開始12秒でまさかの失点。そのときマリノスに何が起きていたのか?

4月19日(木)12時47分 フットボールチャンネル

電光石火のゴール。DFとGKが交錯し…

 18日に行われたYBCルヴァンカップのグループステージ第4節、FC東京がホームに横浜F・マリノスを迎えた試合は波乱の幕開けとなった。キックオフ直後の12秒で最初のゴールが生まれたのである。ボールが動き始めてからゴールネットを揺らすまでのわずかな時間に何が起こっていたのか、選手たちの証言で追った。(取材・文:舩木渉)

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 目を疑った。その瞬間何が起こったかわからず、映像を確認してようやく理解した。記者たちの間でも「あれは何秒のことだったのか」と議論になったほど。最終的に導かれた結論は「開始12秒」でのゴールだったということだ。

 18日に行われたYBCルヴァンカップのグループステージ第4節の開始直後にそれは起こった。FC東京のキックオフで試合が始まると、FW富樫敬真がMF品田愛斗を経由して最終ラインにボールを渡す。パスを受けたDF山田将之は前線にロングボールを蹴った。

 そのときである。横浜F・マリノスの最終ラインとGKの間のスペースに向かっていったボールを処理しようとしたDF西山大雅と、飛び出してきたGK杉本大地が交錯。こぼれ球を富樫が古巣のゴールに流し込んでFC東京に先制点が生まれた。

 ここまでで試合開始から12秒である。マリノスは38分にもFC東京のFW梶山陽平にゴールを奪われるが、とにかく前半はリズムが悪いままだった。ビルドアップでミスを連発するなど、最初の失点を引きずるような消極的なプレーが目立った。

 さすがのアンジェ・ポステコグルー監督も、試合後の記者会見で「非常に残念な前半、受け入れられないような前半の内容だった」と失望を隠さなかった。いつもは勝っていても負けていても冷静沈着に試合を振り返る指揮官でさえ、この日はロッカールームでの感情を手に持ったまま会見場にやってきたような様子で、その口から発せられる言葉からは2点差を追いついての2-2という結果以上の後味の悪さが感じられた。

 あの12秒の間に何が起こっていたのだろうか。ゴール前で交錯する決定的なミスを犯した西山も杉本も揃って「試合を壊した原因は自分にある」と語った。

 山田のロングボールの軌道を見た杉本は「難しいボールではあったんですけど、最初は僕の中で(西山)大雅に任せて、ボールがバウンドしちゃいそうな感じがしたので、切り替えて自分が出る判断をした」と振り返った。

プロ1年目の18歳に襲いかかった試練

 一方、背走する形でロングボールを処理しようとした西山は「周りが見えていなかった。立ち上がりでしたし、中途半端にやるのがいけないと思いました。ボールウォッチャーになって、(杉本)大地くんの声も聞こえなかったので、自分で処理しようと思ったらぶつかってしまった」と自らの判断を悔やんだ。2人が交錯する瞬間、起こってはいけないはずの重大なコミュニケーションミスが起きていた。

 試合を終えて取材エリアに現れた西山は目の周りを真っ赤に腫らし、すでに目の中には涙を溜めていた。話が進むごとに声が震えていき、最後はいまにも涙が目から溢れそうになるほど打ちひしがれていた。

 2失点目の場面も、FC東京の左サイドバック・太田宏介が上げたクロスに対し、西山が梶山との駆け引きに負けてしまった。下部組織からの昇格1年目、プロとしての公式戦2試合目の出場だった若者にとっては、あまりにも重く辛い2失点だった。

「(開始直後の失点の後)自分としては割り切ってやろうと思ったんですけど、ちょっと引きずっちゃったかなと思います。その後の失点も僕のところなので、2失点に絡んで、僕がゲームを壊したという意味では悔しいです。ハーフタイムで交代したのも悔しいですし、練習からもっと改善していきたいと思います」

 西山は懸命に言葉を絞り出し、取材エリアを後にした。ルヴァン杯のグループステージ第3戦・アルビレックス新潟戦で堂々のデビューを果たし、FC東京戦の前日練習後には「今日の練習とかでも、自分の中で、なんとなくですけど、前よりいっぱいいっぱいじゃなくなった感じがある」と自信を語っていただけに、この経験と教訓は西山の心に忘れられないものとして刻まれるはずだ。

「失望するような内容」だが…

 杉本にしても、同じくルヴァン杯の新潟戦に続いて今季2試合目の公式戦出場だった。その新潟戦では「今のサッカーができるかどうか不安があった」というが、FC東京戦の前日練習を終えて「今回は自信を持って自分のプレーに集中できる。前は自分のプレーで精一杯だったところが、今回は試合の勝ち負けというか、全体にもっと目を配れる気がします」と手応えを感じていた。

 しかし、自らのミスが絡んでの立ち上がりの失点によって「残りの89分、すぐに切り替えることができなかった」。特に前半は不安定なプレーが続き、ポジショニングミスなどであわや失点という場面も作られた。FC東京戦で杉本が見つめ直すことになったのは「自分の弱さ」だった。

 ルヴァン杯では若手やリーグ戦で出場機会の少ない選手たちの底上げが求められる。西山が交代した後半、DF下平匠がセンターバックとしてプレーし、DF金井貢史とともに本来はサイドバックの選手が2人とも中央でプレーしなければならなかった。負傷離脱していたDF栗原勇蔵の復帰が近づいているとはいえ、特にセンターバックは若手の突き上げが選手層の拡充に直結する重要ポジションだ。

 GKもリーグ戦で傑出したパフォーマンスを発揮している飯倉大樹に万が一のことがあったとき、代役を安心して任せられる選手が必要になる。杉本には単なる控えGK以上の役割が期待されている。

 ポステコグルー監督は2-2のドローで終えたFC東京戦を「自分がサポーターだとして、前半を見たら選手たちにも失望するし、監督にも失望するような内容」と表現した。確かにその通りだろう。だが同時に、何人かの選手たちにとっては自らの「弱さ」を克服し、成長につなげるために重要な教訓を得られた試合だったに違いない。

(取材・文:舩木渉)

【了】

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