ブランク経て復帰のヤン・マグヌッセン、開幕前に所属先移籍もホンダをドライブへ/TCRデンマーク
2025年4月21日(月)17時45分 AUTOSPORT web

新たにJASモータースポーツ製モデルのステアリングを握ることが発表されていた元F1ドライバーのヤン・マグヌッセンが、TCRデンマーク・シリーズへの本格復帰を前に所属先を急遽変更することをアナウンス。ラース・ホイリースとともにDMレーシングに加入し、旧世代のFK7型ながらホンダ製TCRモデルをドライブする。
北欧地域のモータースポーツ先進国として、欧州各国から数多くのタレントを集めるTCRデンマークだが、2023年までチーム・オート・ラウンジ・レーシングから参戦した大ベテランは、創設初年度からフォルクスワーゲン・ゴルフGTI TCRや、スペイン製クプラ・レオン・コンペティションTCRなどを走らせてきた。
そんなマグヌッセンは約1年のブランクを経たこの1月にも、新たにマイク・ハルダーやレネ・ポヴルセンとともに、2025年はスウェーデンに拠点を構えるTPRモータースポーツからエントリーすることをアナウンスしていたが、開幕直前のこの時期に改めて所属先をスイッチする異例の移籍を決断した。
「ヤン・マグヌッセンやラース・ホイリースとともに、このプロジェクトに全身全霊で取り組むことは、私たちにとってまったく当然のことだった」と語るのは、チームの母体となるDMサプライA/Sでディレクター職を務めるピア・セヤード。
「ここ数シーズン、私たちにとってモータースポーツの舞台は、カスタマーとの出会いやさまざまな関係構築に最適な場であることが証明されてきた。そして今、ゲストとともに、その関係をさらに加速させる機会を得た」
そのTCRデンマークの2025年シーズンは4月26〜27日にパドボルパークで開幕し、現在11台のエントリーが確定しているが、マグヌッセンは他の予定のため開幕戦には出場せず。第2戦以降にフルタイムのレースシートに座ることになる。一方、チームメイトを務めるホイリースは昨季インサイト・レーシングからスポット参戦し、ヒョンデi30 N TCRで2戦を経験した。
「ヤンをチームメイトに迎えるというオファーを受けてから、まだ1カ月も経っていないような状況だ。ピアに提案を貰ってからプロジェクトが軌道に乗るまで、それほど時間は掛からなかったよ」と明かしたホイリース。
「これ以上素晴らしいことはないだろう? ヤンはデンマーク最高のレーシングドライバーのひとりであり、国内サーキットやツーリングカーでの経験は素晴らしいの一言だ。その経験は大いに活かされるだろうし、長く輝かしいキャリアを積んだヤンが、今でもデンマークのサーキットでレースをすることを愛しているのは、本当に素晴らしいことさ」
その国内シリーズから大陸横断のリージョン選手権を経て、TCR規定ツーリングカー最高峰に位置付けられる『FIA TCRワールドツアー』では、今季より予選Q2で最速ラップを記録したドライバーを対象に“ポールポジショントロフィー”が授与されるとともに、新たにハルターマン・カーレス社製の持続可能燃料『ETS Racing Fuels Renewablaze TCR R50』の導入も発表された。
すでに国内最高峰のスーパーGTにも導入されている同社製のサステナブル・フューエルだが、昨年11月にイタリア・バレンシアで開催された『FIAモータースポーツ・ゲームス』のツーリングカー部門にてテスト採用されたこの燃料は、イギリス・ハリッジに位置する製造拠点で生産される。
すでに複数のTCR車両メーカーによるテストを経て、FIAの要件を満たしつつWSCの承認も受けた“TCR R50”は、バイオマス廃棄物から作られた認証済みの先進的な持続可能な素材を50%使用し、従来の化石燃料と比較して温室効果ガス排出量を30%削減したと謳われる。同時にこの燃料はWSCの認証を取得したことで、他のTCRシリーズでも利用可能となっている。
「こうしてクムホFIA TCRワールドツアーのレースミーティングにおける温室効果ガス排出量の削減に貢献できることを誇りに思っている」と語ったのは、おなじみTCR規定の生みの親でもあるWSC会長マルチェロ・ロッティ。
「この持続可能な燃料である『ETC Renewablaze TCR R50』は、高いパフォーマンスを発揮しながら二酸化炭素排出量を削減するが、これはほんの第一歩に過ぎない。引き続きハルターマン・カーレス社と協力し、近い将来、持続可能性のさらなる向上を目指していくつもりだ」
同じく同社のETSレーシングフューエルズ部門でグローバルマネージャーを務めるヤン・ラビアも「WSCとの提携により、持続可能な燃料を供給できることをうれしく思う」と応じた。
「この燃料は、TCR規定車両用のドロップインソリューションとして開発されており、OEM各社によるテストで良好な結果が得られ、使用時に問題が発生しないことが確認されている」と続けたラビア氏。
「2025年シーズンはメキシコを皮切りに、さまざまな地域や気候におけるこの燃料の性能を実証する機会となる。持続可能な燃料技術は、温室効果ガスの排出削減に貢献しながら、内燃機関の燃料として容易に利用できることを実証するものだ。WSCとETSはさらなる削減効果の実証を目指し、協力関係を継続していく予定だ」