【インタビュー連載】フットサル日本代表『タシュケントの夜に』〜第5回FP西谷良介「戦い方が守りに入ってしまった」〜

4月12日(火)12時40分 サッカーキング

バランサー役を担う西谷良介 [写真]=河合 拓

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 フットサル日本代表は、4大会連続のフットサルW杯出場と大会3連覇を目指し、ウズベキスタンの首都タシュケントで開催されたAFCフットサル選手権に臨んだ。W杯の出場権が与えられるのは上位5チーム。日本は過去14大会すべてで4強入りを果たしていた上に、今大会に出場したチームは、「史上最強」とも評され、W杯出場は確実視されていた。しかし、準々決勝でPK戦の末に敗れると、順位決定プレーオフ1回戦でもキルギスタンに2−6で惨敗。大会3連覇どころか、W杯の連続出場を途切れるという最悪の結末に終わってしまった。

 プレーオフ1回戦終了後、フットサル日本代表の選手たちはウズベキスタンの地に残っていた。現地で、選手たちは現実を受け入れられずに、それぞれに苦悩、後悔を抱えながら、それでも懸命に前を向こうとしていた。そのときにインタビューに応じてくれた選手たちの言葉を『タシュケントの夜に』という連載として記す。

 第5回目は、FP西谷良介(フウガドールすみだ)。ミスのないボールタッチと的確な状況判断でチームの攻撃を円滑にし、高い危機察知能力でピンチの芽を摘み取っていくチームのバランサーは、冷静に大会を分析していた。

 以下、西谷良介インタビュー

——敗退から2日経ちましたが、どのような気持ちですか?
「まだ全然、気持ちの整理がつかないです。どうしてこんな結果になったのか。それをずっと考えていますし、それが分かれば落ち着いて整理できると思うのですが、それまでの準備とか気持ちのところ、モチベーションであったりは、全部うまくいっていたと思うんです。自分たちに自信を持ってできていたし、『いよいよ始まるんだな』というところのメンタルの整理も付けていました。だから何が悪かったかは、まだわからないですね」

——グループリーグ3試合はうまくいっていた印象ですか?
「思っているよりも手こずっている感じしているなと。大会に入って難しさだと思うし、慢心はなかったのですが、チャンピオンとして見られている目を感じたときに、自分たちの試合内容よりも、結果をパッと見られたときにそう感じました。うまくいっていなかったわけではありませんが、試合をしていてもあらためて難しいなと感じていたのは、正直なところです」

——ベトナム戦はあれだけ何回もリードしながら勝ち切れませんでした。点差を広げられなかったこと、守備がこらえられなかったこと。どちらがより悔やまれますか?
「そこに一つギャップが生まれていたのかなとは思います。点が欲しいと思っている選手と、まだ慌てなくていい時間帯、ポゼッションする時間帯だという時間帯のギャップは生まれていたかもしれません」

——点を取るときもバリエーションを出せていなかった。ミゲル監督がやろうとしている戦い方とは違ってしまっていた印象があるのですが。
「思っていた以上に相手が引いて守ってきていました。そこに対して自分たちがベトナム戦もそうですし、カウンターに対して臆病になっていたかもしれません。攻撃の終わり方に自分たちがリスクを掛けられなかった。それが2年前と比較して流動性を欠いていた要因化もしれません。一人ひとりを見ても、色のある選手がたくさんいる中で、タレント性のところに頼り過ぎていたのかなというのは思います」

——日本の得点パターンは、森岡薫選手のシュート、仁部屋和弘選手と逸見勝利ラファエル選手のドリブルに限られていた感じでした。それはチームが2年前から進化している過程だったのでしょうか?
「その過程でつまずいてしまったというのが、自分の感覚です。コロンビア戦では4人で崩せて、同じ絵を描けてシュートまで行けているという感覚もありました。個に頼り過ぎているということは、あの試合ではなかったと思います。でも、大会に入ってからそこに頼っていた…。頼っていたというか、色を出すためにそこにもっていこうとはしていました。4人の流動性の中でのゴールが、引いた相手に対しては難しいのですが、そこの流動性は物足りなかったと思います」

——特に西谷選手、吉川智貴選手、酒井ラファエル良男選手は、周囲と連動しながら良さを出していく選手だと思います。しかし、連係の中で生きる3選手が本来の良さを出せなかった印象があります。
「自分の役割としては、アラでドリブルを仕掛けて時間をつくるものではありません。どうやってその形に持っていくか。相手のバランスを崩して、もう一個、刺すようなパスを入れるという役割に対して自分の中では多少手応えはあったのですが、それは誰が出てもできるようにしておかないといけない。酒井が生きなかったときに、酒井と一緒に出ていた時間帯もありますし、酒井からしたらやりにくさがごまかせないところもあったと思います。そういうところで自分が周りを生かすプレーをしなければいけなかったのですが、それができずにうまくいかなかったところだと思います」



——自分がもっとこうしておけばという感じで振り返ることが多いのでしょうか?
「そうですね。自分の力不足を感じることもありますし、出場時間を見たら分かると思いますが、試合の流れを監督が見て、使う選手、使わない選手が出てきます。そこに自分は割って入れなかった。それを感じているし、それは実力不足以外の何物でもないので。そこに対して矢印を自分に向けてはいるんですけど…。そこのコミュニケーションの働きがけで、もっともっと磨きをかけていくことが必要かなと思います」

——時間を巻き戻せるとしたら、どのタイミングに戻りたいですか?
「ベトナム戦ですね。前半で1点を返されましたが、そこまで慌ててはいませんでした。FKで1点取られても、自分の中では落ち着いてプレーできていました。オーストラリアは間合いが違いましたが、ベトナムは日本人に近かったですし、みんなも普段やっているようなプレーもできていました。4人の連動から点を取れるような場面もどんどんできていたから。さっきも言ったように、点を取りにいくところなのか。落ち着いてポゼッションして相手の出方を探るのか。そこでのギャップが生まれ始めていたのが後半2失点目をして、3−2にされたあたりからなのかなと思います。だから、そこですね…」

——西谷選手に関しては、試合中にも大きなミスがあったわけではないと思います。それだけに、この大会をどう消化するのかが難しいのかなと感じているのですが。
「(皆本)晃もケガして、ここに来るまでにいろいろな遠征をともにした(佐藤)亮もそうですし…。(吉川)智貴も国内から海外に移籍して、国内合宿に参加できない状態が続いていた中で、自分がスタメンに入る回数とか、ミゲルが考えているセットに今まで入ることがなかったところに自分が入るようになったりしていて、2年前に比べたら自分の役割、立ち位置は変わってきているんだなというのは国内合宿、海外遠征を積んでいく中でも感じていました。 それぞれの想いや、2年前よりハッキリした役割などを考えてみると、難しいですね。消化してはいけないと思います」

——西谷選手はチームの一体感を感じながら戦えていましたか?
「戦えました。2年前とは、すごく自分の中で感覚が違います。2年前はバッと始まって、バーッと優勝していった感じでした。初戦で敗れたのですが、そこから一気に上がって行く感覚がありましたが、今回に関しては自分の立場、役割も違うからなのかもしれませんが、そういう戦って成長していくというより、戦って確認しあっている感覚でした。そういう感じがしましたね。実際にそうだったのか、自分の立ち位置が違ったからなのかはわかりませんが、一つになっていなかったことはなかったと思います。一つになって戦えましたし、みんなも自信を持ってやっていたので」

——前回は初戦でウズベキスタンに敗れた後、チームは巻き返しました。今回はベトナムに敗れてから、這い上がることができませんでした。優勝がなくなったという背景があったからだと思いますが、西谷選手はベトナム戦の夜は眠ることができましたか?
「眠れなかったことはないのですが、浅かった感覚はあります」

——あそこで、中日がもう1日あったらまた違ったと思うんですよね。すべてが日本にとって悪い方向に進んだ感じですね。
「そうですね……。本当にこんな終わり方というか、ワールドカップに行けないことを想像していませんでした。正直。自分の力不足でしかないと言えば簡単なのですが、出場時間を見たら帰化した選手とか、仁部屋とか、智貴とか、そういう選手がすごく長くて、彼らにすごく負担があったんじゃないかなと。そこに温度差があったわけでもないですし、そこに自分が割って入るようなプレーができなかったことに責任をすごく感じます」

——キルギスタン戦で0−2にされてから後半が始まるまでの時間。あの時間帯が『こんなに何もできなくなるんだ』と、一番ショックでした。戦い方、リズムが一定で相手が守りやすいようにしか見せませんでした。
「プレーしていても、そんな感覚でしたね。勝ち取らないといけないところで自分たちが守りに入ってしまったようなプレーが、心理的にそういう状態に追い込まれていたのか。…1点取ったら何かが変わるってみんなが分かっていたのですが、その1点を取りにみんなが大切に行こうとし過ぎていたのが、迫力のない攻撃につながっていたのかもしれません。そのうえで2失点して、そういう状態が生まれたのかなと」

——今度、このような大会を戦うとすれば、何を変えたいと思っていますか?
「自分たちが本当に、まずは国を背負っているという感覚を確認するというか。そういう思いを背負っていることを伝えないといけないと思います。W杯がない。そこを目指していた選手が、この代表チーム内以外にもいるでしょうし、日本フットサル界の環境を良くする動きを自分たちの一戦で無駄にするのか。それを勝ち取るために、どういうマインドで戦うのか。やっぱり熱くしていかないといけないものですし、引き継いでいかないといけません。それがわからないまま試合に入って、ただ負けたくないからと取り組む選手も出てくると思いますが、日本を背負うのはそういうものではありませんし、そこの気持ちを統一しないといけないなと。プレー外のところでは、そこをやらないといけないと思っています」

——こういう負け方をすると「戦えていなかった」という話もあります。森岡選手や仁部屋選手は、「日本が戦えていなかった」という話をしていましたが、それに共通する感覚はありますか。
「自分は、そこを持ってやっていたつもりなので、あまりピンとは来ないですね。プレーに関しては、自分の中ですごく守備を大事にしていました。ミゲルは『日本は守備のチームだ』と言っていましたし、みんなもわかっていました。守備をすれば世界でも戦えるチームになると言っていましたし、クロアチア、チェコとの遠征でも、そこに対する手ごたえをすごく感じてやっていました。アジアに入って予選はオーストラリア、マレーシアとありましたが、ボールを保持する時間がどうしても長くなっていました。ただ、自分たちが思っていたボールの取り方、奪い方ができていなかったというのが、自分の中にはあります」



——日本にとっては、前からの守備が生命線でした。それが、最前線からこっちに追い込んでいくというようなことが、今回ははっきりしていなかった感覚があります。
「その話はしましたね。今回は声がないと受け渡しができなかったんです。そういう細かいところなんですが、前回の大会は『そこは付いてきてくれる』『そこはマークを離す』と、自然と感じ取ってマークを受け渡せていたのが、今回は確認しないといけなくて、そこで後手を踏むようなことが多かったと思います」

——『個で強い』という言葉に引っ張られて、その本来の強みが薄れてしまった?
「そういう感覚がすごくあります。もっと『ここまでボールを運ばせて、2人でボールを獲れた』とか、そういう感覚がアジア選手権に入ってからはありませんでした。むしろ相手のミスでマイボールになったことが多かったと思います」

——そこでマイボールにできてしまっていたから、予選では破たんが目立たなかったのかもしれませんね…。
「生命線となる自分たちの守備で、失点こそはありませんが、相手のミスに助けられた部分もありましたし、うまくいっているような感覚を持ってしまったかもしれません」

——話をしていて、すごく『なるほどな』と思えました。
「ただ、この結果については本当に言葉が見つからないし、自分の頭の中はぐちゃぐちゃです。何回も、何回も同じシーンが浮かんできて…」

——どのシーンですか?
「ベトナム戦で、(渡邉)知晃がボールを奪って、俺が追いかけて行ってGKと2対1の状態をつくれる状態があったんです。そのとき、知晃が『行ける』と思って打ってしまったシーンがあって…。そこで声を出して呼んだし、目も合った気もしたんですけどね。裏をかいて狙ったのかもしれませんが、もっと大きな声を出せばよかったなって。そのシーンで決めていたら、4−1になっていて、3点差に広げられていたので。そのシーンが一番、頭の中をグルグルしています」

——3点差付いていたら…っていうのはありますよね。イランがベトナムから13点取っただけに、余計に思ってしまいます。
「イランと戦っていたら、ごまかすことができていたことが、ごまかせなかったと思うんです」

——大敗していた?
「いえ、いい勝負はできていたと思うんですよね。でも、そのうえで細かい所の課題が浮き彫りになっていたと思うので。相手は引いてくる相手じゃないので、自分たちが思い描いた試合をやりやすいかなと思うのですが、より日本が高みを目指すうえで、課題を浮き彫りにしてくれたと思うんです。だからこそ、イランとは戦わなければいけなかったし…。ブラジルとも互角に戦えるのがイランですし、自分たちのレベルが一番はかれる相手だと思っていたので…」

——明日はようやく決勝です。敗退してから長かったと思いますが、みんなで話しているのですか?
「話しますね。映像がないから試合は見れていないのですが。帰国したら映像を見返します。キルギス戦に関しては、後半にパワープレーしていたこともありますが、あまり記憶がなくて…。映像で見返したら、どんな感覚ですかね。本当に、こんな経験ってないですね。W杯に行くのは小さいころからの夢でしたし、ずっとやってきて…。もちろん最初はサッカーでしたが、それがダメになってフットサルに転向して、そこを目標にやってきて。そこを狙える立場、立ち位置になって、積み上げてきたものが、あの一戦で今回はなくなってしまって手に届かなかった。そうなったとき、本当に頭の中が真っ白になりました。強い思いで移籍して、レベルアップしようとして、違う自分を見つけるうえで…。自分の中で、代表はモチベーションにしても、何にしても、すごく大きなものを占めているので。そこが一気になくなったということで、自分がいま、どうしないといけないかはわかっているのですが、気持ちがついて行っていない状態です」

——こうしないといけないと感じていることとは何ですか?
「この経験を伝えていくこと。プラス今30歳で、次は34歳なので、まだ狙えると。いろいろな方からも『まだチャンスはある』と言ってもらえていますが、そこに自分がチャレンジできるか。これだけ真っ白になるということは、それだけ無意識に自分が懸けているものがあったということだと思うので。W杯出場を逃して、初めて自分がここまでW杯に懸けていたんだと気づいたので、余計に自分の中で混乱しています。これからやらないといけないことが明確ですが、今はまだこの気持ちを大事にしたいと思います。日本に帰って、普段の生活に戻って、何もなかったように過ごすことは一番やりたくありません。だから、今、この時間はすごくしんどいですけど、すごく大事な時間だと感じています。この時間を大事にして、ちゃんと整理してから、次に進みたいなと思っています」

インタビュー・文・写真=河合拓

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