なぜ大谷翔平は24億超えの不正送金に気付かなかったのか? 関係者と水原氏との間に生じていた「隙」
2024年4月13日(土)7時30分 ココカラネクスト
エンゼルス移籍当初から大谷のありとあらゆる面倒を見ていた水原氏。その関係性が今回の一大スキャンダルのキッカケとなった。(C)Getty Images
大谷は代理人、会計士、ファイナンシャル・アドバイザーが「監視していると考えていた」
球界のみならず、お茶の間にも大きな衝撃を与えた一大スキャンダルは、当人たちへの捜査の末にひとつの局面を迎えた。
去る3月20日に明るみになったドジャースに所属する大谷翔平の専属通訳を務めていた水原一平氏の違法賭博への関与問題に関して重大な発表がされたのは、現地時間4月11日だった。米連邦捜査局が捜査の結果として、水原氏を「銀行詐欺罪」で起訴したと正式に公表したのである。
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巧妙な手口と計画性、関係者たちも寝耳に水だった問題の根深さ——。違法賭博の闇が次々と明るみになった。
世間を愕然とさせたのは、やはり水原氏が違法賭博の胴元に対して抱えていた負債額の規模だ。2021年12月から今年1月にかけての約2年間で同氏が、大谷の口座から不正送金していた金額は、なんと1600万ドル(約24億5000万円)。当初に報じられていた450万ドル(約6億8000万円)のほぼ4倍と判明した。
これだけの巨額送金は可能になったのかは、かねてから真相解明の焦点ともなっていたわけだが、検察側から提出された告訴状によれば、水原氏は年俸支払いなどがされる大谷の銀行口座を自身の電話番号と関連するメールアドレスに紐づくよう独自に変更。さらに銀行側とのやり取りも大谷を装って行っていたという。
さらに気になるのは、大谷はなぜ身近な存在であった水原氏の不正送金を把握できなかったのか、だ。これについても訴状では赤裸々に記されている。
訴状内容によれば、今回の司法当局などの調査に対して大谷は全ての口座管理を代理人、会計士、ファイナンシャル・アドバイザーが「監視していると考えていた」と供述。水原氏に特定の口座管理状況について問い合わせることもなかったという。
当然ながら大谷のマネージメントを任されている代理人事務所の『CAA』は、収入や投資プロフィールの全体像を把握するべく、プロの簿記係の「J.C」を雇用。このJ.Cは、不正送金が行われていた口座について、納税義務の可能性を懸念して大谷側に問い合わせていた。
日本語を話せる職員を雇っていなかった代理人事務所の生んだ「隙」
だが、ここで専属通訳だった水原氏が仲介。問い合わせに対して「オオタニはプライベートなので見せたくない。納税義務の発生するようなことはしていない」と説明。大谷本人が関与しないうちに回答をしていたというのだ。
さらにCAAは「B.L」というファイナンシャルプランナーと、「K.F」という会計士を大谷のために雇用。米国だけでなく日本国内の資産運用や投資を行うべく本人に問い合わせを行った際にも、水原氏が間に入ったという。問題の口座を不審に思っていたという「K.F」に至っては大谷と一度しか会えておらず、2度目の確認を行おうとした際には、水原氏が「(大谷が)病気になった」と説明。口座状況の確認を求めると、「プライベートなことで、納税義務も発生してない」と情報開示を拒否されている。
ここで問題として考えられるのは、『CAA』が日本語を話せる職員を雇っておらず、水原氏に大谷との直接的なコミュニケーションの全てを委ねてしまっていた点だろう。同選手が日本ハム時代から縁を結び、「盟友」とも見られていた水原氏との関係性を信頼していたからこその判断だったのは違いないが、そこに「隙」が生じていた感は否めない。
球界屈指のスーパースターの名通訳として、世界的な知名度を誇っていた水原氏。自業自得と言えば、それっきりだが、彼の献身的な仕事ぶりには誰もが羨望の眼差しを向けていたのは間違いない。それだけに「容赦者」となった現況は、あまりにむなしいものがある。
[文/構成:ココカラネクスト編集部]