中日・高橋周平はまだ終わっていない 天真爛漫に竜の未来を築いていく
2024年4月14日(日)13時51分 ココカラネクスト
今季はクリーンアップの一角を務めるなど、活躍が期待されている(C)KentaHARADA/CoCoKARAnext
4月10日、中日・高橋周平が通算1000試合出場を果たした。敵地とはいえ、自身の地元・神奈川県にある横浜スタジアムでの達成。ドラゴンズファンだけでなく、ベイスターズファンからも大きな拍手が送られた。
【動画】中日・高橋周平が節目の1000試合出場を達成したシーン
5回終了時の記念ボード進呈では試合進行中だったのもあってか、受け取って素早く四方に礼をしてベンチへ下がった。だが、ゲームが終わった後の記念撮影では、同日に同記録達成の後藤駿太とともに満面の笑みを浮かべながらボードを掲げていた。
この満面の笑みこそ、周平らしいな、と勝手ながらに思うわけである。
プロ13年目での達成は、もともとの期待値を考えると遅すぎたのかもしれない。甲子園には未出場ながら3球団競合の末に入団。応援歌で「竜の未来を担え」と歌われていたように、早くから未来を嘱望されていた。しかし、規定打席に初めて到達したのは7年目の2018年。本職でない二塁手として、当時の森繁和監督に我慢して使ってもらった結果だった。
キャリアハイは直後の2019〜20年に訪れる。与田剛監督に主将に抜てきされると、攻守で躍動しベストナインやゴールデン・グラブ賞を獲得。20年には打率3割をクリアするなど、粗の多いスラッガーではなく、野手の間を正確に抜いていくスプレーヒッターぶりが板についていた。
2022年からは背番号3の大先輩・立浪和義監督が就任。このまま周平がドラゴンズの屋台骨を背負っていくと思われたが、深刻な打撃不振が襲う。気づけば同じ三塁手の石川昂弥がチームの期待を一身に背負うように。周平はというと、ついに昨季はプロ初の本塁打ゼロと崖っぷちに追い込まれていた。
迎えた2024年シーズン。周平は二軍のキャンプ地・オキハム読谷平和の森球場で汗を流していた。今年で30歳、中堅からベテランの領域に差し掛かっても、誰よりも声を出し、チームメイトを鼓舞。月並みな言い方だが、明るく元気に野球をやるのが周平の野球なのだろう。
今思えばベンチで多く過ごした22年以降は、言葉を選ばずにいうと「しみったれた」表情をよく見せていた。好きなおもちゃを取り上げられて不貞腐れているような感じか。それを思うとキャンプでの変化は一目瞭然。危機感をエネルギーに変えながら実戦出場を重ね、3月中旬にオープン戦の切符を手にした。
オープン戦では打率4割近い結果を残し、ライバル・石川昂の不調も相まってつかんだ三塁のポジション。際立った数字こそないものの、開幕戦での2本の適時打や度重なる好守など、チームの8年ぶり単独首位に貢献。全試合フルイニング出場を続けており(※4月12日現在)、不動の存在となっている。そして、本塁へのヘッドスライディングや三塁守備で時折聞こえる大きな声といったところで、明るいムードの醸成に一役買っている。
高橋周平はまだ終わっていない。天真爛漫に、感情を露わにしながら自らの居場所を確保して、新たな竜の未来を築いていくはずだ。
[文:尾張初]