井上尚弥への日本開催批判は「時代遅れ」 伝説的重鎮アラム氏が断言「なぜアメリカに来てまで後退を選ぶのか」

2024年4月20日(土)16時10分 ココカラネクスト

敵なしの強さを誇る井上に飛んだあらぬ批判にボクシング界の伝説も黙ってはいなかった。(C)Getty Images

 プロキャリア26戦無敗23KO。この圧倒的な戦績が「怪物」の異名で尊敬を集める井上尚弥(大橋)の凄みを何よりも物語る。

 いまや、各国メディアや識者が厳選するパウンド・フォー・パウンドでも1位、ではなくともトップ3以内に位置付けられる。ゆえに井上の世界的な声価は誰もが認めるところではある。

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 文字通り敵なしの強さは十分に証明している。しかし、そんな井上にあらぬ批判が飛んだ。それは去る現地時間4月12日に、米ボクシング専門YouTubeチャンネル『ProBox TV』に出演した元世界ウェルター級王者2団体王者のショーン・ポーター(米国)氏が放った言葉だ。

 21年6月のマイケル・ダスマリナス(フィリピン)とのWBA・IBFバンタム級タイトルマッチを行って以来、5戦続けて日本での興行を実施している井上に、ポーター氏は「彼がボクシング界で、世界最高のスターになりたいならこっち(米国)での試合が必要だ」と指摘。「海を渡り、アメリカに来て、アメリカ人を倒して、ファンに注目してもらわなければならない」と断言した。

 元世界王者の指摘がSNSを中心に広く拡散されると、母国開催を貫く井上に対しては厳しい意見が噴出。「ボクシングの本場に来て、防衛してこそ一人前」と言わんばかりに、“アメリカ進出”を求める声が相次いだ。

 もっとも、批判の声が強まろうと、井上の陣営にブレはない。契約を締結する米興行大手『Top Rank』のCEOで、名プロモーターの一人であるボブ・アラム氏は「時代遅れだ」と周囲の風潮を一蹴している。

 元世界ヘビー級王者のモハメド・アリ(米国)や元世界6階級制覇王者(8階級制覇王者とも)マニー・パッキャオ(フィリピン)ら数多の名手たちのプロモートに携わり、業界の酸いも甘いも知る。そんな伝説的な91歳は、米メディア『Boxing Scene』の取材で「イノウエは役者が違うんだよ」と強調する。

「かつては、米国に来ることが大金を稼ぐ最善の方法だった。マニー(パッキャオ)や(WBC世界ヘビー級王者のタイソン・)フューリーには有効だった。イノウエは裕福な国のボクシング界の大スターだ」

 近年のボクシング界はグローバル化が劇的に進んでいる。試合中継も動画配信サービスに移行し、放映権料を基にした高額なファイトマネーを用意できるようにもなり、市場は見違えるように拡大。“本場”とされるアメリカはいまだに大きな市場を有しているものの、かつてのように独占的な立場にはない。

ネリ戦の収入は42億円超え?

 そんな業界の流れを汲んで持論を展開するアラム氏は、「イノウエが日本で作るものに近づくことは不可能だ。日本にはあれほど大きなマーケットがあるのに、なぜアメリカに来てまで、後退を選ばなければいけないのか」と指摘。日本開催のメリットを訴えている。

「イノウエのいるような階級において、彼が日本でやっていること以上の試合を実現させられる選手はいない。これはマニー(・パッキャオ)がフィリピンから来て、どこで闘っても5万ドル(約770万円)以上を稼げなかった時代とはまったく違うんだ。

 たしかにマニーはアメリカで闘ったことで、世界的なスーパースターになった。しかし、イノウエにとっては正反対なんだ。日本での試合は彼の敵にとっては困難な遠征となるが、彼らの財布は不快感を和らげる。皆が舌を巻いて招待状を求めている。ショーン(・ポーター)はいい奴だが、話していることは時代遅れだね」

 ちなみに来る5月6日に東京ドームで行われるルイス・ネリ(メキシコ)戦では、放映権料を含めたゲート収入だけでも2800万ドル(約42億8400万円)に達すると言われている。それだけに「価値」にこだわる井上が日本開催を続ける理由は明確である。

[文/構成:ココカラネクスト編集部]

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