【松下信治インタビュー(2)】18インチタイヤ導入でブレーキングに大きな変化「得意な僕にはうれしい変更」

2020年4月17日(金)20時7分 AUTOSPORT web

 3月上旬、バーレーンで2日間に渡って行われたFIA-F2テスト。この時点では、まだ中東やヨーロッパで新型コロナウイルスに対する危機感はほとんどなかった。


 MPモータースポーツからテストに参加した松下信治選手は、連日上位タイムをコンスタントに出し、18インチタイヤの感触も予想以上に良かったと語る。開幕がいつになるのか現時点ではまったく見えないが、松下選手は去年以上の活躍が期待できそうだ。それだけに1日も早い、そして1戦でも多い開催が望まれる。


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──バーレーンテストの感触を聴かせてください。いい手応えでした?
松下信治(以下、松下):ええ。タイヤが18インチに変わったのですが、思ったほど違和感はなかったですね。燃料搭載量は各車ばらばらだったので相対的なパフォーマンスは不明ですが、僕自身は乗り味は非常によかったですね。


 エンジニアも昨年のカーリンとプレマから来てくれて、戦力もすごくアップしてる。ふたりはイタリア人同士でもともと仲がいいし、うまくやっていけそうです。


──カーリンから来たエンジニアは、松下選手の担当エンジニアですよね?
松下:そうです。一緒に移ってきました。プレマから来たエンジニアは去年までFIA-F3をやっていたのですが、今年はチーフエンジニア的役割です。


──松下くん自身も、チームに溶け込めていますか?
松下:そうですね。もちろんまだテストを1回やっただけですし、そこでいろいろ課題も出てきた。でもパッと乗ってすぐに速さを出せたし、作業の進め方も悪くなかった。改善点もたくさんありますが、幸い今は時間があるので、その辺りは連絡を取り合って直していってます。


ーバーレーンテストは、18インチタイヤでのみ走ったんですよね?
松下:ええ。


ーこれまでとの違いは、それほど大きくなかったですか?
松下:違うといえば違うんですけど、予想していたほどではなかったです。デグラデーションは、ちょっとですけどよくなっていますしね。高速コーナーもよくなっていますね。


 バーレーンで言うと、ターン11、12。右に上がって行く、けっこう速いコーナーがありますよね。昨年まではギリギリだったのが、ハードタイヤでも普通に全開で行けましたから。リヤのグリップが上がってるのは、間違いないですね。バーレーンはF2ではタイヤに一番きついサーキットなのですが、普通に気をつければ十分レースを完走できそうです。なので他のサーキットはもっと楽でしょうね。


──デグラデーションがひどくないのは、ちょっと意外ですね。
松下:そうなんです。もしかして、ピレリが最初だからとかなりコンサバなのを持ってきたのか。


──コンパウンドは、何種類か試しましたか?
松下:いいえ、ハードとソフトだけです。ハードはもちろん(ロングランでも)楽だったし、ソフトでもそんなに落ちなかったですね。


──昨年はタイヤマネージメントにかなり苦労しましたよね。
松下:バーレーンは特に。あれから自分の走り方も変えたので、単純比較はできませんが。


──クルマ自体は昨年と同じですよね?
松下:はい。ディフューザーを少し形状変更したぐらいです。リヤのダウンフォースが上がっています。車重が重くなった分リヤのダウンフォースを大きくして、タイムを稼ごうというコンセプトなんでしょう。エンジンも、ちょっとだけパワーアップしてるようです。全然感じませんけどね(苦笑)。


──ホイールが大きくなった分、厳密には空力も大きく変わったわけでしょう。
松下:ブレーキングは大きく変わりましたね。ホイールが重くなる分、前に進もうとする力が確か60%大きくなってるらしいです。つまり60%、ブレーキの利きが悪くなっている。ガソリンを今まで以上に積んだ状態でレースをしているというか。本当に重いクルマで走ってる感じです。


──それを特に、ブレーキング時に感じるのでしょうか。
松下:全然止まらないです。今までの感覚でブレーキを踏むと行き過ぎちゃう。ロックするわけじゃなくて、止まらないです。


──ロックしない?
松下:そうなんです。


──レース本番では、ブレーキングの巧拙の差が顕著に出そうですか?
松下:出ると思います。止まりづらいから難しい。ブレーキングが得意な僕にはうれしい変更ですね。


──ブレーキ摩耗もひどくなるのでしょうか? そこも松下選手には有利な点ですね。
松下:そう思います。ブレーキ温度もかなり上がりますし。それをすぐに感じ取って、冷やすかどうするか、その能力が重要になるでしょう。踏力も上がっているし、微妙なデリケートなブレーキングがいっそう難しくなっています。イメージで言うと、今までディスク温度が最大600℃だったのが800℃まで上がっていて、その200℃の間は全然ブレーキが利かなくてただ摩耗してるだけ、みたいな。数値はあくまで例えですけどね。


──タイヤマネージメントよりも、ブレーキングの差がタイムに効く?
松下:そう思いますね。今年のタイヤは8kg重いんですね。単に静止状態での8kgじゃなくて、それが超高速で回転してるから、8kgのバラストを積んでいるのとは全然違うわけです。それだけ重い物体が回転してますから。


──なるほど。とにかくレースが無事にできるのを祈るしかないですね。
松下:本当に。F1も同様ですよね。日本もレースないですしね。

実家でトレーニングを続ける松下信治


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