湘南ベルマーレ、3連敗で早くもJ2降格圏。広島戦で窺えた守備の緩み

2024年4月9日(火)16時0分 FOOTBALL TRIBE

福田翔生(左)ルキアン(右)写真:Getty Images

2024明治安田J1リーグ第7節の全10試合が、4月6日と7日に各地で行われた。湘南ベルマーレは7日、敵地エディオンピースウイング広島でサンフレッチェ広島と対戦。最終スコア0-2で敗れ、リーグ戦3連敗を喫している。


今2024シーズンの同リーグ7試合消化時点で、1勝2分け4敗。湘南は早くもJ2リーグ降格圏の18位に沈んでいる。この7試合でクリーンシート(無失点試合)がゼロ、総失点数も14にまでかさむなど、同クラブの守備は崩壊状態だ。


湘南の守備が安定しない原因は何か。ここでは第7節広島戦を振り返るとともに、この点について検証・論評する。




サンフレッチェ広島vs湘南ベルマーレ、先発メンバー

[3-1-4-2]で戦った湘南


[4-4-2]と[3-1-4-2](自陣撤退時[5-3-2])。この2つの布陣を使い分けている湘南の山口智監督は、広島相手に後者を選んだ。


基本布陣[3-4-2-1]の広島両ウイングバック(DF新井直人とMF東俊希)が自陣後方タッチライン際に立ち、パスワークに関わったため、湘南としてはハイプレスを仕掛けやすい状況に。ルキアンと福田翔生の両FW(2トップ)、これに加え平岡大陽と池田昌生の両MFどちらか一方の計3人で広島3バックに睨みをきかせ、ホームチームのパスワークをサイドへ誘導。タッチライン際で強烈な守備を仕掛ける作戦が、キックオフ直後は功を奏した。


攻撃面ではロングパスを多用し、広島のハイプレスを回避。敵陣サイドへロングパスを送り、ここへルキアンや福田を走らせると、これに湘南の他の選手も呼応する。チーム全体としてルキアンや福田をサポートする姿勢が旺盛で、これにより湘南は厚みのある攻撃を繰り出せていた。


前半14分には湘南DF畑大雅のロングパスが広島最終ラインの背後へ落ち、これにルキアンが反応。相手GK大迫敬介と1対1になりかけたが、広島DF中野就斗による間一髪の守備に阻まれ、シュートまで持ち込めなかった。




ルキアン 写真:Getty Images

前半途中までだったハイプレスの効き目


試合序盤は湘南のハイプレスが機能したものの、前半16分の広島の攻撃シーンを境に雲行きが怪しくなった。


ここでは湘南が広島のパスワークを右サイドへ追いやったが、広島の左ウイングバック東がワンタッチでボールを捌いたため、湘南DF岡本拓也(右ウイングバック)の寄せが間に合わず。これと同時に中央からタッチライン際へ移動した広島FW満田誠(2シャドーの一角)も捕捉できておらず、湘南は同選手を経由するパスワークを許してしまった。


満田が適宜サイドへ流れたほか、湘南MF田中聡(中盤の底)の周辺スペースを広島MF松本泰志やFW加藤陸次樹も狙い始めたため、前半途中からアウェイチームのハイプレスが機能不全に。頻繁に立ち位置を変えパスレシーブを試みる満田、松本、加藤を誰が捕捉するのか。この点がしだいに曖昧になり、ハイプレスの効き目が切れた湘南は試合の主導権を握りきれず。これが後半に尾を引く形となった。




ソン・ボムグン 写真:Getty Images

GKソンの退場で苦境に


迎えた後半3分、加藤が湘南最終ラインの背後へパスを送り、これに広島FW大橋祐紀が反応。湘南MF鈴木雄斗(センターバック)のスライディングが届かなかったうえ、GKソン・ボムグンも捕球できず。ソンと大橋がペナルティエリア内で交錯したことで、広島にPKが与えられた。


大橋を倒したソンのプレーが決定的な得点機会の阻止と見なされ、同選手にはレッドカードが提示される。昨年まで湘南に在籍した大橋にこのPKを物にされ、アウェイチームは1点ビハインドのうえ10人という苦境に陥った。


退場者を出した湘南は、[4-4-1]の布陣で反撃を試みる。後半42分、GK馬渡洋樹のロングパスを敵陣右サイドで受けたルキアンが、そのままペナルティエリア右隅へ侵入。ここから強烈なシュートを放ったが、広島GK大迫の好セーブに阻まれた。


同43分には、途中出場の湘南FW石井久継が左サイドからのドリブルでシュートを放つも、これは惜しくもクロスバーの上を通過。湘南の未来を担うであろう18歳FWが自軍に活力をもたらしたが、同点ゴールには至らなかった。


湘南は後半アディショナルタイムに浴びた速攻から大橋にゴールを奪われ、万事休す。今季リーグ戦無敗の広島相手に勝ち点を挙げるには、詰めが甘かった。


中央封鎖、及びサイドへの追い込み守備の一例。パスがサイドへ出たら、サイドバックが相手チームのサイドの選手を捕捉。これと同時に4バックもボールサイドへスライド

広島戦で採用したかった[4-4-2]


これは筆者の見解となるが、湘南はこの試合で[4-4-2]の布陣を敷いたほうが、広島MF川村拓夢や満田、松本、加藤の4人を捕捉しやすかったかもしれない。相手3バックのうちボールサイドの2名を湘南の2トップが捕捉し、相手チームのパスワークを片方のサイドへ誘導。湘南の中盤4人が川村、満田、松本、加藤をマンツーマンで捕まえたうえで、湘南のサイドバックが相手ウイングバックに寄せれば、追い込み漁に近いハイプレスが成立する。湘南は今季から[4-4-2]にトライしていただけに、この布陣でのハイプレスを広島戦で見たかった。




福田翔生 写真:Getty Images

C大阪戦でも窺えた湘南の守備の甘さ


守備の設計が甘く、相手GKや最終ラインからのパス回し(ビルドアップ)を止めきれない。この湘南の問題点は第5節セレッソ大阪戦(0-2で敗北)でも窺えた。


この試合の前半21分、基本布陣[4-1-2-3]のC大阪はDF登里享平(左サイドバック)がタッチライン際から内側へ立ち位置を移し、[3-2-4-1]に近い配置でビルドアップ開始。これに対し基本布陣[4-4-2]の湘南2トップがC大阪MF田中駿汰(中盤の底)へのパスコースを塞ぎ、中央封鎖を試みたが、登里をマークする選手がいなかったためここへパスが繋がってしまう。直後の登里のパスが繋がらず事なきを得たが、ピンチに直結してもおかしくない場面だった。


ここでも湘南が[4-4-2]の布陣を基調とする前述の守備をしていれば、こうした事態は防げたはず。守備の設計、具体的に言えばハイプレスの段取りの見直しは急務であり、これができなければJ1残留は覚束ないだろう。

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