苦戦中の王者マンタイ、イモラで士気向上の好成績を狙う。オールドコースは「ポルシェ911に合っている」

　マンタイ・ファースト・フォームのリヒャルト・リエツは、WEC世界耐久選手権第2戦『イモラ6時間レース』で好成績を収めることができれば、シーズン序盤の苦戦を乗り切るチームにとって「安堵」になるだろうと語った。

　ライアン・ハードウィック／リカルド・ペーラ／リエツの3名がドライブする92号車ポルシェ911 GT3 R LMGT3は、シーズン開幕戦となったカタール1812kmレースで12位に終わった。その開幕戦でLMGT3クラス完走扱いとなった下位2台が、92号車とアイアン・デイムスの85号車ポルシェ911 GT3 R LMGT3だった。

　この結果は1年前とは大きく異なり、2024年の開幕戦カタールではアレクサンダー・マリキン／ジョエル・シュトーム／クラウス・バハラー組の92号車が勝利を挙げ、マンタイ・レーシングは後にタイトルを獲得することになるシーズンの好スタートを切っていた。

　迎えた2025年の第2戦イモラでの92号車ポルシェは、3回のフリープラクティスすべてでトップ10入りを果たし、明るい兆しが見えてきた。リエツはSportscar365の取材に対し、チームにとってイモラで好成績を残すことは、選手権争いだけでなく、士気を高めるためにも大きな意味を持つと語った。

「チャンピオンシップも理由のひとつだが、チームや関係者全員があれだけ努力をしてきたのに、カタールで完全に調子を落としてしまったのは、精神的にも非常に辛いことだと思う」とリエツは言う。

「だから、チームにとって安心材料になる良い結果が必要だと思っている。僕たちはアジアン・ル・マン・シリーズで一緒に走ったからお互いをよく知っているし、そこでも良い成績を残した」

「僕たちはポテンシャルを示し、こうして新しいドライバートリオで新しいシーズンをスタートできたことは、すでに良い一歩だ。しかし、WECでも全員が満足して、よりリラックスできる安心感を得るためには、少なくとも1回は良い結果を残す必要がある」

　またリエツは、2月にシーズン開幕戦が行われたカタールのルサイル・インターナショナル・サーキットより、今回のイモラ・サーキットのほうがポルシェ911 GT3 R LMGT3の特性に合っていると期待する。

「僕たちにとって最大の違いは、イモラが​​昔ながらのサーキットで、バンプとコーナーが多いコースということだ」とリエツは語った。

「ポルシェはコーナリングで良いパフォーマンスを発揮してきたが、難しいのはストレートだ。そのため、コーナーが少ないカタールでは何もすることができなかった」

「イモラは難しくてテクニカルなサーキットだけど、“地元のヒーロー”リカルド・ペラが1時間ほど離れたところに住んでいるし、ライアン（・ハードウィック）もコースに精通していて、彼はすでにここで6レースほど走っている」

「そのため、マシンのパフォーマンスはすごく良くて、コーナーでは常に好調だった。だからこそ、今回の我々は上位に近い位置にいることができている」

「正直に言うと、まだ少し足りない部分もあると思っている。でも、間違いなく正しい方向への一歩を踏み出したと言える。それは、おそらくコースが僕たちのポルシェ911 GT3 R LMGT3に合っているからだろうね」

　リエツ、ハードウィック、ペラの3人は、冬季のアジアン・ル・マンにともに参戦した唯一のLMGT3トリオ。同シリーズにはアイアン・デイムスも参戦していたが、ラヘル・フレイではなくサラ・ボビーがステアリングを握っていた。

　リエツはこのことを、チームがWECに準備するにあたり「重要な」取り組みだったと述べ、昨年ヤセル・シャヒンとモリス・シューリングとともに実施した大規模テストプログラムとは異なるアプローチだったと説明する。

「シーズンに向けて準備する方法はいろいろある。昨年はヤセルとモリスにとってはテストが最善策だったから、マンタイはシーズン前に50時間ものテスト走行を行った」とリエツ。

「だからこそ、ドライブへの準備は万全で、タイヤについても最初から理解していた。ただ、ライアンはいつもヨーロッパに飛んでテストを行っており、それは彼にとって容易なことではなかった。そこで、スケジュールが興味深いアジアン・ル・マンで『テストではなくレースに出場しよう』と決断した」

「（アジアン・ル・マンでは）僕たちにとって重要なことを学んだ。次のシーズンが始まったときにすぐに使用できるシートが手に入ったから、ドライバー交代のための準備をする必要はないんだ」

「だから、シーズンが始まったときに環境はすでに整っていた。正直に言うと、カタールでも準備はできていたはずだったんだけどね」