西武・森友哉が挑む「捕手で首位打者」が至難である理由

4月17日(水)6時15分 Sportiva

 気の早い話だが、1965年の野村克也(南海)、1991年の古田敦也(ヤクルト)、2012年の阿部慎之助(巨人)以来となる、史上4人目の「捕手で首位打者」が今季誕生するかもしれない——。

 西武の高卒6年目、森友哉が開幕から好調だ。4月15日時点で、いずれもリーグトップの打率.383、打点16を記録している。


優れたバッティング技術で現在打率首位の森友哉

 捕手で首位打者がどれほどの偉業かは、前例の少なさと、先達の名前を見ればわかるだろう。

「好調の要因? わからんっス。いずれ打てない時期が来ると思うので、そのためにコツコツとヒットを打つことが大事かなと思います」

 森がそう話したのは、今季1号3ランを含む5打数4安打と猛打を炸裂させた4月6日の日本ハム戦のあとだ。この時点で打率.483。さすがにそこからは落ちてきたが、14試合終了時点でリーグ2位の栗山巧(西武)に5分の差をつけている。

 森の類まれな打撃センスは、プロ入り1年目から絶賛されていた。

「『絶対打ちますよ』と一軍に推薦しました。育成がこちらの目標ではあるけど、育成を飛び越えて戦力になりますよ、という判断ですね」

 2014年7月、当時の潮崎哲也二軍監督はそう話した。将来の正捕手としてファームでじっくり育てる方針を覆すほど、森は二軍で打率.341と打ちまくっていた。一軍で左の代打が手薄だったことで初昇格すると、高卒新人として46年ぶりの3試合連続本塁打を放っている。

 森のような「打てる捕手」にとって、悩みの種になるのが、その優れた打撃力だ。捕手としてはまだ一軍レベルに達していないものの、高い打力を眠らせておくのは「宝の持ち腐れ」と首脳陣は考え、指名打者や外野へのコンバートで打席に多く立たせようとする。

 代表例が、現役なら近藤健介(日本ハム)、引退した選手では和田一浩(元西武など)や小笠原道大(元日本ハムなど)だ。いずれも入団時の捕手ではなく、バットマンとして名を馳せた。

 森も2015年には23試合、2016年には49試合、外野で起用されている。昨季終了後にFAで巨人に移籍した炭谷銀仁朗は球界屈指の守備力を誇り、高い壁として立ちはだかった。

 しかし昨年、森は実力で出場機会を奪い取り、西武の捕手陣で最多の136試合に出場した。

 ただし、打率.275——。打席数こそ大きく違うものの、2016年には.292、2017年には.339を残していた。

「数字としては、彼の思っているものではなかったかもしれないですね。防御率や盗塁阻止率ももっとできたはずですし、キャッチャーは苦しいなかでもマスクを被らないといけないですから」

 同じ左打者の秋山翔吾はそう話した。

 実際、捕手は守備の負担が最も大きいポジションだ。事前に相手打者のデータを覚え、試合中は対戦相手を観察する一方で味方投手のよさを引き出し、同時に守備陣に指示を送る。指名打者や外野手と比べ、守備の負担の大きさは明らかである。

「捕手のたいへんさは、やった人にしかわからないです。僕はちょっとしかやってないですけど、やったことのない人に何か言われても、何も思わないです」

 そう話すのは、2017年限りで現役引退し、現在西武でブルペン捕手を務める上本達之だ。社会人から入団した上本は「打てる捕手」として期待され、レギュラーこそ獲得できなかったものの、2016年には代打も含め打率.307を残した。捕手として打撃成績を残す難しさについて、上本はこう語る。

「打つのは二の次になることが多いと思います。それくらいたいへんというか、打たれて点を取られた時点で、『なんで取られたんだろう?』とか『今の配球はよくなかったな』とか、そっちに頭が傾くので、何となく打席に立っていることが多くなりがちだと思います。

 そこの割り切り方は難しい。森に今年ちょっと話を聞いたら、『(意識は)打つほうより守るほうです』と言っていました。でも、森は打つ能力も高いですし、あれだけ打つのはすごいです」

 森が史上4人目の「捕手で首位打者」を目指すうえで、カギになるのは守備面だろう。上本の言う「何となく打席に立つ」回数を減らすには、守備の反省点を少なくすることが不可欠だ。

 この点で、今季の森はリード面で大きな成長を見せている。最たる例が、4月12日のオリックス戦だ。西武・多和田真三郎、オリックス・山岡泰輔のエース対決は年間ベストゲーム候補に挙げられるほど白熱した投手戦となり、8回を終えて0対0のままだった。

 迎えた9回表、多和田は二死一、三塁で打席にロメロを迎える。初球は外角スライダーを振らせて1ストライク。すると、森は内角低めにストレートを4球続けて要求し、見事見逃し三振に斬って取った。

「踏み込んできとったんで、内勝負かなと」

 ロメロの狙いを見極め、インコースに速いボールを続けたほうが打ち取れる確率が高いと考え、そのとおりに仕留めた。

 実は、この裏には興味深いやり取りがある。2球目に内角ストレートのサインが出ると、多和田は首を横に振ったのだ。

「詰まって間に落ちたりして1点というのが一番嫌な感じ、と頭にありました。でも、首を振っても(森)友哉がインコースをまた出したので、これは行くしかないなと。強気でいけて、友哉に感謝したいと思います」

 多和田は森の2歳上で、沖縄出身でマイペースな性格だ。対して、大阪生まれの森はヤンチャな過去が知られている。先輩が1度首を振ったにもかかわらず、内角を強気に攻めさせるのは、「さすが!」と思わせるほど肝の据わったリードだった。

「森をどう大人にしていくか。かわいくて、実力があるからこそですね」

 春季キャンプの前、キャプテンの秋山は今季のポイントをそう話している。

「(菊池)雄星(マリナーズ)みたいないいピッチャーが抜けて、そこに他のピッチャーが加わるわけです。森は物怖じせずに話せると思うけど、よりやってほしい。守っている時は8人と、合わせようと思えば目が合うわけですよね。そういう意味で、『森、がんばれ!』って感じです」

 昨季の最優秀バッテリー賞をともに獲得した多和田だけでなく、飛躍が期待される今井達也や髙橋光成ともコミュニケーションがとれており、捕手・森の成長は著しい。

 ただし、4月13日に行なわれたオリックス戦の6回二死一塁では、今井の投じたワンバウンドしそうな球を身体で止めにいかず、ミットを上から下に使って後逸し、ワイルドピッチにした。しかも、後ろに逸らせたボールを握った時点で、三塁を狙った走者を殺せそうになかったが、サードへの送球エラーを犯して余計な1点を与えた。上記のキャッチングミスは今季何度か見られ、改善が必要だ。

 さらに前述した4月12日のオリックス戦の9回、ロメロへのリードについて含みを持たせる声もある。森の1年目に二軍のバッテリーコーチを務め、投球マシンを使った捕球練習など基礎から二人三脚で行ない、現在1軍で捕手陣を見る秋元宏作コーチだ。

「まあ、リスクはあるなかでね、バッターのスイングと多和田の出来を照らし合わせて、あの配球がベストと判断して、ベストの球がきて、ベストの結果が出ました。正しい状況判断なんじゃないですか。そこまでのリスクまで考えてのリードだったなら、たいしたものです」

 配球に正解はなく、結果が出ればOKの世界だ。それでも、リスクマネジメントは不可欠になる。試合終盤で0対0の場面なら、外角のボール球を振らせるという選択もあっただろう。秋元コーチは長らくそばで森を見ているからこそ、結果だけでよしとしなかったのかもしれない。

 ただし裏を返せば、それだけ森が期待を寄せられていることの表われでもある。捕手としてともに現役生活を過ごした上本は、「とにかく吸収が早い」と森の成長を目の当たりにしてきた。秋山が「どう大人にしていくか」と口にするほど、周囲は高い要求をしたくなるのだろう。

 果たして、8月に24歳となる「打てる捕手」は首位打者に輝き、偉大な先達に肩を並べることができるか。まだシーズンは始まったばかりだが、史上4人目の偉業達成を期待したくなるほど、順調な開幕スタートを切ったのは確かだ。

Sportiva

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