ドルトに挑むモナコ。唯一残った“フランス勢”、PSGが実現できないベスト4入りへ

4月11日(火)10時19分 フットボールチャンネル

CL決勝進出経験のあるモナコ

 16-17シーズンのUEFAチャンピオンズリーグ準々決勝で香川真司が所属するドルトムントと対戦するモナコ。フランスのリーグアンに参戦し、03-04シーズンに決勝進出を果たしている同クラブは、その後2部降格などを経験している。2011年にロシア人オーナーが就任して復活の道のりを歩んでいる「フランス国外の」クラブは、PSGが実現できないベスト4入りを成し遂げることができるだろうか。(取材・文:小川由紀子)

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 今週からいよいよチャンピオンズリーグの準々決勝が始まる。香川真司のいるドイツ・ブンデスリーガのドルトムントが対戦するのは、フランス勢から唯一残ったモナコだ。11日のファーストレグはドルトムント、19日のセカンドレグはモナコで行われる。

 モナコは7度のリーグ優勝経験があるフランスの強豪で、92-93シーズンにマルセイユがACミランを破って(1-0)優勝した年以降、フランスのクラブで唯一決勝戦まで到達したクラブだ。

 その03-04シーズン、モナコを率いていたのは現フランス代表監督のディディエ・デシャン。パトリス・エブラやリュドビク・ジュリ、スペイン代表のフェルナンド・モリエンテスらを擁したモナコは、決勝までにレアル・マドリーやチェルシーを破った。

 とくに、アウェイでのファーストレグを4?2で落としたあと、ホームで3?1と挽回して勝ち抜けをつかんだ準々決勝のレアル戦は、町中のカフェのテレビの前に人々が集まって大騒ぎだった。

 決勝ではジョゼ・モウリーニョ率いるポルトに3-0で敗れたが、彼らのそこまでの奮闘に、ふだん「モナコは実際はフランスではない」と斜めに見ているこの国のサッカーファンも「フランス勢頑張れ!」と、熱い声援を送ったのだった。

 ところが、財政問題や監督とフロントの不和など様々な事情を抱えたモナコはその後坂を転がるように後退、10-11シーズンを18位で終えると、ついに2部リーグに転落してしまった。

 その頃にはチームの顔ぶれも一変し、代表クラスの選手など一人もいなくなっていた。

救世主となったロシア人オーナー。ディミトリ・リボロフレフ氏

 しかしここで救世主が現れる。

 2011年12月、ロシアの富豪ディミトリ・リボロフレフ氏がクラブの経営権を買いとって新オーナーに就任すると、その数ヶ月前にカタール勢が参入してメガクラブ化計画をスタートさせたPSGの対抗馬となるべく、真剣なクラブ再建に乗り出したのだ。

 新体制のもと、モナコは翌シーズンにはリーグ2の頂点に立ってリーグ1に昇格。トップリーグへの復帰を祝うかのように、新オーナーは大枚をはたいてハメス・ロドリゲス、ラダメル・ファルカオ、ジョアン・モウチーニョらスター選手を獲得した。

 その甲斐あって昇格初年度とは思えない強さを発揮したモナコ。1月のカップ戦で膝の十字靭帯を損傷したファルカオは、その後のシーズンを棒に振ったが、クラブは復帰初年度からPSGに迫る2位で復帰初年度を終え、晴れて翌年の14-15シーズン、9年ぶりに欧州の最高峰コンペティションに復活したのだった。

 夏のメルカートでロドリゲスとファルカオを手放したメンバーながら、CL復帰初年度にしてモナコはグループリーグを首位で通過。ラウンド16ではアーセナルを下して準々決勝に進出し、そこでユベントスに総計0-1と僅差で敗れるまずまずの成績を収めた。

 次の15-16シーズン、つまり昨季は、予選でバレンシアに敗れてヨーロッパリーグに回ると、グループリーグ3位で敗退と欧州での成績は振るわなかった。

 国内リーグは2位のリヨンと勝ち点タイの3位と、一見そこまで悪い成績ではなかったが、このシーズンはモナコにとっては今後飛躍するための準備と学びの年だった。

 地味な試合内容で堅実に勝ち点を稼ぐジャルディム監督のやり方は非難を浴びたりもしたが、ポルトガルの知将は、現時点でチームに必要なことを手堅くこなしていった。

フランス代表にも多くの選手を送り込む

 その地道な過程を経て生まれたのが、今季のモナコだ。

 第31節を終えて88得点は、昨季、完全な独走体制で数々の記録とともに4連覇を達成した同時期のPSGのゴール数より「11」も多い。

 1試合で6、7得点というリーグ1では珍しい大量得点の試合もしばしば。得点ランクトップ20にはファルカオを筆頭に3人、アシストランク20傑にはなんと6人を送り込む超攻撃的チームだ。

 一方CLでは手堅い試合が多く、グループリーグの6試合で9得点しかとっていない。しかし一転、ラウンド16のマンチェスター・シティ戦では敵陣で5?3、ホームで3?1、合計6?6という打ち合いを演じて勝ち抜けた。

 そして迎える準々決勝。相手のドルトムントは、モナコと似たタイプの攻撃型チームだ。経験豊富な中堅と威勢のいい若手が混ざり合い、オーバメヤン、デンベレのような勢いあるストライカーがいるところも共通している。

 モナコの持ち味は、強力なサイド攻撃。両サイドバック、右のシディベと左のメンディは、スピードがあってフィードの精度も高く、ゴールに直結するチャンスを作れる。

 シディベはすでに代表でもレギュラー格で、メンディは3月の国際マッチデーで初招集。W杯予選のルクセンブルク戦では2人揃ってアシストを記録した。

 中盤はベテランのファビーニョがしっかり底でコントロールし、身体能力抜群のティエムエ・バカヨコがダイナミックに動くという構図。

 その前には、アジリティが高い上に技術面にも優れたルマールがいる。ルマールは自らゴールを決められるが、セットアップも上手い。

 攻撃ラインは、ポスト役がリーグ1昇格に貢献した古株のジェルマン。彼は国際的には知名度は高くないが、要所で良い仕事をするチームに一人欲しいタイプの堅実型ストライカーだ。そして負傷欠場が続いていたファルカオは、8日のリーグ戦、対アンジェ戦に3試合ぶりに復帰し、さっそく決勝点となるゴールを見舞った。

 さらには、やはり3月の国際マッチデーで代表デビューし、フランスで話題沸騰中の18歳、ムバッペもいる。彼はモナコでは左サイドに入ることが多く、メンディ、バカヨコ、ルマールとつないでムバッペ、と攻め上がる左側の超特急ラインは、胸がすくような痛快さがある。

スピードの左、スキルの右。両サイドで異なる持ち味

 そして右に陣取るのは、テクニシャン、ベルナルド・シウバ。彼は何もないところからポコっとチャンスを作り出せるタイプで、膠着した展開や、ロスタイムでリードを保っていても、彼がピッチにいる限り相手チームは決して油断はできない。ふとしたところからアクションを起こして、ゴールにつなげてしまうからだ。

 左はスピード系、右はスキル系と、モナコは両サイドで2つの違った味が楽しめる美味しいチームなのである。

 泣き所はベンチ層が厚くないところ。しかし終盤、ボールをキープして落ち着かせたい場面では、ベテラン、モウチーニョ投入という切り札もある。

 と、期待をこめたところで、ファーストレグではモナコに残念なハンデがある。中盤のバカヨコが累積警告でこの試合を欠場。さらに右サイドバックのシディベが、日曜に虫垂炎の疑いで病院へ運ばれるという緊急事態が発生した。

 3月のW杯予選対ルクセンブルク戦でも、試合途中で肋骨あたりに痛みを訴えて運び出された。そのときの痛みも虫垂炎と関連していたのかもしれない。

 どのくらい戦列から離れることになるかは現時点では発表されていないが、ほぼ確実に火曜日のドルトムント戦は欠場となるだろう。

 よってこのファーストレグ、モナコは攻撃陣に奮闘してもらい、1点でも多くもぎとってアウェイゴールのアドバンテージを稼ぎたいところだ。

 PSGがこの4年間実現できなかったベスト4入りを、モナコが成し遂げることができるか。今回も03-04シーズンのとき同様、フランスのサッカーファンはみな「モナコはフランスの代表だっ!」と胸を張ってこの高貴な赤白軍団を応援している。

(取材・文:小川由紀子)

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