ハリルJに漂う“内田ロス”。W酒井が内田篤人を超えるために必要なこと

4月8日(金)10時0分 フットボールチャンネル

無失点だが、最終予選に向け守備には不安

 W杯アジア2次予選で1位突破した日本代表。最終的には無失点で終えたが、守備のレベルアップが不可欠なのは言うまでもない。最終予選、W杯に向けて改善すべきポジションの1つが右サイドバックだ。2人の酒井が担っているが、現状では十分ではない。レベルの高い戦いになった際に内田篤人の不在が大きな影響を及ぼすかもしれない。(文:元川悦子)

——————————

 7勝1分の勝ち点22、総得点27、失点0。これが日本代表の2018年ロシアW杯アジア2次予選E組の最終結果だ。アジア全体を見ても、FIFAランキングトップのイランがD組でトルクメニスタンとオマーンに2引き分け、2015年アジアカップ王者・オーストラリアもB組でヨルダンに1敗を喫しており、全勝だったのはG組を首位通過した韓国だけ。日本は隣国に次ぐ好成績を残したと言える。

 昨年6月の初戦・シンガポール戦(埼玉)をスコアレスで引き分けた時はチームに暗雲が漂ったが、ヴァイッド・ハリルホジッチ監督と選手たちの信頼関係が深まるにつれて、戦い方や選手起用に臨機応変さや自由度が増していった。

 3月に埼玉で行われたアフガニスタン・シリアのラスト2連戦では、4-4-2や4-3-3のフォーメーションにトライするなど、戦術的バリエーションを増やそうという指揮官の姿勢も強く感じられた。

 就任からずっと4-2-3-1の布陣にこだわり、固定メンバーを使い続けたアルベルト・ザッケローニ監督(現北京国安)に比べれば、ハリルホジッチ監督は柔軟性のあるマネージメントをしているのではないか。

 そんな中、前述の通り、守備陣は無失点で2次予選を終えた。だが、シリア戦のリスクマネージメントの悪さは目を覆わんばかりだった。

「カウンターをこんなに食らうのは絶対にダメですし、褒められるわけではないんですけど、勝った試合でこの課題が出たのがよかった」と本田圭佑(ミラン)は前向きに語ったが、守備陣を統率する吉田麻也(サウサンプトン)は「ラインコントロールにしても、リスクマメ—ジメントにしても、カウンターの守備に対しても、あまりにも雑な部分が多かった。僕を含めてイージーミスが多かった」と反省しきりだった。

 最終予選になれば相手が強くなるだけに、この不安定さでは何点取られるか分からない。守備陣のレベルアップは日本にとって最重要テーマの1つなのだ。

負傷で代表を離れている内田。シャルケでも欠場が続く

 最終予選も吉田や長友佑都(インテル)ら2014年ブラジルW杯経験者が守りの軸を担うだろう。が、1つ気がかりなのは、内田篤人(シャルケ)の状態である。

 2014年2月のハノーファー戦で右太ももを負傷した内田は、強行出場したブラジル大会で鬼気迫るパフォーマンスを披露。翌14−15シーズンのブンデスリーガにも出場していたが、抱えていた右ひざ負傷が悪化。

 2015年に入ってからはアジアカップ(オーストラリア)を欠場し、ハリルホジッチ体制発足直後の昨年3月のウズベキスタン戦(東京・味の素)も前半45分間ピッチに立つのが精いっぱいだった。

 その後はシャルケでも公式戦から遠ざかり、昨年6月には手術に踏み切ったものの、今季に入ってからもいまだ復帰できていない。2016年4月上旬現在も国内でリハビリを続けている模様で、今季中の公式戦出場はかなり難しくなったと言える。

 となると、6月のキリンカップでのプレーは厳しい。9月から始まる最終予選には間に合う可能性もあるが、1年半も試合から離れていた選手がシャルケでレギュラーを確保できるのか、コンディションがどうなっているのかは不透明だ。

 本人はロシアへの強い意欲を示しているが、以前のような質の高いプレーをすぐにできる保証もなく、ハリルホジッチ監督も当面は無理強いしないだろう。やはり現有戦力で右サイドバックを盤石にできるかが重要になってくるのだ。

奮闘を続ける2人の酒井だが……

 2次予選で右サイドバックを担ったのは、酒井宏樹(ハノーファー)、酒井高徳(HSV)、長友佑都(インテル)の3人。出場回数は酒井宏樹が5、酒井高徳が2、長友が1で、目下、宏樹がファーストチョイスとなっている。

 彼は今季ハノーファーでコンスタントに出場していて、走力や運動量を含めたコンディションのよさが光った。3月のアフガニスタン戦(埼玉)でチーム2点目につながるいい攻め上がりを見せた通り、攻撃に絡む回数も確かに増えてきた。

 とはいえ、最近のハノーファーでは失点の絡む場面が非常に目立つ。チーム自体が最下位に低迷し、最終ラインやボランチの構成が毎試合のように目まぐるしく変わる環境下だけに、やむを得ない部分もあるが、1対1で簡単にかわされたり、競り負けたりという個人のミスも少なくない。

 ハノーファーとの契約は今季限りで、チームが降格した場合、来季どこでプレーしているかも不透明なだけに、彼もやや不安要素があるのは事実だ。

 酒井高徳は今季移籍したHSVでシーズン当初、出場機会を得られず、11月のシンガポール・カンボジア2連戦は代表から漏れた。が、昨年末からクラブで定位置を勝ち取り、今年に入ってからコンスタントに出場。本来の躍動感と思い切りのよさが戻ってきた。

 その結果、3月2連戦では代表復帰を果たし、本田や香川真司(ドルトムント)ら主力とともにシリア戦にフル出場。「ちょっと緊張しましたけど、ピッチに立つ時に『ハンブルグでやっていることをしっかりやればいい』と自信を持っていけた。相手に的を絞らせないことをブンデスでも意識しているので、そこは考えながらやっていました」と本人も手ごたえをつかんだ様子だった。

ハリルも望む内田の復帰。重要なのは全体のレベルアップ

 確かに以前のような不安定さは見られず、守備面でも間一髪のところで体を張ったブロックを見せるなど、前進した印象は残してくれた。しかし、以前からの課題であるクロスとフィニッシュの精度はまだまだ。そこは内田に比べるとやはり見劣りする部分だ。

 宏樹・高徳ともにドイツでコンスタントに試合出場していれば、無難なプレーは十分できる。ただ、内田のような絶妙の攻守のバランスと気の利いたポジショニング、攻撃面での圧倒的な存在感はやはり示せていない。加えて世界トップクラスの国際経験値も内田には及ばない。W杯のようなハイレベルな戦いを見据えると、不安が残る。

 だからこそハリルホジッチ監督も内田に強くこだわっているのだ。2人の酒井が目の前に直面している課題をきちんとクリアしてくれれば、最終予選で内田不在問題が再燃しなくて済む。またW杯に向けての不安材料も減る。彼らが半年間で飛躍的成長を遂げてくれればいいのだが……。

 2人が物足りないとなると、右サイドに長友を回し、左に藤春廣輝(G大阪)ら新たな戦力を入れるといったイレギュラーな形を摸索する必要性も生じてくる。そうなるとチームバランスが崩れる恐れもあるだけに、やはり酒井2人に託される責任は重い。

 そこをしっかりと認識したうえで、彼らには最終予選までの時間を過ごしてもらいたい。内田が復活したときに、すぐに彼がポジションに復帰するのではなく、厳しいレギュラー争いとなる——。そうなることこそが代表全体のレベルアップにもつながるのは間違いない。

(文:元川悦子)

フットボールチャンネル

「内田篤人」をもっと詳しく

「内田篤人」のニュース

トピックス

BIGLOBE
トップへ