角居勝彦調教師 桜花賞はスピード能力不可欠

4月8日(土)16時0分 NEWSポストセブン

角居調教師が桜花賞の見どころを語る

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 いよいよ春の3歳クラシック戦線がスタート。競馬ファンのみならず、厩舎関係者にとっても待ちに待った季節の到来だ。週刊ポスト連載をベースに、馬育成の裏話、調教のもくろみ、GIレースのそれぞれの特徴などがたっぷり詰まっている新刊『競馬感性の法則』(小学館新書)を上梓した調教師・角居勝彦氏が、今年の桜花賞のみどころについて語った。


「3歳クラシックは、競走生活が決して長くないサラブレッドにとって、生涯ただ一度しか出られない晴れ舞台。わずか18頭しかゲートインできないレースです。


 とくに桜花賞は選ばれた牝馬たちを桜が見守ってくれる。雰囲気が華やかで晴れやかです。


 まず舞台がいい。阪神の芝のマイル戦はしっかりと力比べができる。馬場は洋芝が混じっていて重く、フロックで勝つ余地が大きくない。いずれ繁殖牝馬として牧場に箔を付けて返す意味でも、調教師としてはぜひとも取りたいレースです」(角居師。以下同じ)


 今年から大阪杯がGIに昇格したため、春のGIシリーズは高松宮記念からすでにスタートしているが、やはり「春本番」といえば桜花賞・皐月賞の3歳クラシック初戦だ。過去幾多の名馬がここで輝きを放ち、歴史に残る名馬となっていった。


 角居厩舎で名馬といえばウオッカ。牝馬ながら日本ダービーを勝つなど競馬ファンならずともその名を知っているGI7勝の名牝だが、2007年の桜花賞では、単勝1.4倍の1番人気に支持されながら2着に敗れている。


「その2年前には、日米オークスを制したシーザリオも出走させていますが、やはり跳ね返されました(2着)。2008年は2歳牝馬チャンピオンになったトールポピーも8着でした。いずれも1番人気。それだけに、どこか片思い(?)のような感慨があるんです」


 以後、桜花賞には出走馬すらなかったが、今年はディープインパクト産駒のサロニカで9年ぶりに挑戦する(枠順確定後に左後肢ハ行で出走取消)。去年12月のデビュー戦(阪神1600メートル 川田将雅騎手)で強い勝ち方をし、1月の白梅賞で3着(M・デムーロ騎手)だったものの、2月のオープン、エルフィンSで快勝(福永祐一騎手)。しっかり賞金を積み上げてきた。


「いずれも、13、10、10頭立てと少頭数でした。それでも本番で18頭立てになっても気にならない。スタートが上手く、スムーズに前に行けるタイプなので、他の馬に絡まれにくいんですね。


 走りも素軽く、使いすぎていない感じがいいわけですが、あまり使えなかったのが実情です。この時期の牝馬の特徴であるテンションの高さを気にしました。少し神経質。高いテンションを競馬まで我慢させることが調教の要諦です。桜花賞を制するにはもちろんスピード能力が不可欠ですが、馬のテンションをいかにコントロールできるかが大事です」


 今年の桜花賞は、昨年12月に阪神ジュベナイルフィリーズを制して最優秀2歳牝馬に選ばれたソウルスターリングに人気が集中しそうだ。3月4日に行なわれたトライアルのチューリップ賞も圧勝し、4戦4勝で臨んでくる。


 ソウルスターリングは、角居師が開業前に師事した藤沢和雄厩舎の管理馬。英国で14戦14勝、GI 10勝と圧倒的な強さを誇ったフランケルの初年度産駒。母親もヴェルメイユ賞など欧米でGI6勝を挙げている。


「ヨーロッパ血統の馬は本来日本の軽い馬場には合わないという感覚だったのですが、それが1600メートルで強い勝ち方をした。速い流れでも遅い流れでも競馬ができている。負かす要素がなくなっているという感じがします」


 とはいえ、あのウオッカでも勝てなかった桜花賞。何が起こるかはわからない。


「有力馬が何頭もいる混戦だと、まず目標をどの馬に絞っていくかと考えて作戦が複雑化します。その点、1強というのは実は作戦が立てやすい。その馬をどうやって負かすかを考えればいいわけですからね。どの陣営でもそう思っているはずです。


 中心になる強い馬がいたほうがレースは盛り上がりますね。ファンにとっても、レースの面白さが絞り込めます。


 ただし、それほど思い切ったことはできません。前述のように桜花賞は力比べの舞台です。しっかりと調教をして、高いテンションをレースで爆発させる。対策というのはそういう意味です」


 他の有力馬はクイーンカップを勝った4戦3勝のアドマイヤミヤビ。この馬は3走目の百日草特別で、皐月賞の有力馬カデナやアウトライアーズを破っている。またトライアルのフィリーズレビューを快勝したカラクレナイや、ソウルスターリングと同じフランケル産駒のミスエルテなども底が割れていない。チューリップ賞で3着だったリスグラシューの巻き返しも怖い。


 サロニカは伏兵としての位置づけだが、有利なデータとしては血統。桜花賞はディープインパクト産駒が初年度産駒を世に送り出した2011年から4連勝。昨年、一昨年も2着を確保している。


「桜花賞を勝つと、ほんとうに強い馬だと思えます。もちろんオークスもとりたいけれど、やはり牝馬はマイルを勝てるスピードが魅力です」


●すみい・かつひこ/1964年石川県生まれ。中尾謙太郎厩舎、松田国英厩舎の調教助手を経て2000年に調教師免許取得。2001年に開業、以後15年で中央GI勝利数23は歴代3位、現役では2位。ヴィクトワールピサでドバイワールドカップ、シーザリオでアメリカンオークスを勝つなど海外でも活躍。引退馬のセカンドキャリア支援、障害者乗馬などにも尽力している。引退した管理馬はほかにカネヒキリ、ウオッカ、エピファネイア、サンビスタなど。


※週刊ポスト2017年4月14日号

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