【英国人の視点】武藤がチェルシー移籍を決断すべき理由。スクープ記者が見る、“若手ではない22歳”の未来

4月10日(金)10時56分 フットボールチャンネル

理解できるファンからの懐疑的な声

 武藤嘉紀を獲得するというオファーがチェルシーからあったことをFC東京が認めた。様々な反応があったが、果たして武藤はビッグクラブへの移籍をすべきなのか。移籍情報をスクープした英国人記者が論じる。

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 チェルシーとFC東京が武藤嘉紀の移籍で合意に達したと聞いたとき、日本サッカーを評論している私でも驚いたと言わざるを得ない。

 プロの世界に信じられないほど迅速に適応した武藤は、疑いようのないすぐれた才能を持つ選手だ。しかし、中位のJリーグクラブからプレミアリーグ次期王者への飛躍は頻繁に起こるようなことではない。

 私がこの移籍情報リークしたものは信用できる情報筋からだったが、この話の妥当性を疑う理由はなかった。そのため、フットボールチャンネルにこのニュース(http://www.footballchannel.jp/2015/04/06/post81156/
)を掲載した。この移籍の噂を広めることは、個人や仕事としての興味本位ではなく、報道する価値があるものだと感じたからだ。

 記事に対する全般的な反応は、予想通り疑惑と否定の声が多く聞かれた。武藤は少し前まで大学に通い、昨年Jリーグにデビューしたばかりの選手である。“エイプリルフール”もしくは“エイプリルフールネタに引っかかった”という反応には少し戸惑ったが、スクープを狙うフットボールジャーナリストの記事が必ずしも実現するわけではなく、人々が懐疑的になったとしても不思議ではない。

 私の記事が掲載されて3日後、FC東京は公式発表を行い、移籍に関する話題は大きな反響を呼んだ。

スポンサーからの要求。本当か?

 日本人選手が欧州へ移籍するときには必ず騒ぎが起こる。しかし、今回はチェルシーだ。現代のフットボール界で最も成功を収めている金満クラブの一つと日本サッカー界の新しい象徴が契約すること以上に大きなことはない。

 もちろん、「武藤がロンドンへ移ってもプレーできない」または「移籍が実現したとしてもクラブの市場戦略が主な理由だろう」、という皮肉的な見方はある。しかし、恐れていることが完全に解消されていない一方で、この移籍にただ抗議することは少し単純すぎやしないだろうか。

 横浜ゴムがチェルシーに日本人選手と契約するよう働きかけたという考えは、スポンサーが持つ影響力を買いかぶりすぎているかもしれない。サムスンは長期間にわたってスタンフォード・ブリッジのクラブと契約をかわしてきたが、その間にブルーのユニフォームを身に着けた韓国人選手は何人いただろう。

 選手自身にとっては、武藤がこの件について深く考えるための時間が必要なのは理解できる。ピッチ内のプレーよりも競技場外での重圧や注目がまさることが多い日本でのプロ生活に適応している段階であり、世界で最も高い階層に位置するクラブへ移籍することは完全に別次元のレベルに上がることを意味する。

 しかしながら、日本の多くの人々が移籍の実現性に対してかなり否定的な反応を示していることは少し奇妙なことである。

 ある意味、これは日本のフットボール文化の発展にポジティブな要素を生む。ファンは国内のベストプレーヤーたちが欧州のクラブへただ移籍するだけでは満足せず、規則的にプレーする姿を望んでいる。

前例と武藤は関係ない。自分の能力を信じるべき22歳という年齢

 フットボールのキャリアは慎重に考え抜いたうえで一歩ずつ着実に先に進まねばならないという考えは、実際には何も裏付けもない(例えば、オランダやドイツを経由して、という考えだ)。

 選手がどのようにトップで成功するかに規定のルールはなく、より大きな成果を得ることを望むなかで中心から離れた小さな移籍を選ぶことは、実を結ばない。時にはリスクを冒さなければならないし、自分の能力を信じなければならない。

 武藤はプロとしてプレーを始めたばかりかもしれないが、すでに22歳だ。まだ22歳ではなく、もう22歳である。フットボールの世界では、とても若い年齢というわけではない。例えば、今後彼のチームメートになる可能性があるオスカールは、20歳の時に移籍金1900万ポンド(約33億7000万円)でチェルシーとサインした。

 武藤は才能がある選手であり、どこへ行っても聡明な人間だと聞く。私も取材を通じてそう感じる。出生証明書に書かれた生年月日は無関係であり、ピッチ上で何に貢献できるかだけが大事なのである。

 もし武藤がその中に飛び込むことを決断し、ロンドンへ移籍すれば、もちろんジョゼ・モウリーニョの下で彼自身の価値を証明しなければならないし、欧州の他のリーグにある提携クラブの一つにローンされるようになるかもしれない。

 しかし、移籍は彼に快適と感じる場所以外での生活に適応できる能力を身につけられる機会を与える。他の選手が武藤と似たような状況でチェルシーのレギュラーを掴めなかったことが、彼も同じ運命を辿り、不幸な状況に陥ることは意味しない。

 選手は自分が感じたままに決断を下すことがベストである。これは非常に大きなチャンスであり、キャリアの中で一度きりの機会かもしれないのだ。

フットボールチャンネル

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