大雨&アクシデント多発。3度目の赤旗でレース終了も、MOTUL AUTECH Zがポール・トゥ・ウイン【第1戦GT500決勝レポート】

2023年4月16日(日)17時1分 AUTOSPORT web

 2023年のスーパーGT開幕戦、岡山国際サーキットでのGT500クラス決勝は、快晴ドライコンディションのスタート直後から一転。トラック上の水量や天候急変、アクシデントなども絡みFCY(フルコースイエロー)とセーフティカー(SC)が入り乱れる大混戦のなか、最大延長時間目前で3度目の赤旗掲示となり、MOTUL AUTECH Z(松田次生/ロニー・クインタレッリ)が2016年以来7年ぶりに開幕戦岡山を制覇。2位には3号車Niterra MOTUL Z(千代勝正/高星明誠)が入り、ニッサン/ニスモ陣営がワンツーを達成している。


 兼ねてより導入準備が進められてきたハルターマン・カーレス社製のカーボンニュートラル・フューエル(CNF)「GTA R100」を採用し、いよいよ新時代を迎えたGT500クラスは、このオフ期間にエンジンとの適合を中心に重点的なテストを重ね、ここ岡山でその成否を確認、披露するときを迎えた。


 しかし今季公式戦初走行となった土曜は、午前の公式練習から雨が降り続き、一時はセッション実施も危ぶまれる雨量に。最終的に走行枠の時間延長やGT300クラス赤旗ディレイなどを経て、23号車MOTUL AUTECH Zの松田次生が自身13年ぶりのポールポジションを奪取。路面状況とグリップを読み切ったドライビングが光ったが、フロントロウ2番手に並んだ3号車Niterra MOTUL Zの高星明誠と併せて、昨季よりダンプ路面で圧巻のパフォーマンスを発揮するミシュランタイヤの存在もグリッド順に影響を与えた。


 それだけに車体やタイヤの開発進捗を含め、昨季3社で拮抗していた性能とその勢力図が新たな要素によってどう動いたのか。その本格的な答え合わせは決勝に持ち越される状況となった。


 ドライ勝負への期待を高める快晴で始まった日曜は、かつてのにぎわいが復活したピットウォークを経て、航空自衛隊F-15戦闘機のウエルカムフライトを実施。前日のクラッシュで大破を喫していた39号車DENSO KOBELCO SARD GR Supraも夜通しの修復なり、正午からのウォームアップ走行も順調に終えると、全15台のマシンがグリッドに並んだ。


 岡山県下の予報では午後に向け50%の降水確率とされたが、午後13時30分には気温19℃、路面温度も正午を前にぐんぐん上昇して30℃の状況でパレード&フォーメーションラップへと向かう。


 すると西の空から急激に雲が広がり色が変化し始めるなか、フロントロウの2台が大きく逃げを打ち、3番手につけていた唯一のダンロップ装着車となった64号車Modulo NSX-GTは週末初のスリックタイヤで周囲とはグリップの発動条件が異なるか、19号車WedsSport ADVAN GR Supraの国本雄資や、8番手からジャンプアップしてきた100号車、STANLEY NSX-GTの牧野任祐に先行され、続く周回では前年度覇者ENEOS X PRIME GR Supra、大嶋和也にもパスされる苦しい展開となる。


 さらに19号車WedsSport ADVAN国本も仕留めたSTANLEY牧野は、4周目に1分19秒736のファステストを記録して前方のZ艦隊を追う。その一方、戦前のモノコック交換申請により5秒ストップのペナルティを課されていた8号車ARTA MUGEN NSX-GTは、6周目を前にピットロードへ向かっていく。


 ここで鉛色と化していた空からは早くも雨粒が落ち始め、グリップ変化も伴いGT300クラスのバックマーカー処理がよりシビアになると、各車がワイパーを作動し始めるなか15周目には路温が25℃まで低下。濡れた路面で一気に車間距離を詰められた首位23号車MOTUL AUTECH Zのロニー・クインタレッリは、ここでたまらずピットロードに飛び込む。


 背後には14号車ENEOS X PRIME以下、7台が同じくタイヤ交換に傾れ込むと、雨量の増したコース上ではGT300クラスでスピン車両やトラブルが相次ぎ、FCYの宣告からすぐさまSC導入に切り替わる。


 ここでわずか1周だけステイアウトし、ピットロードクローズとなるFCY宣言直前にピットへ入った100号車STANLEYと37号車Deloitte TOM’S GR Supra笹原右京の2台は、作業時間で正規のロスタイムを喫した23号車を逆転し、実質的に首位争いへと転じることに。逆にウエットへの交換タイミングを逃したステイアウト組は、スリックタイヤのままでの先導走行を強いられることに。


 19周目にホームストレートで隊列を整え、続く周回でピットレーン・オープンになると、ステイアウト組の4台中、3号車、19号車、そしてチャンピオンの1号車MARELLI IMPUL Zの3台がタイヤ交換(3号車は給油も)に向かい、続く21周目には16号車ARTA MUGEN NSX-GT福住仁嶺も最後にピットロードへ。しかしホームストレート通過車両を待つため、各車ピット出口の信号が切り替わるタイミングに翻弄される。


 この間、タイミングモニター上では100号車と37号車に対し「FCY中のピットイン検証中」と表示され、23周目突入でリスタートが切られると濃い水煙の上がるトラック上では3番手の23号車に対し、ヘアピン進入で36号車au TOM’S GR Supra坪井 翔と17号車Astemo NSX-GT松下信治が揃ってオーバーテイクを決めていく。


 さらに14号車の大嶋は24周目に23号車を、25周目に最終セクターのマイクナイトでアウト側から17号車を仕留め、立て続けのオーバーテイクで4番手に浮上。しかしGT500を筆頭に各車のダウンフォースで跳ね上げげられ、路上の水量が減っていくと、23号車のクインタレッリが息を吹き返してふたたびポジションを奪還するなど、コンディションとタイヤ銘柄の特性により目まぐるしくポジションが変動する。


 同じくブリヂストン対決に変わった先頭集団でも、36号車auの坪井が27周目に僚友37号車を。続くラップで首位100号車を立て続けにヘアピンで刺し、一気に首位へと進出。対照的に100号車牧野は選択したタイヤの影響か、4番手までポジションを落としていく。


 坪井の背後では36号車を差し返したクインタレッリが2番手で前を追い掛けるなか、34周目には長らく検証中だった100号車に対し、FCY中のピットクローズドでレーンに進入したとして「60秒のペナルティストップ」が宣告される。同じく37号車にも4周後に同様のペナルティが課され、ここまで3番手と4番手で表彰台争いを繰り広げた2台が一気に最後尾まで転落してしまう。


 40周を前にダンプ路面で耐え続けた首位の坪井だったが、続く41周目突入の1コーナーでクインタレッリが首位を奪い返して上位争いが動くと、新たな3番手争いとなった14号車と8号車は、コース上でポジションを入れ替えたのち同時ピットで作業速度に優った14号車がふたたび前へ。ここでスリックに戻して山下健太と野尻智紀のオーダーでコース復帰する。


 続く46周目にはウエットタイヤで粘り抜いた2番手坪井が、タイヤ交換とともに宮田莉朋にスイッチ。続くラップで首位の23号車も反応し、迅速な32.6秒の作業静止時間でスリック換装なった松田に、最後のスティントを託す。


 直後の48周目にはGT300のアクシデントでFCYが宣言され、先頭が51周目のバックストレートを進行中に解除されると、直後にアトウッドでGT300のクラッシュが発生。SCが発動すると読んだ首位23号車は、不穏な動きを見せてふたたび雨が落ちるとの読みも込め、ここでなんとウエットタイヤに交換する大勝負に出る。


 直後のピットレーン・クローズで、23号車に追随した12番手の64号車Modulo NSX-GTの太田格之進を除き、ライバル勢は全車スリック。一旦は後方に下がった23号車は「ダンプ路面で無類の強さを発揮するミシュランのウエット」を装着した状況で雨が落ちる中、レースが再開されるかと思われた。


 しかし車両回収とコース清掃のため55周目にはレースコントロールから赤旗が宣告される。ここで唯一、義務ピットを消化していなかった5番手の16号車ARTAは、ドライバーに対しレース距離3分の1を走行する義務規則も鑑み、ホームストレートの隊列には並ばずピットロードへとマシンを進める。


 55周目からSC先導で隊列が動き出すと、レース中断期間に降り続いた雨によりトラック上はふたたびフルウエットと化し、サーキット近郊での落雷にも気を配りながらの走行に。なんとか走り出したスリックタイヤ組は一斉にピットへ向かい、ウエットへと履き替える。


 不穏な空気と予感は悪い方向に現れ、先頭で作業を開始した36号車は左フロントの装着が不完全なままクルマを送り出してしまい、ピットアウトもまともに走れず。そのまま力無くコースサイドへ寄せるしかない状態に。


 これで悠々のステイアウトを決めた23号車が首位、2番手には中断前に36号車の背後にいた3号車の高星明誠が続き、ニッサン/ニスモ陣営がワンツー体制を再構築。8号車ARTA野尻を含めたトップ3に変わると、先導中にはGT300クラスの車両でもタイヤ脱落が発生し、ここでの雨量増とも併せて60周目にはふたたび赤旗が掲示される。


 この時点で4番手には14号車ENEOS山下、そして5番手にはドライバー交代とタイヤ交換を経て、隊列復帰した16号車がタイミングモニター上に示される状況に。レース最大延長時間の16時30分までリミットが迫る、16時20分よりSC先導でふたたび動き出した隊列は、残る10分をウォータースクリーン下のパレードで終えることも叶わず、16時25分にはこの日3回目の赤旗に。


 62周を走破した段階で「決勝レースは赤旗で終了」と宣言され、ニッサン陣営が2016年以来7年ぶりの開幕戦岡山でのウイナーとなった。2位に3号車Niterra、3位にシャシー交換に伴う5秒のペナルティストップもあった8号車ARTA MUGEN NSX-GTが続いた。


 2023年のスーパーGT、次戦となる第2戦『FUJIMAKI GROUP FUJI GT 450km RACE』は、5月3〜4日に静岡県の富士スピードウェイで開催される。

2023スーパーGT第1戦岡山 MOTUL AUTECH Z(松田次生/ロニー・クインタレッリ)

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