ミランの未来は明るい!? 有望な若手が揃う理由。高齢化脱却に成功した身も蓋もない事情

4月10日(月)12時35分 フットボールチャンネル

今季は若手選手が躍動。クラブの生え抜きもトップチームに定着

 現在セリエAで6位と苦しむミラン。しかし、近年は将来有望な若手選手が多くブレイクしており、現地時間10日に行われたパレルモ戦でも20代前半の選手が勝利をもたらす活躍を見せた。数年前は高齢化が問題視されていたミランだが、なぜ若返りに成功することができたのだろうか。(取材・文:神尾光臣【ミラノ】)

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 9日に行われたミランvsパレルモの一戦は、ミランの今シーズンを象徴するかのように若手が躍動した一戦だった。

 前半6分、直接FKをいきなり突き刺したのは、筋肉系の故障による1ヶ月間の戦線離脱から復帰した23歳のスソ。そのスソの右クロスをファーで押し込み2点目を決めたのは、22歳のマリオ・パザリッチ。さらに試合を決定づける3点目は、20歳の右サイドバックであるダビデ・カラブリアが演出。今シーズンはケガに苦しんだが、シーズン終盤で活躍の場を得た。

 縦への爆発的なスピードで数々のチャンスを作り、駄目押しの4点目を決めた途中加入のジェラール・デウロフェウも23歳。この日のゲームキャプテンは24歳のマッティア・デ・シーリオが務め、後方では22歳のアレッシオ・ロマニョーリが守備を固める。この日は下位に低迷するパレルモが低調だっただけに見せ場は少なかったが、GKジャンルイジ・ドンナルンマは先日に18歳を迎えたばかり。最近はベンチスタートも多くなったが、19歳のMFマヌエル・ロカテッリの台頭も今シーズンのニュースだった。

 控え選手も含めた出場14人の平均年齢は24.92歳。2〜3シーズン前は平均27歳を超えることもざらで、むしろ選手の高齢化ばかりが問題となっていたから、当時を考えれば見事なまでの変革ぶりである。

 そして上で列挙した選手のうちカラブリア、デ・シーリオ、ドンナルンマ、ロカテッリはクラブの生え抜きだ。トップチームで1度でもデビューさせれば成功といわれる下部組織の選手を、これだけ主力に定着させることができたのは、間違いなくクラブとして大成功だと言える。

 もっとも歴史を振り返れば、ミランの下部組織は決してここ1〜2年で躍進したわけではない。むしろ優秀な人材を輩出する機関としては優秀な方だった。フランコ・バレージやアレッサンドロ・コスタクルタ、またパオロ・マルディーニなど、かつての“グランデ・ミラン”を支えた面々からして生え抜きも多かった。そしてシルビオ・ベルルスコーニが会長に就任してからも、経営陣は大型補強に大金をつぎ込む傍ら、下部組織にもちゃんと資金を投入していた。

下部組織から一貫したコンセプト。他クラブ移籍後にも才能が開花

 1980年代後半から欧州を席巻したサッカーのコンセプトを、下部組織にも浸透させて育成が行われた。最後尾に一人余らせるような5バック的な戦術は絶対に使わず、若いうちから4バックでラインを上げ、攻撃的に戦うサッカーをさせる。そこからトップチームに貢献する人材も出てきた。デメトリオ・アルベルティーニはその筆頭だし、ミランにとって近年最後のスクデットとなった2010/11シーズンでも、生え抜きのイニャツィオ・アバーテやルカ・アントニーニが少なからず貢献を果たしていた。

 他クラブで開花した選手にも、ミランの下部組織出身者は多い。のちに代表クラスになるマッシモ・オッドやクリスティアン・ブロッキもミランの下部組織出身。現在カリアリで活躍するマルコ・ボリエッロやサッスオーロのアレッサンドロ・マトリといったベテランFWもミラン出身だ。今シーズンで旋風を巻き起こしているアタランタにも、アンドレア・ペターニャが主力として定着している。何よりマンチェスター・ユナイテッドには、マッテオ・ダルミアンがいる。

 プリマベーラとして獲得したタイトルは、ユベントスや近年のローマ、インテルなどに比べるとそれほど多くはない。ただそれはクラブがあくまで育成を主眼と置いていたからであり、人材が枯渇していたわけではないことは輩出した選手の数が物語っている。

 ただ、生え抜きの選手たちがトップに多く定着することは、近年には確かになかったことだ。それはなぜか。「身も蓋もない言い方になるが、やはりベルルスコーニに資金がなくなったからだ。“ミランは若く、イタリア人中心で行きたい”とベルルスコーニが2014年に発言して以降、彼らははっきり方針を変えた」。ベルルスコーニ時代のミランを見続けてきた『コリエレ・デッロ・スポルト』のベテラン、フリオ・フェデーレ記者はそう語る。

 ズラタン・イブラヒモビッチを擁してスクデットを獲得した2010/11シーズンくらいまでは、彼らはまだ大型補強に頼っていた。ところが主力が軒並み高齢化し、何よりクラブも親会社のフィニンベスト社も経営危機に陥ると、それも難しくなってくる。結局彼らはトップチームの人材輩出の術を自らの下部組織に求めざるを得なくなり、補強の外国人選手も金のかからない若手(それもレンタル)という手段に頼るようになった。

若手の成長が強豪復活の鍵? 新経営陣の方針が重要に

 この現実を受け容れたのか、サポーターたちも少し変わった印象を受ける。結果に厳しく、それこそボリエッロやデ・シーリオ、そしてステファン・エル・シャラウィ(現ローマ)らにも時に容赦なくブーイングが飛んでいたが、今は若手を積極的に応援するような空気がスタジアムにも出てきた。

 今週中には、紆余曲折は経たものの中国資本への経営譲渡が完了する見通しだ。将来のベースとなる若手は揃えたという点で、現経営陣は良い置き土産を次世代に残したとも言える。近年は苦戦を続けたミランだが、今いる10代や20代前半の若手選手が成長すれば、強豪復活につながるのではないだろうか。

 ——しかし、有望な若手の存在だけをとって楽観視するにはまだ早い。当然ながら、戦力として彼らの価値をどう活かすか、そしてチームとしてどういう成績を目標とするかどうかは、新経営陣の舵取り次第だからだ。

 ドンナルンマにはサポーターの期待も大きいが、引き留められるかは分からない。「彼には偉大なミランがふさわしいのではない。偉大なチームがふさわしいのだ」と代理人のミーノ・ライオラは待遇次第での移籍もちらつかせている。その希望を満たすには、ドンナルンマ自身の契約にもチームとしての補強にもそれなりの額を費やさなければならなくなるわけだが、新経営陣にそれは可能なのか。

 現在ミランの下部組織からは、アレッサンドロ・プリッザリという才能溢れるGKが新たに出てきている。「長身だし、足元の技術はドンナルンマよりも高いともっぱらの評判。ドンナルンマを放出した場合クラブは彼をトップチームのGKに推すことも考えている」とフェデーレ記者は語るが、果たしてどうなるか。

(取材・文:神尾光臣【ミラノ】)

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