ネイマール、PSG加入報道への疑問。現実味を欠くパリ移籍。魅力の乏しい国内リーグ

4月12日(火)10時0分 フットボールチャンネル

現実味を帯びてきたネイマールのPSG移籍

 昨今ネイマールのパリ・サンジェルマン移籍報道がメディアを騒がせている。だが、極端な1強リーグでブラジル代表のエースがキャリア全盛期を過ごすというのは、現実的に起こり得ることなのだろうか。(文:小川由紀子)

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 ネイマールの来季のPSG入りはあるのか?

 両者のリンクは前々から話題にはなっていた。

 しかしあくまでよくある噂話のレベル。むしろPSGが獲得する選手の本命と騒がれていたのは、同じリーガ・エスパニョーラのライバルチーム、レアル・マドリーのクリスティアーノ・ロナウドの方だった。

 しかしここへ来て一気に現実味が増しているという。

 その一端となったのは、4月4日発売のレキップ紙に寄せられたネイマールの代理人、ワグネル・リベイロ氏のコメントだ。

 以下に一部を抜粋すると

「バルセロナとの契約は2018年まである。バルサでプレーできることに彼は非常に喜びを感じているし、ファンにも愛されている。バルサは世界最高のクラブだ。しかしパリのような街に住み、PSGのようなクラブでプレーすることはどの選手にとっても憧れだ。今後、契約が切れるまでの間にどういう展開になるか様子を見たい」

「PSGが興味を示しているというなら話し合いには応じる。契約解除には1億9300万ユーロ(約245億円)が必要だが、PSGにとっては無理な額ではないはずだ」

「いまのところ移籍についての話はしていない。まだシーズン最中で両クラブとも重要な試合を残している。シーズン終了後に話をすることになるだろう」

「ネイマールはパリが大好きだ。ルーカスのような親友もいる。彼は再三ネイマールに『パリに来て一緒にやろう!』と誘っている」

 ネイマールのバルセロナとの現行の契約は2018年6月までだが、昨今のサッカー界では契約はあってないようなもの。245億円という破格の違約金の支払いも、カタール陣営ならリベイロ氏の言うように不可能ではないだろう。また、PSG入りした際には、現在よりもネイマールの給料がアップすることは確実だという。

 今年に入ってバルセロナはネイマールと契約延長の話し合いを続けているが、ネイマール側がなかなかサインに応じないというのも、クラブを離れる可能性を匂わせる原因になっている。

来季の去就が不透明なイブラヒモビッチ

 また、ネイマールには頭の痛い問題もある。

 脱税問題だ。

 バルセロナに移籍する前にプレーしていたブラジルのサントスでの給与を過少申告していたとして、すでにブラジルの検察当局からは自家用ジェットやヨットなど、総額約55億円相当の個人資産を差し押さえられているが、サントスからバルセロナに移籍した際にも申告されていない金銭の譲渡があったという疑いで現在調査対象にされている。

 ネイマール側はこれを否定し、金銭面を管理する父親が「スペイン当局がこのような行為を続けるなら、この国でプレーすることを考えなくてはならない」と発言したことも、『脱・スペイン構想』を後押しする形になっている。

 一方のPSGも、今夏は目玉移籍を画策している。

 これまでチームの大エースだったイブラヒモビッチとの契約が今季いっぱいで切れるため、彼の後釜となるスーパースターを是が非でも獲得する必要があるのだ。

 しかし今季のイブラはあまりに絶好調であり、すでに一選手という存在を超えてチームの大黒柱となっている彼の絶大な影響力を失うのは惜しいと、クラブ側はあと2年の契約延長を提示している。

 マンチェスター・ユナイテッドからの誘いや、アメリカのマイアミに新クラブを立ち上げるベッカムからのラブコールなど引く手数多のイブラは、3月早々にリーグアン優勝を決めた際には「今の時点では、来季はこのクラブにはいない」と発言。

「エッフェル塔みたいな“イブラタワー”を造ってくれるなら考えてもいい」と彼らしいジョークで煙に巻いたが、彼の去就はいまのところ不透明だ。

 2011年夏にカタール勢が参画して新体制になって以来、PSGは計画的に、そして実に戦略的に選手補強を実行してきた。

 初年度はレオナルドをスポーツディレクターに迎え、マテュイディ、シリグ、パストーレ、マクスウェル、チアゴ・モッタら基盤となる選手を獲得。シーズン途中には名将カルロ・アンチェロッティを招聘し、翌シーズンのタイトル獲りの下準備をおこなった。

着実な補強を進めてきたPSG

 そして翌12-13シーズンは、世界的にPSGの知名度を上げる戦略を敢行。その目玉として白羽の矢が立てられたのがイブラヒモビッチだった。彼の名前とともに、PSGの名前は世界中のメディアに上り、狙いどおり絶大な宣伝効果を上げた。

 同時に、当時世界最高のDFと言われたチアゴ・シウバ、無名の逸材ヴェッラッティらを獲得。さらに冬のメルカートでは、以前から目をつけていたルーカスに加えて、サッカー界のスーパースター、デイビッド・ベッカムを加入させるという仰天移籍を成功させ、その後の試合はホーム、アウェイとも全試合満員御礼という前代未聞の大フィーバーとなった。

 計画どおりにリーグタイトルも獲得すると、翌シーズンからは、チーム力を本物にするための真の補強の時期に入る。

 13-14シーズンはカバーニ、マルキーニョス、14-15シーズンはダビド・ルイス、そして今季はアンヘル・ディ・マリアと、イブラやベッカム並のメディア的インパクトはないが、確実にチーム力を底上げする実力派の獲得に焦点を当てたのだった。

 そうして国内で4連覇達成と無敵艦隊に成長したPSGがいま求めているのは、クラブの格をもう一段上げてくれる、いわばバロンドール級のスーパースターだ。

 その筆頭候補に挙がっていたのが前述のロナウドだったが、レアルのペレス会長は公にロナウド放出の可能性をシャットアウトし、本人もマドリーを去る気はないと発言している。

 そこで、新たなナンバー1ターゲットとして浮上したのがネイマールだった。

 代理人のリベイロ氏はルーカスも担当し、すでにアル・ケライフィ会長やPSGの幹部陣とはファーストネームで呼び合う間柄。交渉もスムーズだ。

 ユース時代から一緒にプレーしてきた親友ルーカスもネイマールを熱心にくどき、チアゴ・シウバも「代表で顔を合わせたときにPSG入りを勧めた」とインタビューで明かしている。

 しかし「現在24歳と、まだまだこれから飛躍するネイマールが、いくらパリでの暮らしに憧れるからといってリーグアンでプレーしたいと思うだろうか?」というのは、失礼ながら、おそらく筆者のみならず、熱烈なリーグアンサポーター以外の人なら誰もが抱く疑問だろう。

リーグアンでのプレーは魅力的なのか?

 チアゴ・シウバが入団したときも不思議でならなかった。世界最高と言われる選手がなぜ、対戦相手に強豪国の代表クラスのストライカーがいないリーグに来るのか、そこで本当にプレーする喜びを見出せるのだろうか?

 失礼だとは思ったが、本人にも率直に聞いたことがある。

「そういう風に思う人が多いことは想像できる。でも、みんなが思うよりもここでのプレーはチャレンジングだ。毎回、負けられない環境の中で、ミスなく、パーフェクトなプレーをすることを自分に課している。だから、たとえ相手が誰だろうと、一戦一戦充実している」

 というのが、彼の答えだった。

 これにはあまり共感はできなかったが、感覚の違いを知ったのは、シウバが入団した当時、ブラジルから取材にきていた同国の放送局グローボのジャーナリストと話したときだ。

「まだまだピークはこれからなのになぜフランスリーグに?」という筆者のぼやきに、その記者は意外なリアクションを返してきたのだ。

「なぜって、それこそなぜ? パリみたいな街に住めて、大金のサラリーをもらえるんだ。誰だって来るに決まってるじゃないか!? 君はずいぶんおかしなことを言うねえ」

 ルーカスも、PSGからの誘いと同時にマンチェスター・ユナイテッドからも興味を示されていたが、パリの街に魅力を感じてPSGを選んだ、とリベイロ氏は明かした。だが、「プレミアリーグのマンチェスター・ユナイテッドとリーグアンのPSG、自分が選手だとしたらどちらでプレーしたい?」と聞かれたら、おそらく多くの人がオールドトラッフォードでプレーする方を選ぶのではないだろうか。

ネイマールはこれからキャリア全盛を迎える選手

 ベッカムのような例は理想的だ。すでに30歳を超えていたイブラや、譲って28歳になりかけていたシウバもありとしよう。しかしこれからますます脂の乗ってくる24歳のネイマールが(ふたたび失礼ながら)リーグアンでプレーしたいと思うだろうか?

 フランスの一部のメディアは、バロンドール獲得を目標にしているネイマールはバルセロナではメッシやスアレスの影に隠れてスターになれない環境に不満を感じているため、自分がスターになれる場所を求めている、と報じているが、最強MSNの一員としてプレーすることはどんなに楽しいだろうかと想像してしまう第三者としては、それも理解しがたい。

 ラジオ・インターナショナル・ブラジルの特派員でPSG担当のエルシオは

「なんといっても国(ブラジル)ではネイマールがナンバー1スターだから、連日、彼の話題でもちきりだよ。ブラジルのファンたちは、ネイマールがPSGに来るとは思っていない。最近ブラジル人選手が増えたおかげでPSGの知名度も上がってきたとはいえ、格としてはバルサとは比べものにならないからね。私自身もこの話には懐疑的だ」

 と話していた。

 同じくポルトガル語圏ということでブラジル人選手をフォローしているポルトガルのラジオ局のマルコは

「ネイマールが来ればファンにとっても自分たちメディアにとっても素晴らしいことだ。可能性があるとすれば、脱税問題がどう展開するかじゃないか。スペイン当局の追及の手を逃れるために国を変える可能性はなくはない」という意見だった。

 地元パリジャン紙の筆頭PSG番、ドミニクは

「単なる噂レベルの話だとは思わない。あくまで個人的な意見だが、現実的に移籍の可能性はないわけではないと思っている」と言っている。

 スポーツ選手なら、その競技で最大限のチャレンジを堪能できる場所でプレーすることを無条件に選ぶに違いない、という考えは万国共通でないことは確かのようだが、それでもエッフェル塔のエンブレムがついたシャツをネイマールが身につける姿は、現実的には想像できないのであった。

(文:小川由紀子)

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