平川の時差ボケ解消法/TFスポーツがフォードに接触?/新SC手順をバーチャルで確認【WECポルティマオ走行前日Topics】
2023年4月14日(金)12時35分 AUTOSPORT web
2023年のWEC世界耐久選手権は、早くも第2戦を迎える。3月にアメリカのセブリングで開幕したシリーズは、ヨーロッパへと移動。ポルトガル南部のアルガルベ国際サーキットで、4月16日に6時間レースが行われる。
キャデラック、フェラーリ、ポルシェ、ヴァンウォールといった新規参戦マニュファクチャラーは、ル・マン・ハイパーカー/LMDhでのヨーロッパ初戦を迎えている。
14日(金)に始まる走行セッションを控えた木曜日のパドックから、各種トピックスをお届けする。
■GMのシミュレーターを活用
2023シーズン最初のヨーロッパラウンドでは、セブリング1000マイルで使用された貨物用コンテナやプレハブのオフィスに代わり、トレーラーや大型ホスピタリティユニットが導入され、パドックの雰囲気が様変わりしている。
ポルティマオは、新型コロナウイルスのパンデミックのため中止となったセブリングの代替として2021年のカレンダーに加わっており、今週末が2度目のWEC開催となる。
今回のポルティマオ6時間レースは、今季初めて、LMGTEアマクラスでサクセス・バラストを使用したレースとなる。
セブリングでクラス優勝し、早くもチャンピオンシップをリードしている33号車シボレー・コルベットC8.Rは、30kg増量し、総重量1295kgと最も重いマシンとなった。
デンプシー・プロトン・レーシングの77号車ポルシェ911 RSR-19は20kg、ケッセル・レーシングの57号車フェラーリ488 GTE Evoは前戦より10kg重くなっている。このサクセス・バラストを除けば、セブリング以降、GTEアマのBoPに変更はない。
コルベット・レーシングのベン・キーティングは、ポルティマオに向けてGMのシミュレーターでセッションを行ったという。
「シミュレーターを使うことができるので、とても良い準備ができたと感じている」とキーティング。
「ポルティマオはiRacingにないトラックのひとつなので、自宅のシミュレーターではドライブすることはできないんだ」
■陸路を2500km移動してきたトヨタ
テクニカルディレクターであるパスカル・バセロンによると、トヨタGAZOO Racingは1000マイルレース明けの週にセブリングで3日間のテストを行い、「30時間を少し超える」走行を完了した。
「それは、うまくいった。夜通しでなくとも、かなり長い耐久走行が可能だった。午後10時にはマシンを止めなければならなかったけどね」
なお、ポルティマオ戦に向けては、トヨタのトラックは、ドイツのケルンにあるWECヘッドクォーターからポルティマオまで、約2500kmもの距離を走破しやってきた。これはアルガルベ国際サーキットのじつに538周分の距離となり、ハイパーカーのペースでも14時間半かかると、トヨタは計算している。
トヨタの5台のトラックは先週木曜にケルンを出発し、日曜にサーキットに到着した。
■TFスポーツがアストンから離れる?
TFスポーツのチーム代表であるトム・フェリエは、来年チームがアストンマーティンから離れる可能性があるという噂について言及した。Sportscar365は、TFスポーツがGT3仕様のマスタングを開発中のフォードと接触しているものと理解している。
「我々は今の状況に満足している」とフェリエは言った。
「それよりも、どうすればグリッドに立てるかが重要なんだ。いいチャンスがあることを期待している」
フェリエは、WECの2024年からの新クラスである『LMGT3』のエントリーがどのように配分されるかを見てから、来季のプログラムを決定すると説明した。1メーカーにつき2台というアイデアは以前から提案されていたが、シリーズはまだ公式な方針を示していない。
TFスポーツは、33号車アストンマーティン・バンテージAMRで昨シーズンのGTEアマタイトルを獲得している。
■ボルトロッティはDTMのテストを欠席
ミルコ・ボルトロッティは、今週末にレッドブルリンクで行われるDTMのプレシーズンテストを欠席し、プレマ・レーシングでのLMP2ドライブに専念している。
ボルトロッティによれば、ランボルギーニのファクトリードライバーであるサンディ・ミッチェルがSSRパフォーマンスのランボルギーニ・ウラカンGT3 Evo2のドライバーとして2日間のテストに参加する予定であるという。
ボルトロッティは、今週末のWEC終了後にザントフールトに移動し、そこでSSRパフォーマンスによるテストが行われる予定だ。このオランダのサーキットでは、6月にチャンピオンシップの第2戦が開催される。
■カメラ脱落に「我々が取るべき責任の要素がある」
フェラーリAFコルセ、ポルシェ・ペンスキー・モータースポーツ、ユナイテッド・オートスポーツ、JOTA、チームWRT、ケッセル・レーシングなどのチームが、WEC第3戦に向けて、3月末にスパ・フランコルシャンでテストを行った。
なお、ユナイテッド・オートスポーツは、23号車オレカがセブリングでリタイアした異常事態から「前に進もうとしている」という。チームは最近、コクピット内の車載カメラが緩み、キル・スイッチを作動させたセブリングの件について、報告書を完成させた。
ユナイテッドの共同オーナーであるリチャード・ディーンによると、ユナイテッドはカメラの取り付けマウントを変更するよう要請されていたのだという。
「我々が取るべき責任の要素がある」と彼は言った。
「我々は、そうされなければよかったのにと思うような立場に立たされた。我々はそれに満足できないと言う機会もあったが、そうしなかった」
■日本と欧州で4週連続レースの可夢偉と平川
トヨタ8号車の平川亮は、2年前にトヨタGR010ハイブリッドで初めて走った場所へと戻ってきた。このテストがきっかけとなり、平川は8号車のラインナップに加わり、タイトルを獲得した。
平川はSportscar365の取材に対し、「オーディションでは、翌年のシートが得られるかどうか分からず、ストレスを感じていたのを覚えています」と語った。
「テストではあらゆることを試しましたが、今はレギュラードライバーとして戻ってきました。もちろん、シートを獲得するために努力していましたが、もし2年前の僕に(シートを獲得したと)言ったら、驚くでしょうね」
平川と、7号車のドライバー兼チーム代表の小林可夢偉は、ヨーロッパと日本を横断する集中的なダブル・スケジュールの真っ最中である。両ドライバーは先週富士で行われた全日本スーパーフォーミュラ選手権の第1・2戦に出場し、WECポルティマオ戦の後に第3戦の鈴鹿へと向かい、その後ヨーロッパに戻りスパ6時間レースに出場する予定だ。
平川は、「日中はスポーツをするようにしています。それが(時差ボケに)すごく効くんです。今朝はランニングをしました。時々、昼寝もしますが、ごく短い時間です。いつもは1日か2日経てば大丈夫です。今日は2日目にして、いい感じです」と語っている。
■新SC手順をバーチャルで確認
今年のル・マン24時間レースで導入される新しいセーフティカー手順のシミュレーションに、ル・マン・バーチャル・シリーズチームのeスポーツ・ドライバー40人が参加した。
ル・マン24時間バーチャルのエグゼクティブ・ディレクターであるジェラール・ヌブーは、この手順は何度もテストされ、レースディレクターのエドゥアルド・フレイタスとのミーティングも行われたことを明らかにした。
ヌブーは、バーチャルリハーサルのコストと安全性の利点を挙げ、「バーチャルがいかに現実を助けることができるかを、純粋に示すものだった」と語っている。
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ポルティマオ6時間レースは、4月14日金曜日に行われる2回のフリー走行で幕を開ける。いずれも90分間となるセッションは、現地時間10時30分(日本時間18時30分)と15時30分(日本時間23時30分)に開始される予定だ。