【コラム】「自分だけの武器を信じて結果を残す」浦和GK西川周作が仙台戦で示した“ぶれない信念”

4月8日(土)12時0分 サッカーキング

仙台戦で今季J1初完封を達成した西川 [写真]=J.LEAGUE PHOTOS

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 ミネラルウオーターの入ったペットボトルを携えながら、浦和レッズの守護神・西川周作は試合後の取材エリアに姿を現した。

「今から水分をしっかりと取って、次へ向けて準備しています。これから夏へ向けて、運動量というものも本当に大事になってくるので」

 ベガルタ仙台を埼玉スタジアムに迎えた、8日の2017明治安田生命J1リーグ第6節。浦和はクラブ史上最多タイとなる大量7ゴールをもぎ取り、守っては6戦目を迎えたリーグ戦で初めて完封劇を達成。暫定ながら初めて首位に立った。

 公式戦を含めても2月21日のAFCチャンピオンズリーグ(ACL)のグループリーグ初戦、対ウェスタン・シドニー・ワンダラーズFC戦に次ぐ2度目の無失点。長いトンネルを抜け出した、という思いを募らせていたからだろう。西川は安ど感を漂わせながら「やっとですね」と笑顔を浮かべた。

「キーパーは失点した後、ミスをした後の立ち居振る舞いが大事になってくる。僕の耳にもいろいろな言葉が入ってきたけど、それは期待されているからこそだと思っていたので」

 仙台戦が始まる前の時点で、公式戦9試合で15失点を喫していた。日本代表のヴァイッド・ハリルホジッチ監督からは「コンディションが上がってくるのはもう少し先のようだ」と指摘され、2018 FIFAワールドカップロシア アジア2次予選から守ってきたゴールマウスを、UAE(アラブ首長国連邦)、タイ両代表と戦った3月シリーズから川島永嗣(FCメス)に明け渡した。

「キーパーはまず守ることが一番大事だということは、自分でもよく分かっています。ただ、自分にしかできないこともある。自分が一番やってはいけないのは、今まで積み重ねてきたものを簡単に無駄にしてしまうこと。継続してきたことをぶれずに続ける、と自分に落ち着いて言い聞かせながら、その中でトライした末のミスは自分の財産になっているので」

 西川にあって他のキーパーにない武器。一つは卓越した足元の技術となる。トラップとキックに絶対の自信を持つからこそ、マイボール時にはペナルティーエリアを大きく飛び出してポジションを取る。今シーズンは平均でさらに5メートルほど前方、時にはセンターサークル付近に位置することも珍しくない。

「ボールを持っていない時の自分は、常にフィールドプレーヤーの一員としてポジショニングを考えています。チーム全体のラインが高くなっている分、自分が押し上げた時には背後も空くので、そのスペースを埋めるためにも常に動いていないといけない」

 敵陣で試合を進める時間を多くするために、浦和はチーム全体をより前方へスライドさせる新戦術にトライしている。上下左右に動き回る分、必然的に西川の運動量も増える。1試合におけるGKの走行距離は3km台から4kmの中盤が多いが、西川は6試合すべてで5kmを超え、ヴァンフォーレ甲府との第3節では6.108kmと驚異的な数字を弾き出している。

1試合で5km超えを3度記録した日本人GKは他にいない。仙台戦の5.565kmを含めて、平均でリーグ最長の5.554kmを走っているからこそ水分も失われる。11日には敵地で3失点を喫して苦杯をなめた、上海上港(中国)をホームに迎えるACLの大一番が待つ。ダメージを少しでも早く回復させるために、冒頭のようにこまめに水分を補給してコンディションを整えているわけだ。

 リードを6点に広げた70分にはもう一つの武器、伝家の宝刀も抜いた。バックパスに迷うことなく左足を一閃。左サイドからゴール前へ飛び出してきたMF菊池大介にはわずかに合わなかったものの、低く鋭いフィードがスタンドをどよめかせた。

「あれは他のキーパーにはできない、自分が見せていかなければいけない武器。ああいうプレーを増やしていくためにも、ボールをもらう位置が常に高くないといけない。今日もピッチの横幅を上手く使いながらパス回しができましたけど、ビルドアップで繋ぐだけでもダメだと思うので。縦へのパスを常に狙いながら、相手の嫌がることをしようと考えていました」

 タイ戦を終えて浦和に戻る車中で、ともに出場機会のなかったDF槙野智章と誓いを立てた。招集期間中は浦和の失点の多さを「常に言われていました」と槙野は続ける。

「やっぱりクラブで結果を残さなきゃいけない、特に守備の部分、失点のところに対してはもっと突き詰めていかないといけないと2人で話しました」

 方向性は決して間違っていない。ただ、新たな戦い方が成熟し切っていない部分や西川自身のミスもあって、画竜点睛を欠く状況を積み重ねてきた。GKというポジションの宿命上、失点はどうしても強調される。昨シーズンはリーグ最少の28失点で年間勝ち点1位を勝ち取っただけに、なおさら比較される。

 それらをすべて受け入れた上で、西川は無失点にこだわりながら仙台戦に臨んだ。前半だけでハットトリックを達成したFW興梠慎三を筆頭に、味方がゴールする度に雄叫びをあげては、大量リードに気が緩まないように自らへ喝を入れ続けた。

「キーパーが言われないようにするには結果で示すしかない。結果がチームでの活躍の延長線上にある代表への一番のアピールにもなる。今日の結果には誰一人として満足していないし、これを継続していくのが一番難しい。そこにトライしていけることに喜びを感じながら、これからもやっていきたい」

 代表で忸怩たる思いを抱いている時も、浦和で失点を重ねている時も、西川は努めて笑顔を絶やさないようにしていた。ファイティングポーズを取り続ける先に必ず道は開ける。その象徴となる笑みを自然と生み出す強靭なメンタルもまた、西川の武器の一つと言っていい。

文=藤江直人

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