聖地が守り続ける伝統 甲子園が「土」にこだわるワケとは

4月13日(木)15時53分 フルカウント

甲子園が守り続ける「伝統」とは

 駅を出て正面、目に入る「阪神甲子園球場」の文字。これだけで胸が熱くなる。空間、音、匂い、味、そして記憶。五感を刺激するこの球場には、我々に忘れさせない何かがある。そして球場サイドも忘れないものを未だに残してくれている。

 アメリカでは過去、人工芝球場から天然芝球場への改修はいくつか例がある。

「野球は空の下、天然芝でやるもの」

 カンザスシティやセントルイスなどは、その考えで改修をおこなった。東北楽天ゴールデンイーグルスの本拠地、Koboパーク宮城。16年から人口芝のフィールドを内外野とも天然芝に改修。素晴らしい英断だった。

 また、広島・マツダスタジアム、ほっともっとフィールド神戸、地方でも山形・鶴岡ドリームスタジアム。各地に内野にも芝を張った球場が増えてきた。だが、甲子園球場に関しては、いまだに内野には天然芝を敷き詰めない。試合中のグラウンド整備など、とても大変だと思うのだが。球場を管理する阪神園芸の金沢健児さんに聞いた。

「一番はやはり伝統です。ただ内野に天然芝を敷いた球場と比べて、土の場合はそんなに手入れや管理は大変じゃない。以前、神戸もうちでやっていたんですが、芝の管理は大変。でも、試合中に整備する範囲は甲子園と変わりなかった」

土のフィールドを作る微妙な配合、様々なイベントにも対応する技術

 甲子園はいまだに内野に芝がなく、昔ながらの土のフィールドだ。

「常に新しい土を補充している。もちろん、それまでの古い土が残っていて、そこに補充していく。以前は淡路島や神戸、岡山日本原、三重鈴鹿、大分大野郡、鳥取大山の黒土を使用しており、これが現在もグラウンドに残っていると思われる。今は鹿児島の志布志の黒土、京都の城陽の砂(丘砂)を使っている。土と砂の配分を考えて。そこはやはり技術。土は粘り気、砂は乾燥。その配分が大事」

 1924年に建設された甲子園。「甲子年」という60年に一度の縁起の良い年に当たったことから名付けられた。それから改修を重ね、スタンド、外周など時代に即した素晴らしい球場に生まれ変わった。

「改修の際に内野にアメリカのように芝を敷き詰めよう、という報道も出た。でも、高校野球などで試合数も多い。芝の痛みなど、いろいろ考えて、今までの伝統もあるのでこのままでいこうと」

 また、毎年バンド・TUBEのコンサートも夏に定期的におこなわれていた(これはなんと25年も継続しておこなわれていた)。

「やっぱりライブがあると芝は痛む。でも、これも天候による。雨がなければ、そこそこ大丈夫。雨が多いと陥没して芝が死ぬ時もある。あとのケアが大変。とはいえ25年も継続してやっていただいて本当に感謝しています」

 阪神甲子園球場の運営担当・三石貴志さんにも聞いた。

甲子園の土は「一生の宝」

「やっぱり甲子園は甲子園。ここに携われることは最高です。これから先も変わらず、いつまでもこのままでいて欲しい」

 高校球児がフィールドを駆け抜ける。勝ったチームの選手たちはスパイクシューズに付いた「土」を吹き払う。そして、負けたチームの選手たちは、「甲子園の土」を少しでも多く持ち帰る。これは甲子園球場だからこそ可能になることだ。

 確かにグラウンド整備をする方たちには大変かもしれない(どんどん甲子園の土が少なくなっていくのだから……)。でも、いつまでも、いつまでも、この「伝統行事」が続いていって欲しい。

 なぜなら甲子園球場は「日本一」、いや「世界一」の球場だからだ。ここの土を持っていることは、文字通り「一生の宝」だと思う。

【了】

山岡則夫●文 text by Norio Yamaoka
1972年島根県出身。千葉大学卒業後、アパレル会社勤務などを経て01年にInnings,Co.を設立、雑誌Ballpark Time!を発刊。現在はBallparkレーベルとして様々な書籍、雑誌を企画、製作するほか、多くの雑誌やホームページに寄稿している。最新刊は「岩隈久志のピッチングバイブル」、「躍進する広島カープを支える選手たち」(株式会社舵社)。 Ballpark Time!オフィシャルページ(http://www.ballparktime.com)にて取材日記を定期的に更新中。

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