度会隆輝が“タダモノ”ではない理由 頭部への死球も恐れない黄金新人の素顔「怖いって言っていたら打てない」

2024年4月9日(火)7時0分 ココカラネクスト

開幕から即戦力として結果を残し続けている度会。その意識の高さは稀有だ。(C)産経新聞社

 人は陰と陽の両面を持ち合わせているのが普通だ。「結果」を常に求められる、シビアな世界に身を置くプロ野球選手は、特にその要素が強いと思われる。

 張り詰めた空気がどことなく漂う選手が多いなか、異彩を放つのが度会隆輝だ。「社会人No.1野手」の評価を受け、昨秋に3球団競合の末、横浜DeNAベイスターズにドラフト1位で入団したルーキーは、アマチュア時代から不変の姿勢を貫いてきた。

【動画】これはエグイ!DeNAドラ1ルーキー、度会が放った開幕戦アーチの場面

 社会人の名門ENEOSの一員として最後の戦いとなった日本選手権では、「見てくださっている方々を笑顔にできるように、勇気を与えられるようにすることが自分の一番の目標であり夢でもあるので」と語り、「今日で言えばホームランを打てたとき喜んでくれている歓声は、めちゃくちゃ嬉しいです。そういったことのために野球をやっているんだなと思っているので」と、アマチュア時代から視野を広く保ち、高い目標を掲げていた。

 それを可能にするのは、度会自身の図抜けたコミュニケーション力にある。一昨年のドラフト1位・松尾汐恩には、初対面で「ヘーイ!シオン!」とフランクすぎる挨拶。年下ながらプロでは先輩の松尾も「正直ビビりました」と回想するほどだったが「嫌な感じはしなかったですね」と笑う。一気に距離を縮めてくるスタイルでも憎まれないキャラクターは、生まれ持った才能と言っても過言ではなさそうだ。

 プロのユニフォームで厳しい練習に励んでいた沖縄での春季キャンプに入ってからも、青い海を見て「メッチャ海!」とハイテンションになると「耳元から平井大が流れてきて。気分良くなりました」と思わず熱唱するなど、疲れがあっても素直に楽しさを表現した。

 かつてヤクルトでプレーしていた度会の父・博文さんと現役時代から交流がある鈴木尚典打撃コーチも「小さいときから変わらないですね。野球少年がそのまま今の姿になっている」と証言。こうした周囲の反応からも純粋無垢のまま、21歳の年を迎えていることが伺える。

 また注目度が高いため、常にマスコミに追いかけられているが、度会は「取材をしていただけるのはありがたいこと。皆さんに期待してもらえていることも当たり前ではないので、取材してもらえている以上は元気だしてハキハキ答えるのが常識と思っています。野球を頑張った中で、取材対応も頑張るべきだと思っています」とキッパリ言い切る。周りは“神対応”と持ち上げるが、本人にとっては通常運転。

 連続安打の途切れたオープン戦後、家族が本人の帰りを待つ中でも足を止め、新人として異例の個人応援歌に対し、「嬉しいです!それに恥じないような活躍をしなければ」と決意を口にするなど、サービス精神もプロ意識の高さもピカイチだ。

タダモノではないと周知させたのは心の強さ

 実戦に入ると、オープン戦で唯一の打率4割超えで首位打者を獲得。明るいキャラクターとともにプレー面にも話題は集中。そうしたなかで、三浦大輔監督も「初見のピッチャーでも対応できる」と即戦力としての実力を認め、度会は開幕から1番ライトの座を掴んだ。

 レギュラーシーズンが始まっても度会旋風は続いた。開幕戦で同点3ランを放っていきなりヒーローとなるド派手なデビューを飾ると、2戦目でも4安打の固め打ちで連日お立ち台に立って「最高でぇす!」と連呼。横浜スタジアムを埋めたベイスターズ・ファンはもちろん、全国の野球ファンにもその名を轟かせてみせた。

 バットコントロールに長打力、脚力までも披露した開幕カードだったが、もう一つ、度会がタダモノではないと周知させたのは、心の強さだ。

 第2戦目の初打席では、ストレートが頭部を直撃。その場に倒れ込み球場全体が静まり返るなかでプレーを続行した度会は、臆せず二盗を成功。その後はあわやサイクルヒットと躍動した。

 そこには「ちょっとの怪我であったりするのならばだったら、休んでいる暇はないので。 全力プレーでチームに貢献するって言ってる以上は、自分は身体がボロボロになってまでやらなきゃダメな立場なんで。そこはちょっとの痛みであるなら出続けたい」と、本人の強いポリシーがあった。

 ビーンボールに対しての恐怖心も「特に思ったことはないですね。やってやるぞって気持ちが逆にどんどん出るのかなと思います」とかえって燃えると言い切る。「打席に立ってる以上は、怖いって言っていたら打てないと思うんで。苦手な球をどれだけ作らないかが、今後の結果に繋がると思ってるんで」と、ここでも高い志を覗かせている。

 また、同時に「もちろんピッチャーの方も全力プレーをやってる中でのデッドボールなので仕方ないこと。次回以降にまた戦える機会があったら、また真剣勝負ができたらいいなと思います」と相手を気遣う一面も見せた。

“強くなければ生きていけない”世界で、“優しくなければ生きていく資格はない”ことも重々承知している点は、スケールの大きさをも持ち合わせている証拠だろう。

 2カード目の阪神戦ではノーヒットに終わったが、内野ゴロで全力疾走後にヘッドスライディングを見せるなどファイティングポーズを取り続けた。東京ドームに場所を移しての巨人戦では、今季空振りのなかった宮﨑敏郎のバットが空を切る戸郷翔征のフォークを捉えて2安打1打点で勝利に貢献。これも自分を信じ続けるポジティブシンキングの成せる技だろう。

 ここまでは有言実行でプロの道を突き進んでいるゴールデンルーキー。指揮官も「やっぱ想像を超えていく選手ですよね。いずれ壁にはぶち当たると思いますけど、もしかしたら隆輝にとっては大した壁にならないかもしれない」と規格外のポテンシャルに驚きを隠さない。

 この男なら「新人王と、三浦監督を胴上げできるように」という目標を、あっさりと達成してしまっても、不思議はない。

[取材・文/萩原孝弘]

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