コンテ就任でチェルシーはどう変わるか。鍛錬主義の“イタリア版モウリーニョ”が挑むどん底からの再出発

4月12日(火)11時28分 フットボールチャンネル

チェルシー、コンテ就任でどう変わるのか?

 チェルシーは、来季からの新監督に現イタリア代表のアントニオ・コンテ監督が就任することを発表した。今季はジョゼ・モウリーニョ前監督を解任し、ロマン・アブラモビッチ政権で最低成績が濃厚というどん底からの再出発となるコンテ監督だが、“イタリア版モウリーニョ”は過去の失敗を教訓とできるだろうか。
(取材・文:山中忍)

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 去る4月4日、来季からのチェルシー正監督として、3年契約でのアントニオ・コンテ就任が発表された。2003年のロマン・アブラモビッチによるクラブ買収以来、通算10度目の監督交代。04年のジョゼ・モウリーニョ就任以来、最も重大な監督人事でもある。新監督は、強豪としての黄金時代をもたらしたモウリーニョの2期目が早期終焉を見た今季、プレミアリーグ6位に終わった4年前を下回る、アブラモビッチ政権下での最低順位が濃厚なチームを立て直す任務に就くのだ。

 コンテという人選には「モウリーニョと似ている」との声が多い。良い意味での共通点は飽くなき勝利意欲。MFだった現役時代にはCL優勝経験も持つ46歳のイタリア人指揮官は、実子を母国語で「覇者」を意味する「ビットリア」と名付けるほど勝利へのこだわりが強い。そのためには、曰く「1日16時間」を仕事に割く覚悟を持つ。EURO2016を以てイタリア代表での監督職を辞す理由にも、はるかに高密度なクラブ監督職への復帰を望む意思があった。

 勝利を実現する手段も積極的。監督として初成功を収めたバーリでは、ウィンガーを押し上げた4-2-4を基本システムとしていた。ユベントス時代も、チェルシーでの採用があり得る3-5-2が代表的。最前線にはストライカー2名を好む。この点はモウリーニョと異なるが、攻撃的スタイルの確立を願うオーナーの志向と一致する。

 逆に不安視される共通点は監督としての「鍛錬主義」。今季チェルシーの不振が長引いた原因には、打ちすぎたモウリーニョの鞭が選手の心を折ってしまったこともあるに違いない。その正式な後任となるコンテは、メディアで「イタリア版モウリーニョ」とも言われる監督。ユベントスと代表でコンテ体制を知るアンドレア・ピルロは、自伝の中で「監督のメッセージは荒々しく選手の心に突き刺さる」と証言してもいる。

クラブが求めた「闘将」。待ち受けるCLなき来季

 だが、この点をクラブ側が考慮していなかったはずはない。正監督候補には、コンテに比べれば穏健派と言えるマッシミリアーノ・アッレグリも含まれていたのだから。コンテが、5年間イタリア王者の座から遠ざかっていたユベントスをセリエA三連覇に導いた再建実積と、1年以上レッスンを続けてきた英会話力というチェルシー向きの条件を備えていたことは事実。

 しかし、敢えて厳格派に白羽の矢を立てたのは、そもそも昨季優勝後の油断があったチームには、やはり喝を入れる必要があるというフロントの理解があってのことだろう。

 前節スウォンジー戦(0-1)に文句の言えない内容で敗れたチームは、目標を失ってモチベーションが落ちた集団そのもの。しかも、待ち受けているのはCLのない来季だ。モウリーニョの鞭で受けた心の傷には、暫定指揮を任されたフース・ヒディンクという「絆創膏」で十分。トップ4返り咲きを気長に待つつもりなどないという、フロントの意思表示でもある「闘将」の招聘だ。

 その新監督に腕を振るわせるため、クラブは推定650万ポンド(10億円強)の年俸と、500万ポンド(約8億円)のCL優勝ボーナスという高待遇の他にも好環境を用意する必要がある。チーム作りに関する発言権の拡大だ。コンテは権威主義の監督としてもモウリーニョと同タイプ。今季開幕当初から窺えたモウリーニョの苛立ちは、意に反して消極的だったフロント主導の補強が原因だったはず。2年前にコンテがユベントスを去った理由の1つも同様だ。

 幸い、就任発表直後の感触は良好。コンテは発表翌日から主力数名と個別に話しをしている。意見が重視される今夏の梃入れを前に、モウリーニョの下で全力投球を止めたとさえ言われた主力の精神状態を確認する狙いもあったはずだ。

 特に不振が目立った攻撃陣で残留の資格を示したと言えるのは、ハードワークを含めて持ち味を発揮したウィリアンと、後半戦に入って本来のパス能力とプレーで周囲を引っ張る意欲を見せたセスク・ファブレガスぐらい。コンテが残留を望んでいるとされるジエゴ・コスタとエデン・アザールにしても、当人の心が移籍に揺れ続ければ売却対象とされる。

どん底からの再出発。モウリーニョ前体制の失敗を教訓とできるか

 新戦力の候補としては、前線にはゴンサロ・イグアイン(ナポリ)とやロメル・ルカク(エバートン)と、中盤にはポール・ポグバ(ユベントス)とやラジャ・ナインゴラン(ローマ)と、後方にもCBセルヒオ・ラモス(レアル・マドリー)とGKフレイザー・フォースター(サウサンプトン)といった名前を含む希望リストが経営陣に伝えられているとさえる。

 チェルシーのファンにすれば、「キャプテン、リーダー、レジェンド」ことジョン・テリーの行く末も気になるところ。生え抜きのベテランCBはコンテと面談した1人で、クラブが3度目の1年契約提示へと翻意するかどうかは新監督の判断次第と思われる。母国でピルロの円熟味を重視したコンテの就任は、テリー残留への光明としても地元サポーターに歓迎されている。

 また、主力にテリー後のユース出身者がいないチェルシーだけに、交渉段階でアブラモビッチが求めた自家製選手の戦力化をコンテが快諾したと言われる点でも期待がもたれる。今季は、ヒディンク暫定体制下で先発が増えたルーベン・ロフタス=チークら、若手数名のプレミア経験が唯一の収穫と言える状態でもある。

 だが、若手には辛抱が必要であるように、過去13年間で最低のどん底から再出発の指揮を執る監督にも辛抱が必要だ。コンテ新体制の成否は、新監督に尻を叩かれる選手たちの姿勢と同等以上に、クラブがモウリーニョ前体制失敗を教訓とし、指揮官により多くの時間と領域を与える姿勢を示せるかどうかにかかっている。

(取材・文:山中忍)

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