった審判員としての自負も感じられない。


審判委員会の声明は「謝っているようで謝っていない」「問題の核心をぼやかせている」印象を与え、聞く側をモヤモヤさせただけに終わった。


現在、DAZNで配信中の『シンレポ-Jリーグ審判レポート-』には扇谷氏と小林氏が揃って出演。しかし事例として紹介したシーンは、レフェリーがファールを流したことでゴールが生まれたナイスジャッジばかりで、明らかな誤審を紹介したシーンは最後にわずか1つだ。


一昨年まで配信されていた『Jリーグジャッジリプレイ』を終わらせた上でスタートした同番組だが、扇谷氏が審判委員長の立場としての言い分を一方的に垂れ流し、小林氏もその言葉に沿った補足を語るばかりで、単なる“審判員ヨイショ番組”になり下がったことを強烈に印象付けただけだった。


おそらく審判委員長の職にある扇谷氏でさえも突然の基準変更に戸惑い、腹の中では「俺のせいじゃない」と思っているのではないだろうか。確かにシーズン直前のタイミングでトップダウン式に運用が開始されたことで弁解の余地がないわけではない。




もう2か月もすれば、欧州各国の今2024/25シーズンのリーグ戦が終了する。Jリーグが“世界基準”を本気で目指すのならば、いっそのこと欧州のトップレフェリーを30人以上連れてきて、J1からJ3まで全ての公式戦の主審を任せてみても面白いだろう。今2025シーズンがJリーグ春秋制最後のシーズンであることを考えれば、今がラストチャンスだ。

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