批判続くレアル10番。“現地報道”は正しいのか? 自らの目で見るべきハメスの奮起と献身性

4月10日(日)10時1分 フットボールチャンネル

W杯で一躍スターダムにのし上がるも…

 試合開始から5分後、ゴールまで得たFKのチャンス。背番号10の振り抜く左足から放たれたシュートは、壁の間とGKの指先を抜けてゴールラインを割った。

 2014年ブラジルW杯、対戦国にその能力を見せつけて一躍世界の中心人物へと名乗りを上げたハメス・ロドリゲス。遠く離れている上にW杯では煮え湯を飲まされた日本においても、妻の存在が報じられ、アイドルグループのメンバーが好きな人物として名前を挙げ、テレビCMにまで起用されるほど人気を高めた。

 ブラジルW杯が終わると100億円を超える移籍金でレアル・マドリーに加入。W杯の1年前にはポルトからモナコへ4500万ユーロ(約55億円)で移籍しており、わずか2年で150億円を超える金額を動かしたということになる。

 マドリーでの加入1年目はカルロ・アンチェロッティ監督のもとで、その力を発揮。リーガ29試合出場で13ゴール13アシストを記録した。指揮官がラファエル・ベニテスに代わった今季も、ベティスとの第2節で角度のない位置から決めた直接FKとバイシクルシュートという高次元の2得点を披露した。

 ハメス・ロドリゲスの物語はさらなるハイライトを迎えると誰もが思い、本人も信じていたはずだった。

 しかし、ベティス戦後は負傷により長期離脱。復帰後は監督問題に揺れるチーム内で力を発揮しきれない状態が続いた。さらに追い討ちをかけたのがラファエル・ベニテスからジネディーヌ・ジダンへの監督交代だった。

 ジダンは中盤にトップ下ではなくアンカーを置いた4-1-2-3を採用。2枚のインサイドハーフはモドリッチ、クロースをメインに据え、ウイングはクリスティアーノ・ロナウドとベイル。ハメスは居場所を失ってしまった。

鋭い直接FKに守備での貢献も

 そして繰り返されるネガティブな報道。ピッチでのパフォーマンスに加えてプロとしての姿勢やプライベートな部分までを批判的に報じられている状況が続き、現在では1年半前とは180度異なる「放出要員」として注目を集めている。

 そんな中で迎えたリーガエスパニョーラ第32節、ホームのサンチャゴ・ベルナベウにエイバルを迎えたレアル・マドリーのジダン監督は、インサイドハーフの一角にハメスを起用した。

 ベイルもモドリッチもクロースもマルセロもGKのケイラー・ナバスさえも温存された一戦での起用は、改めてハメスを“ローテーションメンバー”としていることの裏返しとも考えられるが、本人にとっては喚く周囲に自らの力を示す絶好の機会ともいえる。

 そして試合開始から5分後、訪れたペナルティエリア手前でのFKの場面で鋭いシュートを放ち先制点を叩き出す。

 その後も中盤で精力的なプレーを見せるハメス。攻撃面では同じくポジション争いに苦しみ放出要員とされるイスコに次いで2位となる87回のボールタッチと62本のパスを出し、クリスティアーノ・ロナウドと並んでチームトップとなる3回のチャンスを作り出す。

 さらに守備の面では両チームトップとなる10回のタックルを繰り出すなど攻守においてチームに貢献。4-0と快勝したマドリーにおいて、データサイト『Who Scored.com』は9.01点を付けてマン・オブ・ザ・マッチに選出した。

繰り返されるネガティブ報道を信じるべきか

 もちろん、これだけの活躍が出来た要因には相手がエイバルだったことも挙げられる。エイバルというクラブは「キックオフの笛から全力で前へ攻める」というスタイルを貫いており、それはエイバルの街に根付くアイデンティティにもつながっているという。

 元来、マドリーはカウンターを主とするチームであり、クリスティアーノ・ロナウドら攻撃陣は長い距離のランニングから得点を奪うことを得意としている。エイバルというチームはマドリーにとって自らの武器を発揮しやすい相手だった。

 ただ、そういった事情を抜きにしても、この日のハメスのパフォーマンスは多くの批判を否定するのに充分なものだった。むしろ、計10回のタックルのうち6回は後半に記録している。格下と見られるチームを相手に、前半で4点を奪った後であれば手を抜いてもおかしくない場面で、ハメスはより守備への意識を高めてプレーしていた。

 この試合でのパフォーマンスをジダンがどう評価するかはわからない。また、純粋なポジション争いの末に出場機会が限られるならば自らのキャリアのためにも移籍を決断することも悪いことではない。

 日本では、『地元紙によると』という報道形態が蔓延し、良いことも悪いことも「現地メディアが伝えているから正しい」という考え方が根強い。しかし、スペインで行われる試合もリアルタイムで手軽に観戦できる時代だからこそ、自らの目で見て自らの意見でチームや選手を語らなければならない時代が来ているはずだ。

(文:海老沢純一)

【了】

フットボールチャンネル

レアルをもっと詳しく

BIGLOBE
トップへ