廣瀬俊朗がラグビー選手へ提言。「今はインプットのチャンス」

4月17日(金)11時30分 Sportiva

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 こういう時だからこそ、やれることに集中する。楽しく、ユルく。”ふつう”のありがたみに感謝する。可能性をひらく、世界をひらく。ひらくということは、新しい世界へつながること。なぜ、こうもトシさんの言葉はチカラがあって、あったかいのか。


ドラマ『ノーサイド・ゲーム』にも出演したラグビー元日本代表の廣瀬俊朗
 連日の新型コロナウイルスのニュースに心も沈む。スポーツも消えた。そりゃそうだ。ヒトの命が一番。極力、家にこもって、感染を広げないことが大事なのだ。では、ラグビー選手はどうすればいいのだろう。政府の緊急事態宣言が出た日の翌日、元日本代表主将の廣瀬俊朗さんの携帯に電話をかけた。
 テレワーク全盛のいま、このインタビューも電話で行なうことになった。昭和世代のこちらとしては相手の表情や場の空気がわからないから不安があった。でも、結構いい。何と言ってもラクだった。そう言えば、廣瀬さんは「そうすっね。結構ラク」と笑った。いま、ナニを?
「こればっかりはどうしようもないですし、早く終息するのが一番やと思います。そのために自分がやらなアカンことをやりながらしているのと、オンラインやリモート(の仕事)がすごく増えているので、それに対して次の準備というか、(ネット関係の)情報発信をやっている感じですね」
 廣瀬さんは、慶大—東芝でラグビー選手として活躍した。日本代表の主将も務め、2015年ラグビーワールドカップ(W杯)では「陰のキャプテン」としてチームの躍進を支えた。そのシーズンで現役を引退、ビジネス・ブレークスルー大学大学院で経営管理修士のMBAを取得した。
 東芝を退社し、株式会社「HiRAKU」を立ち上げた。昨年のラグビーW杯ではプロジェクト「スクラム・ユニゾン」を展開し、大会の盛り上げにひと役買った。昨夏にテレビ放送された人気ドラマ『ノーサイド・ゲーム』ではアストロズのエース、浜畑譲を熱演した。
「浜畑さん」と冗談で声をかければ、38歳の廣瀬さんはまた、笑った。「テレビの影響はもう、大きくて。ありがたかったなあ、と感じています」。兎にも角にも、ラグビー界断トツのインフルエンサーだ。

——トップリーグ、日本選手権、ラグビー界も試合はほとんど中止となりました。せっかく昨年のラグビーワールドカップで盛り上がったところなのに…。
「残念であるのは間違いないですけど、こればっかりはね、どうしようもないことです。こっから、どう巻き返すかというところが大事かなと思います。やっぱり”ラグビーロス”の人が多いので、そういった人たちをどうつなぎとめることができるか、でしょう」
——何かアイデアは?
「自分もユーチューブを始めました。いまはオンラインによる発信がいっぱいあるので、選手たち中心にそういうのを使って発信してほしいなと思います。具体的に? 僕はスクラム・ユニゾンの話やノーサイド・ゲームの話、あとはまあ、スポーツの周りで働いている人たちを紹介していきたいな、と思っています。この間はコーチのコーチ人を紹介しました」
——ツイッターもしていますよね。確か、この間、トップリーグが最初に3週間程、休止になった際、抗議のツイートをしていましたよね。リーグが「薬物問題を受けてのトップリーグ休止発表」に対し、「新型コロナの影響とし、その期間に薬物問題の教育を徹底すると説明すべき」と。正論でした。
「ほんとうはコロナの影響があったわけです。なのに、それを薬物だけの影響で休止と言ってしまったところが…。ラグビー選手がふだん大事にしている正義や規律を考えると、ふさわしくないと思ったのです。だから、言わせてもらいました」
——そのトップリーグの中止の影響は。
「もう、どうこうできる感じじゃないと思うので。中止となってしまって、来シーズンに向けていま、休憩も必要でしょう。一回、休んで、次に備えることがメインかなとは思います。あとは、”きっと”ですけど、自分の人生を考えたり、将来は何をやろうかとか、内側に向けて、いろいろと考えたりするには、いい時間かなと思います。また、ラグビーができなくなっている今だからこそ、ファンあっての自分たちだと感謝するようなことも考える時かなと」
——なるほど。現役引退後の人生設計の検討もあり、ですね。
「いま、ラグビーがなくなっているわけです。選手にはいつか、そういう時がくるので、いま考えてみてもいいのじゃないでしょうか」
——たぶん、若い選手とベテラン選手はやるべきことが違うでしょう。もし、廣瀬さんが若い選手だったら、どうしているでしょうか。
「勉強していると思います。本を読んだり、いろいろとやったりしているんじゃないですか。インプットのチャンスです。インプットをメインとし、いま自分はどういうことができるのか、あるいはこういう時だからこそ規律を保とうとか。そうすれば、多少、アウトプットにもつながるでしょう」

——もっとラグビーをうまくなりたいと思ったりはしないでしょうか。
「当然、(チームの)クラブハウスのジムなどが使えるのであれば、トレーニングをすればいいでしょう。密集にならなければ、ですが。やっている選手もいるでしょう」
——筋力トレーニングだけでなく、運動力学や栄養学、からだのメカニズムの勉強もできますね。コンディション作りは?
「次のシーズンがまだまだなので、そこまでコンディションを上げる必要がないでしょう。僕だったら、ふだんできないことをやりますね」
——違う練習にチャレンジとかも。例えば、プールで泳いでもいいかもですね。
「それも全然、いいんじゃないでしょうか。水泳がいいかどうかわかりませんが」
——もしベテラン選手なら。
「次のキャリアについて考える時間にはなるでしょうね。若い選手よりは」
——ふだん、チームの遠征が多い選手にとっては、家族と過ごす時間が増えますが。
「それはいいことだと思います。選手のときは家族と過ごす時間があまりないので、一緒の時間が増えることはいいことです」
——この間、ジョギングしたら、公園でラグビーや野球をしている親子がいました。廣瀬さんはどうですか?
「僕も公園で、子ども(長女8歳、長男6歳)とラグビーを遊びでやっています。コロナなので、もちろん、接触はよくないので、ボールをけり合ったり、パスしたりとか。いまはそんな時間を大事にしたいですね」
——日本代表の6月(ウエールズ戦)、7月(イングランド戦)のテストマッチも実施は厳しい状況です。
「僕もそう、思います。でも、まだ、6月、7月のテストマッチの可能性はゼロとは決まってないので、選手はそれに向けて準備するだけやと思います。(個人トレーニングメニューやプレー確認を)やれることをやるしかないですね。ふだんよりは(自分の)時間ができると思うので、勉強とか、学ぶべきことに使うべきですよね」

——東京オリンピックも1年延期となりました。オリンピックの7人制ラグビーの戦いも見られなくなりました。ラグビー界を盛り上げるにはどうすればいいのでしょうか。
「この時期、どうやってラグビー界を盛り上げるのかは、そこまで考えていないですけど。いま、振り返り映像などもずっと流しているじゃないですか。いずれにしろ、次の準備だと思うんですね。コロナの問題が終わったあとの自分の世界観みたいなものをちゃんと勉強して、どういう価値やニーズがあるのかと考えて。そのあたりをちゃんと準備して、この問題が終息した時に、ボンと打ち出せるかどうかが大事だと思います」
——ラグビーがある生活って幸せですよね。
「何のためにラグビーをするのかを改めて考えるべきでしょう。選手だったら、ラグビーをやめたら、自分をどうやって表現するのか。そういうことを考える時期です。ラグビーがある幸せは、ファンのみなさんも感じるだろうし、選手も感じるでしょう。日常に対する感謝みたいなものを感じるいい機会だという気がします」
——トップリーグはコロナが終息すれば、来年1月に開催される方向ですね。
「そこで再開されるとなると、選手のモチベーションはすごく高いと思うので、試合自体のクオリティも高くなると思います。なんかこう、プレーできる喜びを表現してくれると思う。楽しみです。一回、ラグビーから離れてしまうお客さんもいると思うので、そこ(トップリーグ開催)に向けて、1月からなら、12月ぐらいから、どうマーケティングして、どうプロモーションしていくかというところのプランがすごく重要かなと思います」
——リーグの機運醸成ですね。何かアイデアありますか。
「う〜ん。考えてなかったなあ。ははは。協会も考えているでしょうけど、コンセプトをキーワード化して、みんなでそれをどんどん発信して、あとはもう、ファンを一緒に巻き込んでいけるといいんじゃないですか。イベントもそうですが、プロモーションですね」
——ラグビーW杯の時のスクラム・ユニゾンの参加国のナショナルアンセムのようにチームソングを歌うのってどうですか。各チームに歌ってありますか?
「結構、各チームにできているんじゃないですか。それもあってもいいかもしれません。選手とファンが一体となることができれば面白い気がします」
——そういえば、来年秋には新リーグが発足します。時期やつくりの軌道修正もあるかもしれません。
「どうなんでしょうか。世界のラグビーカレンダーもコロナの影響で変わるかもしれないじゃないですか。どうなるんかいなという気がしますけどね」

——新リーグの印象は。
「思ったより、プロ化にいかなかった気がします。まあ、ゆっくりとですけど、プロ化には向かうんでしょうから。その準備を、(日本協会の)彼らは粛々と進めてくれるんじゃないかと。自分自身も、プロ化のメリット、デメリットを調べきれていないので、一概にプロ化になってほしいとは言い切れないですね」
——経営学も勉強したし、廣瀬さんが新リーグのチェアマンになったりはしませんか。
「ははは。今は何も言われてないので。現実的じゃないですね」
——でもラグビーを好きですよね。そもそも、何のためにラグビーをやっていたんですか。
「ラグビーを好きだったのが、すっごく大きいですね。あとは知らない世界にいけるし、みんなと何かをつくっていく楽しさがあった気がします」
——未曾有(みぞう)の状況です。こんな時の生きる上でのポイントは。
「次世代に何を残せるかが一番、大きい気がします。価値観も、ですが。今までの”あたりまえ”ってなんやろうということを考えるきっかけになるでしょう」
——最後に、新型コロナに負けないためには。
「自分の体調をしっかりと管理して、いまできることに集中して、将来の楽しみのために準備するという感じですかね」
——とくにラグビー選手へのメッセージは。
「まったく一緒です。できることをやる。100%やる。将来のため、自分に投資してほしい。いろんな意味で」
 静かな語り口に、チャレンジングな人生から得た人ならではの自信がにじむ。要は、人間力なのだ。ラグビーがないからこそ、ある時のありがたみを思う。ホンモノのリーダーの会社のコンセプトにはこう、ある。
<可能性をひらく、世界をひらく。>

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