インディカーロングビーチ戦で見せたスターの素質。ロッシ時代の幕開けとなるか?

2018年4月20日(金)12時19分 AUTOSPORT web

 インディカー・シリーズ第3戦ロングビーチで圧勝を飾ったアレクサンダー・ロッシ(アンドレッティ・オートスポート)は北カリフォルニア出身の26歳。インディカーは2016年デビューで今年が3シーズン目だ。2015年にF1に参戦していたが、弱小チームからのエントリーでグランプリでの活躍は果たせなかった。


 インディカー・デビューイヤーのインディ500でロッシは初優勝。作戦担当のブライアン・ハータが大ギャンブルの作戦に出たのが当たり、奇跡的な勝利を挙げた。この年のインディ500は通算100回目の記念すべき大会だった。


 2016年にロッシが記録したのはその1勝だけだったが、アンドレッティ・オートスポートという強豪チームにとってもそれは唯一の勝利だった。ロッシがまだインディカーに慣れていなかったこともあるが、それ以上にチームの低迷具合はひどかった。ホンダのストリート・ロード・ショートオーバル用エアロがシボレーに対して不利にあったこともそこには影響していた。


 しかし、2017年に2メーカーのエアロの性能差は縮まり、レースが行われるコースもほぼすべて一度経験していたロッシは、ワトキンス・グレン・インターナショナルでのレースでキャリア2勝目をポール・トゥ・ウインで飾った。

ロングビーチ戦でレースをリードするアレクサンダー・ロッシ


 そして今シーズン、ロングビーチでもロッシはポールから他を寄せ付けずに優勝。2番手で彼を追ったのはウィル・パワー(チーム・ペンスキー)、スコット・ディクソン(チップ・ガナッシ・レーシング)、セバスチャン・ブルデー(デイル・コイン)という元チャンピオンでロングビーチでの優勝経験者。その彼らにつけ入る隙を与えない勝ちっぷりは圧巻だった。


 実はロッシは、予選ですでにライバルたちに大きな差をつけていた。6人で争われるファイナルステージで、予選2番手にコンマ3秒の大差をつけてのPP奪取。


 それも予選セッション終了間際までピットで待機して、1周だけのフライングラップを全力で行ってという堂々たる戦いぶりでもあった。素晴らしい集中力を発揮し、ミスなく任務を遂行したロッシ。彼は自らの走りによって、シリーズのトップコンテンダーとなったことを世に知らしめた。


 昨年までのエアロパッケージでも勝っているロッシだが、今年から採用されているユニバーサルエアロキット装着マシンをとても気に入っている。約20パーセントのダウンフォース減のマシンは彼のドライビングスタイルにフィットしているのだという。


「攻めの走りをすると限界を広げていくことができるマシンだから、走らせていて実に楽しい」と彼は言う。


 チームのエンジニアリング能力アップもタイミングよく果たされている。2017年シーズンに向けてチームは体制強化を図り、それが成功している。


■ロングビーチ戦圧勝の要因は?


「週末を通して僕らのマシンは本当に速かった。その仕上がりの良さは言葉で言い表せないほどだ。ストリートではレース展開が不利に働くこともあるが、マシンの良さに見合ったレースを戦い、勝てたところがうれしい」


 ルーキーのザック・ビーチや、マルコ・アンドレッティが4、6位でゴールしたことが示す通り、アンドレッティ・オートスポートのマシンはロングビーチで非常に速く、安定感もあった。


 彼らの勝因は何だったのか? ロッシはそれをヘアピン状の最終コーナー攻略にあったと説明する。


「金曜のプラクティスから僕らはターン11の走り方に強くフォーカスしていた。コースでもっとも長いストレートに繋がるコーナーだからだ。ホンダエンジンはドライバビリティが大変良い。それがレースでも僕らのアドバンテージだった」とロッシ。

開幕から3戦連続の表彰台でランキングトップに立つロッシ


 リスタートは4回もあったが、パワーとディクソンはターン1で横に並びかけることができなかった。ホンダエンジン使用のディクソンであってもロッシに近づけなかったのだから、アンドレッティ・オートスポートのマシンの良さ、そしてロッシのミスのないドライビングも大きな勝因だと言える。


 100回目のインディ500優勝で気づくべきだったが、彼には生来の運の良さや、インディカーでスターになる資質が備わっているということのようだ。F1向けのものは持っていなかったが……。


 ニューヨーク州の山間にあるワトキンス・グレンはアメリカGPの舞台だった伝統あるサーキットで、近頃だとNASCARのレース開催コースとして知られるが、チャレンジングでスキルだけでなく度胸も試される魅力的レイアウトはNASCARが使うショートコースではなく、“ブーツ”と呼ばれるコーナー郡までをも含んだロングコースを使用する。


 ロッシはそのコースでの最後のものになるかも知れないインディカー・レースで勝ち、歴史に名を刻んだ。今年からワトキンス・グレンはインディカーのカレンダーから外れており、しばらくはシリーズに戻ってくることはない雲行きだ。


 インディ500とワトキンス・グレンで優勝した後の3勝目が、アメリカでもっとも歴史の長いストリートレースのロングビーチ。インディカーシリーズでインディ500に次ぐ規模と人気を誇るものだ。


 ロッシはメジャーどころ3つでの勝利をまずは押さえた。しかし、彼がこの3勝だけで終わるとはもはや考えられない。今年さらに優勝する可能性は大きく、チャンピオンの座さえもすでに彼は視野に捉えていることだろう。この勝利がロッシ時代の幕開けかとなるだろうか?


AUTOSPORT web

「インディカー」をもっと詳しく

「インディカー」のニュース

「インディカー」のニュース

トピックス

x
BIGLOBE
トップへ